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地下ダンジョン進行

青海夜海です。遂にダンジョン進行です。


 地下ダンジョン三階層にて、リリヤたちは国情の交換をしながら侵攻する。


「国の外壁に沿って中央に攻めたらしい」


 ヴェルテアが獲得してきた情報に疑問を覚える。


「周りから中央?変じゃないか」

「そうだが……転移の位置がはっきりしていない以上わからぬ。死者は今の所三万人程度だそうだ」

「三万人……多いね……」


 悲愴に顔を顰めたローズとは裏腹にリリヤとセルナは疑問が尽きない。


「この国は全民で確か……」

「十万人以上よ。約三分の一が被害にあったということだけれど……」

「ああ。おかしい」

「おかしい?」


 首を傾げるローズにセルナが説明をしていく。


「魔族の狙いは人間の殲滅や国の強奪でしょ。それなのにたった三分の一で諦めたのよ」

「それは、ギルドの対抗が速かったからじゃないのですか?」

「それもあるけど……違うわ」

「えー……どういう事ですか?」


 再度困惑するローズをちらりと見てから暗がりの前を見た。何故か魔物がいなく、ダンジョンが機能していないような不気味さ。何か別の要因がこの事態にさせているのか。


「人間を殺すならどうして中央から攻めなかったの?いくらギルドの強者がいるとしても、転移の奇襲なんて防ぐのは困難よ。それなのに魔族は外壁……つまり人間が一番少ない所から攻めてきたわ。そして不自然に中央へ集まってきの。普通なら逆ね」

「確かに……奇襲で人が一番集まっている闘技場やパレードの準備がある街道を攻めてから、外壁へと逃げるのが定石ですね。じゃあ、魔族には他の目的があるってこと?」

「そう考えるのが普通だけれど……リリアは――」


 リリヤに訊ねようとしたその時、ダンジョンの壁に亀裂が入り、数匹のブラックウルフが飛び出してきた。


『ガゥオオオオオォッ』


 人間の首筋など容赦なく噛み千切れる牙がセルナに襲いかかるが、一線。セルナが抜き去った斬撃がブラックウルフの首と胴体を切断して、灰へと還す。

 ローズは魔法で杖の先に刃を偽装して、セルナには劣る剣舞いで五体のブラックウルフを翻弄して殲滅。

 ゼアは回し蹴りでブラックウルフ二体を同時に吹き飛ばし、背後からの一体を躱して踵蹴りで灰にする。各々が瞬時に殲滅を終えたその時、リリヤの叫びに一同視線を動かす。


「セルナッ!このダンジョン、何階層だ?」

「えーと……三十階層よ」


 この地下ダンジョンは低レベルで有名だ。初期のゴブリンやブラックウルフ、コボルドやオークなんかの魔物が多く、竜種もいなければミノタウロスやファイヤーホーク、オーガといった上級冒険者お誂え向きの怪物もいない。極めて低レベルのダンジョンは、学園に所属する見習い戦士たちや初級冒険者たちが多様に活動する訓練所。

 故にリリヤたちにとっては鴨も鴨。適当な剣の一振りで殺すことなど容易い。けれど、リリヤが浮かべる脂汗は焦りのようであった。


「急ぐぞ!魔物は無視して走れ!」

「おい⁉何があった!」


 走りだすリリヤの後を慌てて三人は駆ける。飛び掛かってくる魔物は彼らのスピードに追い付けず空を切って敵を見失う。後方から聞こえてくる咆哮が嫌に汗を流す。


「この地下のどこかで極大な魔力が蠢いておる!」

「それって……」

「まさか転移⁉」


 セルナの声に頷くリリヤ。ここダンジョンの最下層の最奥で悍ましい魔力が蟲のように蠢いているのだ。それは強大な力であり、その魔力量であれば数百、数千の一斉転移は可能だ。膨大に高まる魔力に一早く気づけたのはヴェルテアのお陰。それでも今から三十階層を降りるのは至難。けれど、やらなければ態勢が整えれていないアーテル王国に魔族の軍団が投入されてしまう。それは最悪の結末だ。


「リリヤよ。時間はもってニ十分程度だ!」

「わかった。セルナ!最速の道でいく」

「わかったわ!」


 セルナを先頭に五人は駆けていく。三階層から四階層、五階層から十階層、十一階層から……。その度に魔物による抵抗が反抗が徐々に増えていった。魔物の大量発生に、ここにいるはずのないオーガやファイヤーホーク、ガーゴイル、ついにはワームまで襲い掛かって来る。


「何でこのダンジョンにいないはずの魔物がいるのですか⁉」

「ごたごた言うな!さっさと殺せ!」


 振り上げられたオーガの拳が地面を叩きつけて砕く。飛び下がったセルナの背後から二体のオーガが咆哮を上げながら叩き潰しに来るが、それを身体を捻って跳躍し、垂直斬撃がオーガ二体の首を刎ねる。ゼアの狼たる迅速がナイフの光と共に駆け、オーガの魔石を破壊。


『ゥゥォオオオオオオオオッ⁉』


 鼓膜を劈く喚声が瞬いた。二十体のファイアーホークの火球が円状にセルナたちを見据え放たれる。しかし――


「【咲け!星花】っ!」


 瞬間、咲き誇った青き花が盾となり火球を相殺する。爆煙が視界を塞ぐ中、ニ人は駆ける。煙の中から雷が全てのファイヤーホークの心臓たる魔石を砕く。


『キュウァアアアアアァァァァ——ッ!』


 襲い掛かってきたガーゴイルたちだが、その爪牙が降り注ぐ前に閃光のように現れた二人の戦士によって全滅する。


「ありがとうローズ。貴女がいるだけで大分とやりやすいわ」

「ううん、わたしも一緒です。周りを気にしなくていいのは初めてかも」

「あっそ。俺はお前らの護衛じゃないんだけどな……」


 迫りくるワームの大群を見据え、駆けだそうとしたその時。


「死ね、竜のなりそこない」


 漆黒の閃光がワームの喉を切り裂いた。喚声を上げるワームは息絶えて崩れていく。リリヤ一人の斬撃が数十の軍を殲滅した。

 二十五階層に来てここ数分。魔物は三倍程度に膨れ上がり、いるはずのない種類まで存在している。異変が起きている。絶対的な均衡を崩すような異変だ。

 思考を回したい所だが、転移まで凡そ十分足らず。リリヤの斬撃で道が開けたその隙に滑り込むように彼らは疾走する。


「こっちよ!」


 セルナを先頭にダンジョンを進むが、幾度となく壁から数十の魔物が咆哮と殺意と共に生まれ、超然のスピードで追いかけてくる。止まっている暇はない。

 左に曲がり、頭上から落ちてくるワームを薙ぎ払う。壁を突き破ってきたゴーレムをゼアの『聖獣』たる身体能力の右ストレートが吹き飛ばして道を開ける。


「ちっ。数が多すぎる!どうなってるんだっ」

「いるはずのない魔物もいますし、わたしたちに対しての罠みたいな……」

「ローズの言う通りかも。これは意図的に仕組まれたダンジョン。そしてそれを出来るとしたら」

「ルシファーね」

「……そうだ」


 セルナに頷くリリヤだが、こう話しもしていられない。

 前方からファイヤーホークの群れが最大火力の火球を放とうとする。舌打ちしそうになるリリヤだが、背後からもファイヤーホークが火球を繰り出そうとして。


「前は私に任せて!」

「後ろはわたしがやるよ」


【正義】と【色彩】は英傑たる力で数秒の決着をつける。


 更に疾走したセルナは真下に入り込み、「はぁああああっ!」と独楽のように数回身体を回転させ放った斬撃で激風を起こし、反動がホークたちを仰け反らした。放たれた火球は天井に激突して瓦礫がホークたちを呑み込む。


「【アイリス・アステール】」


 青き星の花が芽吹き、水の砲弾が槍の速度で駆け、ホークたちの口の中で炎と交じり蒸発と爆発を引き起こす。蒸発の煙が立ち込め魔物から己たちの視界を奪い崩れた天井の瓦礫で呻くホークを無視して逃走。


「お前たち後七分程度だ。一刻の猶予もなかろう」

「わかってる!セルナ、もっと早く行ける路はないのっ!」

「あったらそっちに行ってるわよ!あるとすれば地面を壊すくことくらいよ!」

「地面を……その手があった!」

「えっ?嘘でしょ……」

「ヴェル頼んだ」

「この際は仕方ない。いいだろう。我が三十階層まで破壊してやる」

「ちょっと!真に受けないでよ!ここはダンジョンよ!そう簡単に穴なんて……」


 無理よと言いかけたセルナを制止したのはリリヤ。彼は見ていろとばかりに隣のヴェルに視線を注ぐ。


「我は冥王ヴェルテア!この程度何とでもないわ!」


 差し出した掌に極黒の魔力が集い、収集、圧縮して転移魔力と匹敵するような強大で膨大な魔力が輝いた。漆黒のそれは夜空のようで冥王の名に相応しい力。


「さぁ!我を通す路を成せ!【ディストラクション】‼」


 漆黒の波動たる魔法砲が解き放たれた。

 それは破壊そのものであり、世界を震撼させる代物。

 今だ本来の三割程度しか力が戻っていないヴェルテアであれ、この程度は朝飯前。極黒の光が治まっては目を開けば直径六メル程度の穴が前方の魔物とを隔てて空いていた。


「じゃあ、行くぞお前たち」


 そう言ってヴェルテアは穴に落ちていった。ヴェルテアに続いて、リリヤたちは垂直三十メル以上の穴に飛び込んだ。

 暗黒の穴は正しく冥界への片道切符のようで、ダンジョンはリリヤたちが通り過ぎていった穴を修復し始める。

 これで後戻りはできない。己をもって暗黒の最下層へと降り立った。


次は日曜日に更新予定です。

評価のほどありがとうございました。時間はかかると思いますが、邁進していいものを書いていく所存です。

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