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【改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!  作者: 七海美桜
南の国の戦

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突破された北東

「国境付近にいた兵の倍の敵軍だと思われます。今は何とか持ちこたえていますが、突破されるのは時間の問題でしょう」


 何故かそう発言しているのは、先程会った妊婦だ。国王が隣に寄り添い、宰相が地図を広げていた。

「レーヴェニヒ王国の軍は、あと少し。ですが間に合いません。この北東を捨てて、兵を南下させるのが得策でしょう」


 ヘンライン王国は、国に兵が少ない。アンゲラー王国は、周辺の部族に金を積み、兵力を増やしていた。バーチュ王国は二国の間の軍事力だが、ヘンライン王国に軍隊を送っては、自国が攻められた時に不利になる。レーヴェニヒ王国の二万の兵が、どれほど欲しいか今は切実に思う。


「先日我が国を襲ってきたが、先にバーチュ王国を狙うと見せかけてヘンライン王国に変えたのだろうか?」

 アロイスがそう進言すると、女の赤い瞳がきらりと光った。

「もしかすると、二万の援軍の情報が洩れているかもしれません。爆破物などしかける余裕はあったでしょうか」

「宮殿の門に火のついた馬車で突進してきて、弓矢で攻撃してきて混戦状態が一時間ほど続きました。もしそれ自体が目くらましであるなら、国境付近に何か仕掛けする事が出来たかもしれません」

「成程」

 女は瞳を瞑り、黙り込んだ。しばらくそのままだったが、突然声を上げた。

「ああ! ――遅かった! バーチュ王国の北側の国境付近で、進軍して来た二万の兵が爆発物に巻き込まれました!」


 アロイスは、驚いた。どうしてこの女は状況が『視えて』いるのか。そこに、宰相が驚いているアロイスに声をかけた。

「大変失礼しました、王妃であるカサンドラ様は火龍です。今は人間のお姿をされています。こちらに向かっている水龍と交信されて、情報を共有されていらっしゃいます」


 龍だと?


 信じられない思いで、女――カサンドラを見直した。龍が先祖である自分がいるのだから、龍は間違いなく居る。だが、実物を見るのは初めてだった。

 レーヴェニヒ王国が援軍を送ったのは、これか。龍が国王の子を身籠っているから、助けに援軍を出したのだ。繋がりがようやく分かった。

「カサンドラ、爆破に巻き込まれた兵たちは無事なのか? 国境付近なら、バーチュ王国にも被害が出ていないのか?」

 王が尋ねると、カサンドラは首を横に振った。

「今は混乱と煙と夜の闇で――まだ、判断しかねます。一度北に下がって貰います」


「北東、陥落! アンゲラー王国の兵は、このまま南下してきます!」


 狼煙(のろし)を確認した物見の兵が、再び鐘の音を鳴らした。宰相は、緊張した面持ちで地図に印をつけた。

「朝までに、レーヴェニヒ公国の兵が来なければ――我が国の人員で耐えられるだろうか」

 絶望に満ちた声が、部屋に響いた。



 遠くで、ドォォンとした音が鳴った。それは一度ではなく、何度も地響(じひび)きのように鳴る。微かに、地面も揺れているかもしれなかった。

 部屋でベルトと食事をしていたヴェンデルガルトは、驚いて鳥の肉を落としてしまった。ベルトも、不安そうに立ち上がって窓から外を覗きに行った。

「ヴェンデルガルトちゃん、大丈夫!?」

 そこへ飛んできたのは、ツェーザルだ。兵を二人連れている。

「大丈夫です、また攻め込まれたのでしょうか?」

「まだアロイスからの連絡はないのだけど、レーヴェニヒ王国の援軍がうちの北の国境辺りに来たらしいの。通行許可申請を出していなかったからゆっくり白い布を振りながら近付いて来たらしいのだけど、どこからか爆発物が次々投げられて大変な状況らしいわ」

 アロイスの連絡はまだ届かないが、まだ帰って来ない事を考えると成功したのだろう。部下に手紙を託して、歓待を受けているはずだ。賢いツェーザルは、そう状況を理解している。その手紙に、レーヴェニヒ王国の援軍を通らせるようにと書かれているはずだ。でなければ、レーヴェニヒ王国の援軍がバーチュ王国に来るわけがない。もし来たとして、敵対しているなら攻撃をするはずだ。


「こんな夜に攻撃を仕掛けて来るなんて、不気味だわ。もしかして、レーヴェニヒ王国の援軍を足止めさせてその間にヘンライン王国を襲ってるんじゃないかしら?」

「その可能性はありますね――アロイス様は、大丈夫でしょうか」

 もしアンゲラー王国が攻め込んできているなら、ヘンライン王国にいるアロイスも戦渦(せんか)に巻き込まれているだろう。ヴェンデルガルトは、心配そうな表情になる。

「アロイスの手紙を待つのと、レーヴェニヒ王国の援軍を助けないといけないわね――夜が明ける前に手を打たないと、ヘンライン王国は危ないわ」

「私にも、何かお手伝いさせてください!」

 ヴェンデルガルトは、自分だけ護られてはいけないと声を上げた。



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