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【改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!  作者: 七海美桜
南の国の戦

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交渉

 城内は途端に騒がしくなった。メイドや執事、コックたちが忙しく走り回る。レーヴェニヒ王国では神の花とされる、蓮の花を温室から運んできて花瓶に綺麗に活けた。


 料理は、こちらの国のメニューを揃える。普段食べる機会がないらしいので、ギルベルトはそう判断した。国王が来たのではないので、皇帝は交渉をジークハルトとギルベルトに任せて部屋に戻った。




「しっかりしろ、ギルベルト!」




 指示をしてぼんやりとその様子を見ていたギルベルトに、ジークハルトは声をかけた。ギルベルトは少し疲れた顔をして、その美しい顔が陰っていた。


「この短期間で、重大な失敗ばかりしています。今回は失敗できません――可哀想に、ヴェンデル……一人で心細いでしょう。私の命を懸けて、アロイス王子から奪い返すべきでした」


「お前が死んで、それでヴェンデルガルト嬢が喜ぶと思っているのか?」


 ジークハルトは真っ直ぐに幼馴染の顔を見つめて、静かに尋ねた。ギルベルトは唇を噛んで、小さく首を横に振った。


「間が悪い時が重なったんだ。大丈夫だ、お前は賢い。この交渉、失敗はしない。俺と一緒に頑張ろう」


「分かりました、頑張ります。焦らず、今までの様に……有難うございます、ジークハルト」


 覚悟したように小さく頷いてから、ようやくギルベルトはジークハルトに笑いかけた。それを見て、ジークハルトは安心したようだ。彼も小さく笑みを浮かべた。




「失礼いたします。レーヴェニヒ公国からの使者様、ご到着です」


 すっかり元気になったランドルフの声が、ドアの向こうから聞こえた。ジークハルトとギルベルトは、背筋を伸ばした。


「ようこそ、バルシュミーデ皇国へ。第一皇子で薔薇騎士団総帥のジークハルト・ロルフ・ゲルルフ・アインホルンです」


「遠い所、ようこそいらして下さいました。宰相の息子であり、白薔薇騎士団団長のギルベルト・ギュンター・アダルベルトでございます」


 ドアが開かれると、白い袖の長い上着に(すそ)が広いズボンを身に着けた、よく似た顔立ちの二人の青年が並んでいた。黒髪に、薄い茶色の瞳だ。


「エッカルトと申します。左の大臣です」


 白い服の袖に編み込まれた赤いリボンの青年がそう名乗る。


「エトヴィンと申します。右の大臣です」


 次いで、青いリボンの青年も名乗る。




「我らが国王ラファエル様から、南の三国で勃発した戦についての我が国の対応及びバルシュミーデ皇国へのお願いについての(ふみ)をお持ちしました」


「承知いたしました。では先ず、長旅の疲れを少しでも癒して頂きたくお茶とお菓子をお持ちいたします。こちらへ」


 必死に料理の準備をしている隣の部屋のテーブルに、ジークハルトは二人の大臣と付き添いの五人の部下達をテーブルに案内した。後十名ほど来たらしいが、謁見の席には参加せず別の部屋で休憩をしている。


「お心遣いありがとうございます。では、遠慮なく頂戴します」


 長旅と言っても二国の距離は南の国ほどではないが、それでも少し疲れた顔をしていた。二人の大臣はお茶の言葉に、ホッとした表情を浮かべた。




 すぐに、王族付きのメイドたちがお茶とお菓子を用意しに部屋に入って来た。ジークハルトとギルベルトも席について、緊張して震えそうになる手を押さえて笑顔を浮かべた。








「少し休みましょう、ヴェンデルガルト様。お疲れになられたでしょう」


 ベルトにそう声をかけられて、ヴェンデルガルトは自分が夢中になって作っていた事に気が付いた。確かに同じような姿勢でいたので、身体が強張って痛んだ。


「簡単そうなのに、難しいのね」


 すぐに編み目を間違えたり歪んでしまうので、解いては編み直しという作業を繰り返していた。三個目のものを今手にしているが、やはり少し歪んでしまっている。


「慣れです、ヴェンデルガルト様」


 不格好な自分が編んだものを眺めていると、いつの間にかベルトがチャッツを用意していた。手際よく、銀食器に淹れてくれる。お茶菓子は、朝ヴェンデルガルトが気に入ったラルラを練り込んだ蒸しケーキだ。


「アロイス王子は、朝から随分お喜びですよ。ヴェンデルガルト様がお食事を召し上がらなかったらどうしようか、それをずっと心配されていましたから。出来るだけラルラを使った料理を出して欲しいと、料理人に話していらっしゃいました」


「もしかして、昨日私が食事の前に寝ちゃったからかしら?」


「はい。医者はお疲れだから大丈夫です、と申したのですがずっとヴェンデルガルト様の傍にいらっしゃいました。今朝、嬉しそうに食事をされているヴェンデルガルト様の姿に、ようやく安心したようです」




 そんな意外なアロイスの話を聞いて、ヴェンデルガルトは少し顔を赤くした。

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