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【改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!  作者: 七海美桜
南の国の戦

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さようなら

「あ、兄貴……聞き間違いだよ……俺がそんな事する訳ないだろう?」

 バルドゥルは、手にしていた剣を床に落として、懇願の言葉と共に床に膝を着けた。ツェーザルは、そんな弟をきつい眼差しで見ていた。そうしてアンゲラー王国の王女を斬って、その血が滴る剣を手にしたまま、ゆっくり歩み寄った。

「残念ね、あたしはずっと起きていてベルトーーアンゲラー王国の王女があなたに言った言葉をちゃんと聞いたわ。『邪魔な弟を殺してあげた』って。どういうことなの?」

「お、王女が! アンゲラー王国の宝物庫で保管していた、乾燥した龍殺しの種を持っていたんだ! それをハーレムで育てていて、ようやく実がなったんだ。アロイスは先祖返りの目をしているから、きっと猛毒になる。簡単に殺せるから、いざという時助けてくれって!」

 泣きそうな顔で、バルドゥルはツェーザルにそう話した。

「あたしの事も殺す気だったの?」

「違う! それだけは神に誓っていい! 兄貴を殺すなんて、俺には出来ない! アンゲラー王国が亡びたら、王女が俺と一緒に逃げようと言ったんだ。アロイスさえいなければ、王女に従う事なんてしなかった!」

 涙を零しながら顔を上げた弟に、ツェーザルは無表情で剣を振り落とした。


「残念ね――あたしは、あなたを殺せるわ」


 勢いが付いた剣は、バルドゥルの首を斬り落とし床に叩きつけられ、剣先が折れてしまった。

「さようなら、バルドゥル」

 無残な死体になった実の弟を、ツェーザルは静かに見下ろした。ドサリ、と首がなくなった身体が倒れた。

「あなたは、バーチュ王国の第一王子ですね?」

 じっと弟の骸を見ているツェーザルに、ジークハルトは静かに話しかけた。ツェーザルは、ようやく顔を上げてジークハルトとヴェンデルガルトを見つめた。

「申し遅れました、俺はバルシュミーデ皇国の第一王子であり薔薇騎士団総帥のジークハルト・ロルフ・ゲルルフ・アインホルンです。水龍に運んで貰い、ヘンライン王国に直接向かいました」

「あたしは、ツェーザル・ペヒ・ヴァイゼです。お恥ずかしい所をお見せしました。アンゲラー王国は滅びたのですね……安心しました。ヴェンデルガルトちゃん、怖い目に遭わせてしまってごめんなさいね。でも、約束通りあなたの事を護れたわ」

 困った様に微笑むツェーザルに、ヴェンデルガルトはかける言葉がなかった。涙を流しながら、折れた剣を握り締めるツェーザルの手に自分の手を添えた。小さく震えている手をしているツェーザルに掛ける言葉を、ヴェンデルガルトは知らなかった。


「アロイス王子の事ですが、まだ息はあります」

「本当!? 助かるの!?」

 ジークハルトの言葉にツェーザルは驚いた声を上げるが、その表情が暗い事にツェーザルは強張ったままだった。

「水龍の魔法で、今はまだ生きている状態です。詳しい事は、彼女に聞かないと分かりません」

「水龍――もしかして、ヘートヴィヒ様かしら? バーチュ王国の、最初の王の妻よ。彼女なら、アロイスを治してくれるかもしれないわ。だって、子孫だもの」

「そうです、きっと助かります! 信じましょう」

 ヴェンデルガルトは、励ますようにツェーザルの手を握る。ぎこちなくツェーザルが手を離すと、金属音を立てて剣が床に落ちた。そうして、ヴェンデルガルトの手を握り返す。

「とにかく、アロイス王子の元に向かいましょう」

「分かったわ」

 ジークハルトは剣を腰の鞘に戻して、ツェーザルはバルドゥルの落とした剣を拾って腰に下げた。


 そうして、急いで部屋を出る。


 だが部屋を出る前に、ツェーザルは視線の隅に弟の骸を最後に見た。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 泣きながらずっと自分の後をついてきた、出来の悪い弟。本当なら、どこかの国に婿に出して弟の呪縛から逃がしてやりたかった。どんな弟でも、ツェーザルには可愛い弟だった――アロイスを手にかけるまでは。


 あたしは、方向を見誤った弟を助けられず――手にかけた。これからも、この手は汚れるのかもしれない……あたしは、次の王の器に足りるのかしら。


 ジークハルトの後に続きながら、ツェーザルはアロイス迄失うかもしれない現実を受け入れられずにいた。

「大丈夫です――ツェーザル様は、間違ったことをなさっていません。第一王子として、国の為に立派になすべき事をされています」

 心を見透かすかのように、手を繋いだままのヴェンデルガルトがそう声をかけた。視界が滲むが、ツェーザルは笑顔を浮かべた。

「有難う。あたしは、後悔していないわ」


 ヴェンデルガルトの優しい甘い香りが、じんわりとツェーザルの心を癒すようだった。今のツェーザルには、それだけが心の拠り所だった。

 


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