第9話 学校祭2日目(午前②)
2日目午前の続きです
「きたわね、秋紗君」
最後のデートの相手でもある純恋との待ち合わせ場所に行くと先に待ち構えていて。
「えっと、純恋はどこに行きたい?」
「調理室に行きましょう。文化祭はいつでも入って料理できるようになっているわ。だから、私の料理を披露するわ」
純恋が即答し、僕たちは調理室に向かった。
調理室は1階の南の端にあり、中にはお菓子、カップラーメン、焼きそば、その他屋台で使う色々な料理の匂いが混ざっており、匂いを嗅ぐだけで少し胸焼けしかけた。
また、様々な人が立ち入っていて飲食物の出し物をしている人が多いせいか皆忙しそうだ。
生徒会メンバーは生徒会の仕事があるためそういった屋台や出し物といったことに携わることはなく実際は暇な時間が多い。
そのおかげで4人とのデートをする時間が作れていて。
「私が披露するのは、ケーキよ」
純恋の両親は有名なパティシェの人で、純恋もパティシェを目指して日々努力しているらしい。
そして、つい最近あった大会でも純恋の両親は優勝したらしい。そういえばそんなニュースがあったような...そう思っていると、純恋は素早い手さばきで、苺を切り、クリームを出しパンケーキを作っていった。
そして、数十分後純恋は苺のケーキを作った。
「おおっ、すごいね!純恋はこんなことができるんだね」
僕が感心して驚いていると、純恋は少し照れくさそうに笑っている。照れ隠すように早く食べるようフォークを手渡してくる純恋を見ればその姿は普段見る生徒会長としての威厳はなく、ただの普通の女の子で。
ケーキの味は文句なしで美味しかった。
「や、やばいよこれ!お店で出せるレベルの美味しさだよ!」
「だって、お店で出しているしね」
純恋がそう言って笑った。
そんな純恋の笑顔は僕にとってすごく心が温まっていくのを感じていく。
生徒会の仕事をしているときは、生徒会長として凛々しくクールな雰囲気を醸し出している。そんなオーラが他の生徒からは少しだけ近寄り難いといった印象を受けているのをたまに見る。
でも実際は、プライベートになるとよく笑う女の子だ。
そのギャップを純恋は持っている。それがきっと純恋の良さなんだろう。
ケーキを食べ終われば僕たちは野球グラウンドにいき10球ノックという野球部の出し物に参加した。
10球中1球でもバットに当てれば特別なキーホルダーが貰えるらしい。
純恋は意外にも運動神経が良く1球ではあったもののファール方向にボールが飛んでいった。バットにさえ当たれば賞品がもらえるとのことだったため純恋は野球ボールの小さなキーホルダーを手に入れて、僕たちのデートは終えた。
「先輩、いよいよですね」
詩織が体育館裏の劇に出る人が待機する場所で声をかけてくる。
次は僕たちの劇の出番ということで皆緊張からか少し周りを歩いたりとソワソワしているようで。
「この劇が終わったら、僕達の番だね。がんばろうね」
緊張するみんなの方へ僕はそう声をかける。緊張を覚ますような言葉なんて僕は言えない。でも少しでもみんなの励ましになりたい。
みんなの方を見て僕は笑ってそう告げる。
本当に緊張で怖いのは僕なんだけどね。
僕たち生徒会の劇は4人の中から最終的に誰か1人選ばなければならない脚本だ。
でも、その相手は決まっていなくて僕がその時に決めるようになっている。それにみんなの衣装も僕は知らないし劇自体セリフといった台本も明確に決まっているわけではない。
僕は最後に誰か1人選ぶことができるのだろうか。それが心配だ。もし、選ばないとなると観客からのブーイングが激しく起こる気がする。
いや、生徒会メンバーが1番怒る気がする。だから、僕は4人の中から1人選ばなければならない。
僕は本当に選べるのかなぁ......
そして始まる劇