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【改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!  作者: 七海美桜
南の国の戦

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一時撤退

「バーチュ王国! 貴様らも、ヘンライン王国から搾取していたではないか! 我々に刃向かう奴らを、何故守る!?」

 アロイスとアンゲラー王国の王子の刀が、火花を散らしてぶつかり合う。泡を吹いてアロイスに訊ねる王子も、興奮や幻覚の薬草を飲んでいるようだ。力が強い。その刀を押し返しながら、アロイスはふっと笑った。

「無駄な争いを無くしたいだけだ。俺には大切に想う人がいる、その人が安心して暮らせるようにしたいだけだ」

「笑止! 愛だ恋など、全く必要ない! 力と富こそが、この世で最も必要なものだ!」

 アンゲラー王国の王子の刀には、毒草が塗られている。それに気を付けながら、アロイスは後ろに下がった。

「アロイス王子、後ろだ!」

 ジークハルトの声に、アロイスは横に飛んだ。後ろから大男が、剣を振り下ろそうとしていたようで、アロイスが避けた事により地面を叩いた。

「すまん、感謝する!」

 今度はジークハルトが、アンゲラー王国の王子と対峙する。こんなに斬り合っているのに、アンゲラー王国の兵たちは襲ってきた時と同じ勢いで剣を振るう。迎え撃つヘンライン王国の兵たちは、息が乱れて疲れ始めていた。


「う、あぁああああ!!」

 不意に、アンゲラー王国の兵が叫び始めた。それは次々と伝播(でんぱ)する様に広がっている。ジークハルトと向かい合う王子も、大量の汗をかいて顔色が悪くなっている。どうやら、飲んでいた薬の効果が切れ始めているようだ。

「撤退だ! 一度引くぞ!!」

 駱駝に乗り直した王子の言葉に従い、アンゲラー王国の兵が撤退していく。その時、小さな馬車が見えた。

「あの馬車だわ! あそこに火の魔法使いがいる筈よ!」

 水龍のヘートヴィヒが叫んで、水の魔法を投げつける。しかし馬車から大きな火の玉が飛んできて、水蒸気となって消されてしまった。

「仕方ない、こちらもそろそろ限界だ……援軍が来るまで、何とか耐えれた。次襲ってくる頃には、援軍が来るはずだ」

 レーヴェニヒ王国の右の大臣がそう声をかけた。ヘートヴィヒは悔しそうに唇を噛んだが、その言葉に頷いた。


「全員、剣を置き休んでくれ! 水を飲み、怪我をしている者は治療を!」

 そう声を張り上げた左の大臣だったが、彼も左肩を斬られていた。城の中に隠れていた使用人たちが、水や食料を用意し始める。

「ヴェンデルガルト嬢、申し訳ないが治療をお願いできるでしょうか?」

「分かりました!」

 王の言葉に、ヴェンデルガルトは慌てて城の外に走っていく。「誰か守りを!」と王の言葉に、兵が二人ヴェンデルガルトに付いてきた。

「治療をします! 怪我をしている方は、私の所へ!」

 ヴェンデルガルトが大きくそう声をかけると、さっきまで戦っていた兵や騎士たちから歓声が上がった。

「聖女様! 有難うございました!」

「ヴェンデルガルト様! ご無事で安心しました!」

 口々に感謝の言葉を口にするが、駆け寄って来たジークハルトがヴェンデルガルトの服を見て動揺したのか赤くなってしまった。

「ヴェンデルガルト嬢……その、衣装が見慣れなく……いや、元気そうで安心した」

 赤くなるジークハルトにつられた様に、ヴェンデルガルトも赤くなって臍の出ている辺りを両腕で思わず隠してしまう。

「げ、元気です。けれど、ジークハルト様! なぜこんな危険な場所に!?」

「君を迎えに来たんだ。ビルギットも心配している」

「ビルギット……!」

 その名を聞いて、ヴェンデルガルトは泣きそうな顔になった。

「――話の間、申し訳ない。怪我の手当てをお願いしたい」

 申し訳なさそうに声をかけてきたのは、左の大臣のエッカルトだ。肩の傷は毒草のせいか、この短期間で膿み始めている。

「申し訳ありません、治療を始めます!」

 ジークハルトは頭を下げると、少し後ろに下がった。そこに、怪我をした兵士たちが並ぶ。そんな彼の傍に、アロイスが来た。

「こちらは――二千ほど失ったようだ。ヘンライン王国は、戦いをあまり知らない。援軍が間に合わなければ、危ない」

 門の付近に倒れている兵を見渡しそう言ったアロイスは、戦いの激しさで少し息が上がっているようだ。アロイスの部下は少ない。薔薇騎士団たちはジークハルトを庇い戦っていたので、怪我も負わなかった。


「アンゲラー王国の死亡兵は、多く見積もっても一千ほどだろう。イザークたちがアンゲラー王国を襲ってくれていれば、あちらの援軍は来ないだろう。この戦いは、負けない。落ち着いたら、君との話し合いだ」

「分かっている」

 彼らの視線の先には、必死に治療魔法をかけているヴェンデルガルトがいる。バーチュ王国もバルシュミーデ皇国も、彼女を手放す気はなかった。


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