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【改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!  作者: 七海美桜
陰謀

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町の噂

「いやあ、ヴェンデルガルト様はどなたと婚約されるんだろうな」

 そんな会話が聞こえてきたのは、酒場だった。イザークは酒に強い。バルシュミーデ皇国の酒と言えばブーナだ。ほろ苦く、泡の立つ黄金色の酒で男は好んでこれを飲む。貴族のパーティーではワインやシャンパンが多くなるが、町人はこれを飲む。それに合わせて、イザークもブーナを飲んでいた。

 関係ない話題だったが、テーブル席にいる三人の男がブーナを飲みながら、そんな話で盛り上がっていた。

「俺は、カール様にお似合いだと思うなぁ。奥手のカール様にも、ヴェンデルガルト様は優しいって聞くぞ? パーティーでダンスが踊れないカール様と、城でダンスを踊ったそうじゃないか!」


 ――カール。城の外でもこんな事言われているんだ……。


 相方を少し不憫に思いながら、その話に聞き耳を立てる。

「俺は、やっぱりギルベルト様だよ! 目を治して下さって、ギルベルト様は感謝と共に深い愛情でヴェンデルガルト様を見守っているらしいからな。しかし、包帯の下にはあんなお綺麗な顔があったとはなぁ。こっぴどく婚約破棄したご令嬢も、今頃後悔してるんじゃねぇか?」

 包帯を巻いていた時のギルベルトは、必要な時以外は人目に付かないようにしていた。しかし今は自信が出て、外交の席にも積極的に顔を出している。確かに、ヴェンデルガルトのお陰としか言えない。無償の愛で治してくれたヴェンデルガルトに惚れるのも仕方ないだろう。

「いやいや、やっぱりジークハルト様だよ!」

 かなり酔った男は、ドンとジョッキをテーブルに置いて力強く言った。

「ジークハルト様には、婚約者が決まったじゃないか」

「ダメダメ、あの婚約者は駄目だ。ほら、街の南の花屋の未亡人を、父親が愛人にしたそうじゃないか。節操ないのが遺伝したのか、その絵描きの息子はジークハルト様の婚約者の愛人になったって聞くぞ? 親子で親子を愛人にしてるなんて、俺には考えられねぇよ。ジークハルト様が、バッサリあの親子を戒めてヴェンデルガルト様を皇妃にしてくれないかなぁ……あの綺麗な金の髪に金の瞳だぞ? 身分も王女だし、ジークハルト様が一番だ」

 話の内容に自分が入っていない事に文句が言いたいが、気になる話題が出て来た。町の南の花屋の親子を、愛人にしている? もしかして、そこに何か隠していないか?

 それからしばらくその三人の話を聞いていたが、話題は違うものになった。これ以上は情報が入らないと、イザークはその酒場を出た。


 それから夕方近くになるとイザーク達は教会に集まり、集めた情報を共有した。

「町の家具職人が、突然死をしたそうなんです。なんでも、大金が入る仕事を貰った、と近所に話していたそうです。しばらく家具を作っていたようですが、急死したようで。突然死ですね、出来上がった家具は見当たらなかったそうです」

 部下の一人が、気になる話を持って来た。

「出来上がったものが無くなって、突然死……不自然だね。それも少し調べよう。他には?」

「ヤバそうな話を聞きました。何でも、薔薇騎士団とは違う部隊を皇国が作る準備をしている。功績次第では爵位や領地が貰える。その部隊に入りたい人を、『ラムブレヒト卿が代表』として集めている。しかしこの話は極秘で、(おおやけ)に話すと処分される――そんな話が、ラムブレヒト公爵が開くパーティーやお茶会で話されているそうです。主に、薔薇騎士団に入っていない子爵や男爵位の若い男に話していると聞きました」

「なにそれ。そんな話聞いてないよ。明らかに怪しいね、誰から聞いた?」

 イザークは、怪訝そうに眉を寄せた。

「従兄弟から、本当なのか? と聞かれました。信用できる話だと思います」

「そうか――それも調べよう。あとは、僕が聞いたラムブレヒト公爵の愛人親子だね。先に、ジークハルトに報告をするよ。それから、その怪しい三つの事を調べよう」

 青薔薇騎士団は頷くと、一度城に戻って騎士服に着替えた。イザークは彼らと別れて、ジークハルトの執務室に向かった。


「どれも気になる話だな。引き続き、調べてくれ。俺は、フロレンツィアの新しい執事が気になる――パーティーで、ワインを持って来た男だ」

 ジークハルトの言葉に、イザークはあの夜を思い出した。確かに、ヴェンデルガルトを見舞いに来たと彼女が現れた時に、迎えに来た男と同じ人物だ。

「じゃあ、それも調べるよ。でも――一貫してるね」

「何がだ?」

 イザークの言葉に、ジークハルトは不思議そうに訊ねた。

「フロレンツィアの愛人だよ。皆、ジークハルトに似た雰囲気じゃないか。もしかしたら、彼女なりにジークハルトには本気で恋をしているのかもしれないよ? 皇国転覆を狙っていても、彼女はジークハルトを手放さないと思う」

「……」

 ジークハルトは、癖になったように溜息を零して頭を掻いた。



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