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星が好きなあなたへ

作者: 眠れる夜に

 


 渦巻く光片、満天の夜空、迎え白星

 幾星霜の時星が、散り消えゆく間も無き夜に



 元気にしてますか?


 私は、元気です。


 あれから、好きな色は決まりましたか?


 私は、真夜中の紫が好きです。



 眠れないのね。



 昨晩、雪の蕾がひょっこりと顔を出しました。こんなに寒いのに、若々しい命を感じます。


 あなたと出逢ったあの日のことを、久しぶりに思い出しました。


 風の冷たい夕暮れに、舞う水飛沫に服が濡れ、辺り一面、万華鏡の如く煌めき反射し幻想的な眩い光に。


 スポットライトに照らされた私達。


 あなたは言いました。



「何色が好き?」



 そんなこと、初対面で言われたことなんてなかった。意識した事もなかった。


 どうしてそんなこと聞くの?


「え、……紫かな」


「そう、なのか」


 なんで、悲しそうな顔をするの?


 それ以来、私はあなたに興味を抱きました。


 無口なあなた。笑わせてくれるあなた。

 守ってくれた。あなた。



 今夜も冷え込んでいます。あの夜と同じくらい。


 このマフラーが、心をくすぐり、温めてくれます。


「あなたの好きな色は?」


「……わからない」


「そう、意外」


 あなたは手袋を好まない人だから。私も手袋をしなくなったんだよ。

 こうして、手をぶら下げていたら、握ってくれるかもしれないからね。

 寒そうにしてる私を見つけてほしいから。


 私達は、特に気が合うわけじゃなかった。


 好きな物嫌いな物は似たり寄ったり、唯一強く共感できたのは、お互いが、星を観ることが好きであること。


「いつか、星になれると思う」


「何言ってんの、遠くで眺めるのが一番でしょ?」


「ずっと、未来の話だよ。俺たちは星になるんだ」


 そんな未来、来るわけが無い。

 星になったら会えないから。私が私でなくなるから。でも、今は星になりたい。


 星になれば、会えるかな。


 あなたに手紙を届けたい。受け取ってくれるかな。


 さて、なんて書こうか。


 敬具

 拝啓、益々ご清祥のことお慶び申し上げます。


 ……んー違う。


 Dear.私の愛しき人へ


 ……愛しいなんて言ったことない。直接言いたいな。


 いや、違う。そうじゃない。手紙じゃないや。



 伝えたい思いがあるから。何年何月経っても癒えない心があるから。色褪せない愛情があるから。


 私はあなたに会いたいんだ。



 でも、それは私が幸せになってから叶えることにするよ。


 あなたとの()が育つまで、私が見守ってから、あなたに会いに行きますね。

 それまで待っていてください。


 昔から、待つの得意でしょ?



「あなたの好きな色は、私と同じ紫だよね」




 あなたが好きな私が好きな夜空の星灯。

 紫のあなたが良く視える。















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