罰ゲーム?個目
どうして、こうなったんだろうなぁ、と考える少年。
彼の細いけれど、ちゃんと開かれている目は別に絶望で光を失っていないし、口元に浮かんでいるのも、いつもと変わらぬ、ちょっとだけ冷たさを漂わせる飄々とした微笑だ。
だが、頭の中は、穏やかな表情とは一転して、混乱が渦巻いていたのである。
こうなってしまったのに、その反省は今更だろうさ、僕と冷静に返してくる「自分」の声に、少年は反射的に、天を仰ぎたくなる。
しかし、天を仰ぐ、つまり、目の前の、傍目から見たら、他人に見られたら、大騒ぎになりかねない、この最高な光景から、視線を外したところで、現実から逃避してしまった所で、自分の陥っている、嬉しさを否定できない現状が一変してくれる訳でもない。
だから、理想家ながらも夢見がちではない少年は天は仰がず、これまでの自分の行動に、この状況へ繋がる原因があったんだろうか、と思い返しながら、自分に肉食獣じみた雰囲気を発しながら迫ってくる少女たちを見つめた。
「さぁ、宇津路さん、これが今日の罰ゲームですのよ」
右手の二指で挟んだカードをヒラヒラとさせながら迫ってくるのは、あえて肌に密着するサイズにしたチャイナ服を着た、金髪ドリルツインテールのご令嬢。
最も胸が大きいのに、体に合っていないサイズを、このご令嬢は着ているものだから、普段よりも胸部が発してくる圧が凄まじい事になっている。
しかも、興奮で、布地の上からでも摘まめてしまいそうなほど、尖端がくっきりと隆起しているので、余計にデカく見えてしまう。
「ウロくん、今日の罰ゲームはこれなんだ」
左手でしっかりと手にしたカードを、少年に見せるのは、校名と校章が金の糸で刺繍され、名字が書かれた名札が胸元に貼られた体操着を着ている、栗色の髪、小麦色に肌が焼けた活発そうな美少女。
その体操着を、少女は臍とうっすらとシックスパックに割れた腹筋、平均的なサイズだが形の良い乳房の下側がやや見えるように、裾を巻いて短くしていた。
しかし、この活発そうな少女の見た目で、特に印象的であるのは、ブルマだろう。彼女が通う高校はハーフパンツもしくはジャージであるはずなのに、どこで買ってきたんだろうか。
「ぐふふ、ウツロギ殿、今宵の罰はこれですぞ」
よほど視力が低いのか、分厚いレンズの眼鏡をカチャリと上げ、カードを口に咥えながら迫ってくるのは、日曜日の朝に放映されている魔法少女のコスプレをした、オタク臭の濃い目な美少女。
しかし、彼女が来ているその衣装を、間違いなく、母親たちは娘たちに見せようとしないだろう。これを見て大興奮するのは、きっと、大きい子供だけだ、と確信するほど、淫らな方向性への改造っぷりだ。
乳房は触れば、少しは膨らんでいるのが解かる程度しかないのが、この眼鏡っ娘は、自身の平坦っぷりを惨めとは思っておらず、むしろ、武器として使う気満々でいた。
「ギンちゃん、今日の罰ゲームはコ・レ♥」
ご令嬢よりは小さいが、活発そうな少女よりは大きく、眼鏡っ娘には圧勝している、色白のギャルは、そんなサイズの胸の谷間にカードを挟み込んだ状態で、少年に迫っていく。
正統派な可愛さで、全身から、毎日、全力で遊び、笑い、楽しんでいる事が伝わってくる、女子高校生らしい生命力をギャルは放出していた。
そんな彼女は、煽情的な網タイツを履き、乳首と割れ目にギリギリのサイズのシールを貼って隠し、黒い兎の長い耳、フワフワした丸い尻尾を付けた格好、いわゆる、逆バニーを決めている。
「宇津路さん」
「ウロくん」
「ウツロギ殿」
「ギンちゃん」
容姿のタイプがまるで異なり、なおかつ、レベルの高い美少女が四人。
彼女らに共通しているモノが、一つだけある。
それは、この異様な状況で興奮してギラつく目の中に、パッションピンク色のハートが見えるくらい、自分たちがジリジリと迫る少年に対し、純粋で途方もなく大きな恋愛感情を抱いている事だった。
「「「「今夜も、まだまだ、愉しく勝負びましょ」」」」
美少女四人の言葉に、ニッコリと微笑み返した少年は、やっぱり、こう考える。
どうして、こんな事になったのかな、と。
「あぁ、勝負ぼうか」