第5話 学校祭 1日目(午前)
学校祭の開幕で
「さあて!いよいよ始まりました。学校祭です!今日の午前中のラインナップは学年劇と吹奏楽部の演奏です!みなさん、3日間楽しみましょう!!!」
朝から放送部の人が学校内の放送で学校祭の開幕を宣言した。
今日は学年劇に主役で出るので、僕は生徒会メンバーとは劇に参加する学年メンバーと集まるため一旦教室に戻った。
「あ、秋紗くん!さあさあ時間ないから早く着替えて!」
僕が教室に戻るとみんなが待ってたよという目で僕を見つめ、時間が迫ってきているため衣装係の人に早く着替えてと指示を出され僕はすぐ桃太郎の服装に着替えた。
今までのリハーサルでは衣装を着てはいなかったため桃太郎の格好をするのは初めてだが、ちゃんと僕の体にフィットしていて動きやすかった。
「あのさ、秋紗君......私たちはね別にーーー」
僕が着替えると背中をトンと叩かれ、後ろを振り向くと学年劇のみんなのまとめ役をしていた斉野という女の子から声をかけられた。
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そして、僕たち2年生の劇の時間となった。
僕は学年劇の待機場所の隅の壁に背中によしかかるようにして待っていた。今は誰とも話したくはない。そそのために隅に立ち他の人からはなるべく関わらないようだっていて。
学年劇のリーダーの斉野から聞いた話がずっと頭の中を駆け巡っていて、集中できない。
それに少し気分が悪くなる。
セリフが少なくて助かった...今もしセリフが多かったら間違えそう。そう思えるくらい頭が混乱していて。
そして僕たちの劇の時間が迫る。
時間が経てばいやでも劇をしなければならない。足は重たいが僕は主役をやるため出ないわけにもいかない。辛く深呼吸し重い足取りでステージへと上がる。
ステージの上に立ち、目の前の暗幕を見つめる。
この暗幕が下がったら全校生徒が僕の方に集中する。
考え事なんかしている場合じゃない!今は演技に集中するんだと自分に言い聞かせ、やがて暗幕が解けた。
「さあ、2年生は桃太郎です!今回の桃太郎は少しアレンジされています。そのオリジナリティーな演技にご注目です!」
司会者さん、何でそんなにハードル上げるかなぁ。
僕に今はそんな素敵な演技なんてできそうにないが......
「あの、おじいさん!おばあさん!僕は鬼退治に行きます!」
僕はそれから演技に何とか集中し、無事最後まで終えることができた。緊張で途中セリフが飛びそうにながらも無事には終えれた。
中々に好評らしく、拍手が中々鳴り止まなかった。
でも、僕は演技が終わった後は拍手の音などは聞こえず、怒りが少しだけ沸いてきていた。
演技自体は練習の時より上手にできた。
でも、何かがおかしい。
それが何なのかは言葉には表せないが、誰かが僕を潰そうとしている。
周りを見て劇のメンバーも見るがみんなは無事に終わった喜びから一見笑顔や安堵の表情が見える。
でも少しだけ違和感は残っている。
その根拠は僕が休憩している時に、お茶がなくなっていたり、靴紐がなくなっていたり、ある2.3人の男が僕との会話の時にセリフを間違えたり、通る道に障害物を置いたりして僕を転ばそうとしていたことがあったから。
それに僕の衣装自体も何か細工がされてあって途中でズボンの紐が千切れ脱げそうになるなど僕に関することだけはスムーズに劇は進まなかった。
でも今は深く考えたくはない。
一回の劇で結構疲労が溜まっておりどこか椅子に座って休みたい気分で。
お開きとなったため僕はここから離れることにして。
「あっ、副会長さんだ!」
「握手してください!」
劇は終わり学校内を散歩し展示物を見ていると白色の髪をしたツインテの子と、茶色の髪をした黒のメガネの女の子が話しかけてきた。
この学校は結構校則は緩いが、髪を染めている人はいないので少し印象に残って。
「やあ、秋紗氏。君の演技は今も記憶喪失のせいなのかわからないが、記憶を失った時の演技は最高だったぞ」
後輩の子たちと別れると、前から涼音先輩が話しかけてきた。
彼女に褒められれば、素直に嬉しさが湧いてくる。
「ありがとうございます。先輩の学年の劇は今からですよね?頑張ってください」
「頑張ってくださいか......まあ、何とかするよ」
涼音先輩は少し顔色が悪そうだった。
緊張しているのかなと僕は思っていたが、劇を見たときはそんなものではないと確信した。
「涼音先輩......この劇は何ですか!」
3年生の劇の途中で僕はつい叫びそうになった。
それは、選ばれた勇者が魔女(涼音先輩)を退治するという物語らしく、結構本気で殴っていた男子とかもいて、涼音先輩は少し鼻血を出していた。
先生らも劇の一部かと思っていて、誰も止めなかった。
そして、2年生と3年生の劇が‘繋がっていた’ことを僕はまだ知らずにいて。
1日目午前中の出来事です