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止まらない死闘

青海夜海です。

リリヤとルシファーの死闘は終わりを知らない。

 

 そしてこれは世界が確実な絶望に変わる少し前。

 龍の翼を携えたリリヤは飛行による縦横無尽で血棘を回避する。


「キミは逃げてばかりだね。変わらない変わらないよぉ!ボクは退屈になるよ!」


 赤き星からの棘はリリヤだけを仕留める毒針。宙を舞い剣で切り裂きタイミングを推し量る。棘嵐の中を突貫してくるルシファーの打撃をヴェルテアたる漆黒の剣で交差する。


「弱いよ弱い。嗚呼、あの日となんら変わっていないねキミは」

「黙れェ……ッ!貴様に何がわかるッ!俺が変わっていないなどあるはずがない!」

「だってそうだろ。こうしてボクを追い詰める事も出来ていない。ふふふ、また誰も守れなかった。また守れられる。そしてボクも倒せない!」


 弾き飛ばされて揺れる身体。視線の外れた刹那に間合いを詰められる。

 上段斬りを蒼の剣で何とか受け止めるも、それを軸にした回転で柄の端がリリヤの頭蓋を撃つ。


「くっ⁉」


 掠る程度で避けるも、揺れる脳が煩わしい。

 ルシファーは再び急上昇から急下降して、頭上から突撃。重すぎる一撃を二双を交差して対立するも、龍の翼では踏ん張れずに地上へ落下。

 地面に叩きつけられる直前に何とか弾いて離脱するも、風圧がリリヤを遠ざける。


「やっぱりキミは弱いよ。だってこれ如き防げないんだから」

「ッ黙れェェッッ!貴様を殺すのは俺だァ!その譫言を吐く口を塞いでやる。死ね糞悪魔‼」

「アハハハハハハハハハハ!キミは馬鹿みたいだァ!戯言はキミのほうだろ‼そんな使命感?復讐心?ハッ!バカバカしいさァ‼キミがどんな思いでボクを殺しに来ようと、キミはボクの養分!死んで礎となればいいだけの家畜さァっ!」


 奥歯を噛んだ。柄を握る力が増量する。悪魔は嗤う。笑うのだ。あの日と同じように。それは見下しであり、憐れを愉しむ愉悦であった。


「八年前もそうだった。龍人(ドラゴニュート)たちの無様と言えば…………ふふふっハハハハハ!今でも笑いが止まらないよォ!だって食物連鎖の頂に君臨するドラグニュートが、ボクの手駒に落ちて簡単に死んだんだよ!あれは笑えた!泣き喚いて、助けてと叫んで、目の前で仲間の死を見れば絶叫するんだァ!あんなに素晴らしい絶望の顔をボクは知らなかった――ッ‼」

「…………だまれ」

「あの日は邪神の命令だったから、魂は持ち帰らなかったけど……嗚呼、本当に愉悦だったさァ‼泣いて喚いて叫んで壊れて、あァあっ!あんな絶望の顔!今でもゾクリと気分が高揚するよ――!ああ堪らない!身体が火照り、気持ちがいい!実に悦だった!」

「…………だま、れ」

「そう言えば、あの桜の髪の女の子なんて最高だったよ!キミの友達かは知らないけど、子供たちを守るんだって身体を張ってボクの前に憚ったんだ!その女の子の眼の前で一人ずつ子供共を殺していくのは最高に気分が良かったね‼あの子の憎しみと絶望の表情は今だに忘れられない‼まーその子はボクがちゃんと殺してあげたよ。手足を切り取って心臓を抉って炎で焼いてあげた。あの時の声も至極最高ぉ!ああ、身体が火照ってきた!嗚呼、アァ今すぐキミのが欲しい!ボクを満たしてくれるキミの絶望が欲しい‼」

「黙れぇええええええええええええええええええええェェェェェェェェ――――ッッッ‼」


 最大の憎悪が猛る。最大の嫌悪と憤怒、激情が着火した。

 花火なんて美しくない。それは地獄の炎。神の炎ですら濁らせる憎悪の炎。

【アベンジャー】が火を噴いてリリヤを超越させる。

 誰も見たことのないほどに強烈にして苛烈。熾烈にして猛烈。

 漆黒の翼が飛翔。壮烈な斬撃の嵐が武術の幾度が、嵐よりも激しく地獄よりも恐ろしく燃えた。


「黙れ黙れ黙れッ‼よくもシアナ姉さんをっ、おじちゃんをっ……みんなを殺したなァァァ‼絶対に貴様だけは許さないッ!殺す殺す殺す――ッ‼」

「アハハハハハ‼その顔も一興だね!でも、死んだのは弱いからだよ。ボクを恨むのは嬉しいけど筋違いじゃないかな?」

「関係ない!俺の家族を平和を穢しのたのは貴様らだァ‼そこに赦される価値も理由も何もない!皆を貴様が殺した。俺の大好きな人を貴様が殺したッ‼貴様がァ俺の家族を殺したァアアアアアアアアアアアッッ‼」


 火花が散り、轟音が倒壊が鳴り止まない。赤き刃を往なし、腹を蹴り上げる。後退など許さない怒濤の反撃がルシファーに傷を着実に与えていく。斬撃がルシファーから血を奪う。弾け裂け、斬獲を制しにいく。


「……っ⁉……ならボクを殺す理由はないよ。この弱肉の世界で強い者だけが生き残れるんだよ!」

「ふざけるな!無意味な殺戮こそ悪だ!そんな者に生きている意味がない。平和の邪魔でしかない!平和を壊す貴様のような醜悪がいるからそんな世界になるだァ!」

「ボクが悪?フハハハハハハハハハハッ!それはいいね!ずっとボクの心を満たす欲だけを求めてきたけど、そうか!この支配要求(ゲーム)こそがキミたちにとっては悪なんだね‼でも、ボクの眷属たちはみんな嬉しいと思うけどね?」


 血棘の乱雑を剣を交差して頭を守る。腕を裂き肩を貫き脚の肉を削る。


「キミの家族の魂もほんの少しだけなら預かっているよ」


 その一言。フラッシュバックがリリヤを竜へと変えていく。もしくは本当の悪魔へと。

 更なる憎悪。絶対の殺意。リリヤは黒い炎に灯った。


「ァァァアアアアアアアアアアアッッ‼」


 血棘の嵐を吹き飛ばし、全速力の飛翔からの双撃がルシファーの刃をへし折って遥かへ薙ぎ払う。二双の乱撃がルシファーを容赦なく切り裂いていく。


「俺の家族の魂を冒涜したのかァアアア‼」

「ぐふぇ⁉……そうだよ。ここにいる亡者たちと同じようね!あれら最高だった!ボクの始めて実践であれだけの魂を捕らえることが出来たんだッ!――ぅッ⁉ボクに課せられた楔が、キミたちを囚わすっ!ボクの世界が出来るんだァ‼」

「アアアアアアアアアアアッ‼貴様は絶対に赦さないッ!何がなんでも殺してやるッッ‼」


 空気がはち切れ風が薙ぐ。激しい飛行でぶつかり合う復讐者と悪魔。ああ、止まることを知らない。狂っている感性を抱くルシファーも、その悪魔によって更なる憎悪と殺意に溺れるリリヤも、死ぬまで止まることを知らない。この手で殺すまで戦いは終わらない。

 それは死闘。絶対に死しか与えぬ戦い。


 そして、それは一つの変化の下に変則した。


 赤き星が唸りだす。楔が激烈に閃光して魂に訴えかける。

 それは〈血錠〉からなる進化だった。それは悪魔からのギフトだ。

【明星】ルシファーは高らかに笑った。


「ハハハハハッ!さぁ!始まるさ!明るき星が煌めかせるボクら悪の進撃がァ‼」


 魂が穢され、〈権能〉からなる〈血錠〉が眷属に力を与える。

 一番へと輝かせる明星からの贈り物。世界を歪め、神を怒らし、理から外れた監獄でしか為せない〈権能〉。全ての条件が揃ったその時でしか発動できない揺るがしの夢想。

 これは夢想を真実に変える『一番星』。

 望む一番へと誘う変革の歪み。これはエンドロールへの片道切符。

 希望すら破壊して、意志すらも捻じ曲げる圧倒的絶望の顕在。

 それは、それは、それは――



「さぁ、『魂』たちよ!ボクたちの血肉となり、願いを叶えろ‼――〈邪を纏う慣れ(デウス・)果てた魂の虚像(エヴォリューション)〉」



今週中に更新予定です。

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