第27話 帰還
第2章の始まりです
学校総会が終わってすぐは他の生徒は俺の姿をみればソワソワしだすというか、ザワザワすると言うか噂されてる気分で落ち着かなかった。
それも2週間過ぎれば噂する人もいなくなりようやく落ち着いて学校生活を送ることができて
「お腹減ったー、早く昼食べようぜ」
4時間目のチャイムが鳴りカバンから弁当箱を取り出せば雅也はすぐに俺の目の前の席へと飛んでくる。
雅也は弁当箱を広げれば中には真っピンクのハードで彩られた弁当で、何やら妹に毎朝作ってもらっているらしい。
「雅也の妹って……ほんとできた妹だよね。毎朝兄のために弁当作るって」
「別にそんなことないぞ?しっかり物に見えて家では甘えん坊でさー」
「そうなの?って何歳だっけ?」
弁当を毎朝作ってきているというのだから、年齢はそこまで子供というわけではなさそうで。それで甘えられるというのは、雅也がそれだけいい兄というわけか。
「あー、言ってなかったな。俺らと一個下。たしか……生徒会の詩織ちゃんと鳴霞ちゃんとも同じクラスだった筈」
「一個下……」
それであんなハートだらけの弁当箱を作ってくるのか。
これ以上突っ込むのはやめよう。あんまり話を膨らませないほうがいい気がして。
「それよりさ、妹がいるってどんな感じなの?」
「どんな感じって……あれ、お前言ってなかった?秋紗、お前にも妹はいるんだぞ」
僕に妹がいる?
え、そんなの全く聞いてないんだけど。
僕こその衝撃から開いた口が閉じれずに、口の中いたオカズをを出しそうになり慌てて口に手を当て無理やり嚥下する。
「全然聞いてないんだけど、そんな大事なことは早く言ってよー」
「いや、悪いが……スマホに連絡先とかないのかよ」
そう言われて僕は自分のポケットからスマホを取り出す。
ってかなんで僕のスマホ画面がこんなに割れてるんだ?いつの間に割ったんだろう……って、今はそんなこと関係ない。
「特になさそうなんだけど……ってか、メールとかの履歴見る感じそれもない」
「そんなこと……あるのか。まぁ、お前の妹 東雲 春音ちゃん。成績がとても優秀でさ、今は4ヶ月の特別留学みたいなのにアメリカに行ってるはず。だから秋紗お前は家では会ってないんだぞ。まぁ知らないのもしょうがないか」
4ヶ月の特別留学でアメリカに行っている。
そんな言葉を言われても全く現実感はなくて。
「ってか、言ったのは5月くらい……だったはずだしもうすぐ帰ってくるんじゃないのか?」
「え、でも5月に行くって早くない?だって高校1年生で4月に入学したとして、その後1ヶ月で留学したってこと?」
「まぁ俺もおかしな制度だとは感じるよ。でも、4月の入学時点で優秀な生徒に留学するか聞いてもししたいという人がいたら行くらしい。そして、アメリカの学校から1人だけこっちに留学する人も連れて戻ってくるんだとさ」
「じゃあ妹の春音は戻ってくるし、もう1人アメリカからこの学校に留学もしてくるってことね」
この学校のよくわからない制度について分かったような、いまいち納得できないような消化不良な気分になった。でもそんな気分は終わりを告げるように昼休みが終わる5分前のチャイムがなったため、次の授業の準備を始める。
雅也も自分の席に戻っていった。
妹かぁ……
まさか自分にいたなんて思わなかった。
両親は事故で亡くなったことは聞いたが、妹はいるとは思わなかった。
って春音の連絡先を知らないって記憶を失う前の僕って春音とどうやって連絡取ってたんだよ……。
学校祭も終わり、学校総会も終えたばかりであるため生徒会メンバーはまだ疲れが残っており、今日も放課後に生徒会の集まりはなかった。
自分自身も今は生徒会メンバーのみんなに会うのは少しだけ気まずさは感じている。
学校総会以来、僕を見るみんなの目が少しだけ変わっているからだ。
どこか僕に期待を感じるような視線がある。
きっとこれは記憶を失う前の僕が戻るかもしれないということ。
こんな嫌なところで僕の勘は鋭く思えてそう思うたびに嫌になる。
だから今は同じクラスの純恋、佳織とも出来るだけ会話の量などは減らしている。その分雅也と2人で過ごす時間は増えていて。
そんなネガティブな思考を張り巡らせながら自分の家へと着くと、外から見える窓から中を見るとカーテンは閉まって入るも、その隙間から光が差し込んでいて。
「家出るとき電気消し忘れたか?」
電気をつけっぱなしに学校に行っていたらしい。電気代が少しだけ無駄になるなぁ。
扉を開けると僕のじゃない靴。それも女性物の。それが2種類もあって。
『アメリカの学校から1人だけこっちに留学する人も連れて戻ってくるんだとさ』
その靴を見ると雅也と昼休みに話した会話をふと思い出す。
今日は嫌な勘が多く当たる日で
「おかえりなさい、もどったわよ」
「おじゃましてマース、初めマシテ」
1人は茶色のポニーテールの女の子。それに体格は小柄でどちらかといえば小学生高学年といったところか。高校生には見えないくらいの年齢で。
でも、それでもわかるこの女の人は僕の妹だ。
顔を見ればよくわかる。
それともう1人は金髪で髪は無造作にぼさっと整えられていない感じではあるものの、それがいい味を出している長髪で、まるでアメリカンと言わんばかりのムチムチな全身のボディ。出るところ全て出ているといっても過言じゃないくらいの。でもそれでいてどこか男心を大きく刺激するような女の人が向かい合って座っていた。
改めて2人を比較するとそれは同じ年齢とはいえないくらいの差で。でも2人からはお互いの女性らしさを感じる面もあって。
「帰ってきたから、それとこの子はメルト。わかってると思うけどアメリカから留学して連れて帰ってくる子。泊まる家がないから今から4ヶ月間ウチで過ごすから。文句ないよね?」
妹といえばどんなイメージを持つだろうか。
甘えん坊?無邪気?悪戯?愛らしい?子供っぽい?
そんな自分の期待していた想像とは全く別物の、ただ淡々と勝手にに決めたことを低い声で話し、それでいて僕の顔を全くみずに話していて。
椅子に座りながら足も組んでいて態度は大きくスカートを履いているのも全く気にしていないといった様子でいて。
「そんな急に言われても困るんだけど……」
「別にいいでしょ、私たち2人だけでもこの家部屋の空きはあるんだし」
そういう問題なのか?
少なくとも僕に相談くらいしてもいいと思うんだけどなぁ
でも一度こうなったら曲げることはなさそうな感じだなぁ。
「まぁいいけど…メルトちゃんだっけ?よろしくね」
「よろしくデース」
そういってメルトはペコっとお辞儀をする。
妹がこんな様子だとこれから少し不安だらけだったが、メルトがこんな様子だと少しだけ和み自然と笑みが溢れる。
そんな僕に違和感を感じない人はもちろんいて。
「は、あんた……そんな喋り方してた?なんか……女々しいというか、気持ち悪いんだけど」
あれ、これってもしかして……
「僕が記憶喪失してるって……しらない?」
そう僕が答えた瞬間、春音は一度複雑な表情を見せたっきり、顔を俯け僕たちに顔を見せないように奥の部屋。その部屋は入るなとドアの前に紙が貼っていたため入ってことはなかったが妹の春音の部屋らしい。そこに鍵を閉めて閉じこもって。
そしてリビングに残される初対面のメルトと僕。
この状況気まずすぎる……




