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空のむこう  作者: マン太
12/13

後日談 すばる視点

 清が傍らにいる。

 以前と変わりなく。


 その事実に実感が湧かなくて、俺は幾度も清を見つめ、触れ、確認する。

「なんだよ? すばる。そんな顔して」

「ヘ? そんなって、どんな?」

 俺はリビングのソファに座り、傍らで新聞に目を通していた清を見返す。

 今日は土曜日。清も休みで、俺も休み。

 というか俺の方はコウに無理を言って、同じ日を休みにしてもらっているのだ。

 そう。俺は今、コウの経営するカフェの手伝いをしている。コーヒーが美味しいという評判の店だ。

 そこには時々、マナやアキも遊びに来て。清もそこへ顔を出せば、一気に以前の活気に満ち溢れ。楽しい時間が過ぎていく。

 そんな日々を送っていた。

 後は写真を時々、撮っていて。

 撮るのは身近な風景ばかりで、今の所、趣味の範囲だ。でも、撮っていてとても楽しい。

 俺だけが見た風景が、そこに切り取られているのだから。

 撮った中でイチオシは清だけれど、これは誰にも見せるつもりはない。


 俺だけの、宝物。


 清は本を読むときだけかけるメガネを外しながら、苦笑した。

「豆鉄砲食らったハトみたい…」

 肩を揺らして笑い出す。俺もつられて笑いだした。

「だって仕方無いだろ? 清が隣にいるって実感が湧かなくてさ」

 すると、清はひとしきり笑い終えたあと、俺の頬へ手を添え。

「実感なら、幾らだって湧かさせてあげるけど?」

「…んだよ。それ」

 意図を知って頬が熱くなる。

「もういいって言っても止めない奴をね…」

 言い終わらないうちに、唇にキスが落とされる。それはチュっと音を立て、離れて行った。

「うわ…、すばる、凄いエッチな顔してるって」

「はぁ? なに、言って──」

「かわいい…。っとに、すばる。それって自業自得だからな?」

「わけわかんね」

 清のすらりとした長い腕が、俺の肩から背へと回される。

 歳を重ねた分、清の容姿は更に艶を増した。迫力があると言ってもいい。

 そんな清に迫られて、否と言える者がいるだろうか。

 清は俺のことをかわいいと言うけれど、それは恋人の欲目で。

 清のことは誰が見ても、その優れた容姿を文句なしで認めるだろう。動く絵画だと思っている。

「あ~、まだ朝だってのに」

 言いながら抱きしめていた俺の身体をソファへと押し倒す。

「今日、出掛けるんじゃないのか?」

「う~ん。だったけど、急ぎじゃ無いし、明日でもいいし…」

 言いながら、来ていたスウェットを煽る様にして脱ぎ捨て、俺のシャツのボタンも外しにかかる。

 出掛ける予定で整えたはずの髪が乱れてしまっていた。

「清、ぐだぐだ」

 笑うと、清はムッとした表情になり。

「全部、すばるのせいだからな?」

「って、なに──」

 ガブリと噛みつくようにキスしてくる。

 

 あ、これって本気のヤツだ。


 ざわりと肌が粟立つ。

 今日はもう、このままここで過ごすのだろう。

 キスの合間、清の頬に指先を滑らせながら。

「俺…、ぐだぐだの清も嫌いじゃない」

「……っとに」

 クシャリと、前髪をかき上げたあと、

「自業自得、だからな? ちゃんと実感させてやるから…」

 ソファの上で、清は再度そう宣言すると、俺にじっくり触れてった。

 今日も清で満たされる。そんな一日の始まりだった。



―了―

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