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第2話 学校

続きます

僕がまた学校に通うようになった時は僕が目を覚ました時の3週間後だった。

僕が事故を起こし生徒会メンバーと会うまでは1ヶ月の間僕は眠っていたらしい。

医者の話によると頭にだけ大きな傷ができ、そのせいで記憶が少しだけ失われたと言っていた。

でも、記憶がなくなったといってもわかるものはたくさんある。例えば食べ物を見てもこれは何味なのかなんとなくわかるし、スマホの使いt方も感覚ではあるものの少しは使えた。

医者の説明は今いち理解はできなかったが、記憶にそこまでひどい障害は奇跡的になかったみたいなので少しのきっかけで戻るかもしれないと聞いた。だから僕はひとまずは普通に学校生活を過ごし少しずつ記憶が戻るよう何かきっかけを探していこう。そう心に決めたが......



「ここが2年3組か。僕はうまくやれるのだろうか......」


僕は自分の教室までの道のりは覚えていたので、少しの記憶はまだ残っていることに安心した。

でも、人と関わった記憶だけは何も残っていないことが怖い。僕はこの教室でいじめにあっていたかもしれないという恐怖が僕を襲った。そのせいか教室の前で立ち留まって、扉を開けられずにいた。

いつまでもこうしていても仕方がない。一度深呼吸し、体が少しリラックスしたのを感じれば恐る恐る扉を開け中に入る。



「お、秋紗!退院おめでとう!ちなみに俺の名前は吉野雅也まさやだ。お前は俺のこと雅也って呼んでたからそう呼べばいいぞ!」


僕が教室に入ってすぐに話しかけてきたのは赤色の髪をした少しチャラい感じの男性だった。

いきなりのことで戸惑い何も言えなかった。


「あ、秋紗きたのね。ていうか、雅也!あんた朝からうるさいから少しは黙りなさい」


すると同じ生徒会メンバーで前にも病院であった佳織も話しかけてきた。


「えっと、2人は僕の友達だったの?」

二人のやり取りに僕は恐る恐るそう問いかける。


「何言ってんだよ!たったじゃなくて、友達だろ?」


何言ってんだ当然だろって顔をして雅也は言い、俺に肩を組んでくる。こんな距離を詰めてくるかかわり方にどこか懐かしさを感じ、また安心感を得られ僕は自然と笑うことができた。


「中々いいこと言うわね。あんたは意外と気が効くのね」


佳織が雅也のことを褒めていて、その会話に僕は少し笑ってしまった。


「え、なに笑ってんだよー、俺かってやればできる子なんだぞ!」

「ぷっ、やればできる子ねぇ...ねえ、知ってる?雅也ってね、」

「おま、何変なこと言おうとしてんだよ!佳織こそ…ってっどうした?」


二人のやり取りに僕は安心感を感じこらえきれずに笑っていると二人は変な顔して僕を見ている。いや、なんか面白くてごめんね。

さっきまでの怖さが嘘みたいだ。僕はこんな人たちと仲良くしていたんだな。

そうこうしていると後ろから聞いたことのある声が聞こえる。


「あ、秋紗君学校に来たのね。この節はどう謝罪すれば良いのかわからないけど、あなたが学校に来れるようになって良かったわ」


生徒会長の純恋がかばんを肩にかけ、地震の席であろう机に置くと、僕たちのほうへ寄ってくる。

あ、同じクラスだったのか。知らなかったな。


「いや、別に気にしなくていいよ!僕には純恋に何をしたか覚えていないから」


記憶がないというのは言葉には簡単に表せるが、意味は複雑だ。

今まで自分が誰にどんな想いをして生活していたのか誰とどんなことをしたのかという思い出さえもなくなっている。

僕はそれに耐えきれるのだろうか......記憶がないことで不便が起きるのじゃないか。


そんな不安に駆られると始業のベルが鳴り、現実へと戻される。生徒会メンバーとは多分僕とのつながりが一番濃い人たちだと前会った時に何となく感じた。

みんな口に出していなくて態度にも出ていないが、僕の記憶がないことを知ったときはみんな落胆していた。それは見ていて分かった。

でも生徒会メンバーが傷ついた姿なんて見たくない。そんな気持ちが胸の奥から湧き上がってくる。生徒会メンバーのみんなの顔を思い出し僕は決心する


記憶は絶対に元に戻して見せると




放課後になると生徒会の人らは部活に所属出来ないので、生徒会室に行くらしい。

そこで悩める生徒の悩みを解決したり、学校に関する資料などを整理したり僕達でお話をしていたらしい。まぁ、要するに何でも屋みたいなものらしい。

佳織と純恋は何か用事があるらしく先に生徒会室に行ってほしいといわれ僕は一人で生徒会室まで来た。なぜか道を間違えずに生徒会室までスムーズにこれたことは少し驚きながらも、2階の端の教室の生徒会室の前に僕は立ち止まっていた。


「ノックとかしたほうがいいのかな?」


生徒会室の前で佇み独り言を小さく僕はつぶやいていた。

来たのはいいが普通に入ればいいのか?そういった作法が全然わからないんだけど…

僕が悩んでいると後ろから声がした。


「先輩早いですね。あと、ノックとかしなくていいですよ?気軽に入りましょー」


詩織に背中を押され少しこけそうになりながらも僕達は生徒会室に入った。

中には誰もいなくて僕達が1番らしい。


詩織は端においてあるソファーに荷物を置き、真ん中にある椅子に座る。

僕はその様子を真似しソファーに荷物を置くと、詩織と机を挟んで対面になる席へと座る。


「あの、先輩ちょっといいですか?」


すると詩織が相談をしてきた


「どうしたの?」


「先輩は学校に登校して何か思い出したことなどありませんか?」


そういえば、医者の人が学校などに行くと何かのショックで記憶が戻るかもしれないとか言ってたな。多分そのことについて彼女は聞いているのだろう。

でも、正直なところ懐かしさみたいなところは感じるが記憶が戻るようなことはなかった。


「ごめんよ、まだ何もわかっていないや」


「そうですか.....」


詩織は下を向いて少し落ち込んでいた。それからは詩織は口を開けずただ下を向き何か考えごとをしているような様子で。

その時胸に少し痛みが走った

何だこの痛み。彼女の不安そうな顔を見ると心が痛くなる。

それに心臓の鼓動がうるさいくらいに動悸がする。自分の胸に手を当てると心臓が驚いたかのように跳ねている。

気持ち悪い。

頭が痛い。頭がわれるみたいだ...

いやだ。



詩織を...悲しませたくない。そんな気持ちが俺の胸いっぱいに強くなって...



「大丈夫。僕は絶対に記憶を戻すから。安心して!」


僕は彼女を慰めるために頭を撫で少し無理やり微笑みそう言って。

いや、そう言ったというより。“言わされた”。それに手が勝手に動き彼女の頭をなでていた。



「せ、先輩⁉︎え、ええ!ちょ、何して!!」


詩織は顔を真っ赤にしながら今頭を撫でられたところを自分でなぜか触っており、自分の頬を引っ張りながら「これは夢?」とあわただしい態度をとっては


「ごめん、嫌だった?」


すると彼女は凄い勢いで首を横に振った


「いえいえ!全く嫌じゃないです!できればもっとしてほし......」


「え?何て言ったの?」



詩織の最後の方は言葉が弱弱しくなっていき聞こえなく何を言っているのかわからなかった。


「いや、何でもないです!」


詩織はやっと落ち着きいつもの調子に戻っていた。

いつものような明るく笑顔で明るい様子で。


いつものような......?

なんで記憶がない僕がいつもの詩織を知っているんだよ

自分の頭が割れるように痛くなり慌てて頭を抑える。どんな痛みか表現しにくいが、こめかみから頭が割れるみたいに痛くなる。そして自分が自分でなくなるような...


なにこの...僕が僕でなくなる感覚は...


「あの、僕ちょっとトイレに行って来るよ」


「え、先輩?...わたし...」


そういって僕はそのまま教室から逃げるように出た。

最後に詩織が何か言いかけていたが今はごめん。聞けない。また後から聞くよ。

そう心の中で返事した。




トイレの窓から紅葉が散っているのが見えた、

秋か。秋という言葉は僕の記憶に残っていた。

秋:温帯地方に現れる四季の一つ。 日本では立秋(8月8日ごろ)から立冬(11月7日ごろ)の前日までを秋とする。

こういうことは覚えているのにみんなの記憶は残ってないのか。


トイレで10分ほど便座に座り、なるべく何も考えないよう外を見ていると自然と痛みは落ち着いてくる。

「さっきの感覚は何だったんだ...」

自分が自分でなくなる感覚。


いや、僕はもともと存在していない人じゃないのか?


僕、東雲 秋紗は記憶を失う前は確実に存在していた。

でも、記憶を失って新たに表れた 東雲 秋紗は本当は存在していなかった人物。本当は生まれないもの。

存在していないのが普通、当たり前。

そんな僕は......いや、これ以上考えるのはよそう。思考回路がどんどんとネガティブになってしまっている。

顔を洗い僕は生徒会室へと戻ていく。




「秋紗先輩こんばんは」


中に入ると鳴霞しかいなかった。

椅子に座っているだけなのに、背筋はピンと伸びどこか上品さを感じお嬢様っ僕見える。

おかしいな?さっきまで詩織はいたのに


「あの、詩織は?」


「詩織は教室に忘れ物があると行って取りに行きました」


「あのさ、鳴霞って上品な感じだけどお嬢様なの?」


鳴霞は名前からしても上品でさらに顔も綺麗で、服装も整っている。

それに椅子に座っているだけなのに上品な佇まいから僕はつい聞いてしまった。

でも僕がそう聞くと彼女の顔色が変わった


「お嬢様の話はやめてください!」


彼女はいつも話す時声は小さく、態度は上品なのにこの時だけは大声だった。

その変わりように僕は少し何も返せずにいて、どこか非現実味を感じていく。お嬢様といわれるのが嫌なのか?いや、これ以上の詮索はやめよう。


「えっ.....鳴霞?ごめん、変なこときいちゃったね」


彼女の悲鳴のような絶叫も僕の心に少しチクリとした痛みがきた。

まただ。詩織の時みたいに胸が痛くなる。

彼女たちの傷ついた姿は見たくない。そんな思いが僕の体を縛り上げてくる。



「私は一応お嬢様みたいな感じです。でも、それでも、普通の人と変わらずに私と接してください!お願いします......秋紗先輩だけは...私の...」


鳴霞のお願いしますは消え入るような声で最後のほうは本当に消えて。

多分彼女はお嬢様ということで何かがあったんだろうと直感的に察した。

これ以上この話題はだめだ。彼女のためにも、僕のためにも。


「ごめん、変なこと聞いて。無神経だったよ」


詩織の時と同じく僕は鳴霞の頭を撫でた。


「ええっ、秋紗先輩!?な、撫で......撫でられた!?」


詩織の時と同じく鳴霞は顔を赤くして恥ずかしがっていた

いや、また手がほぼ無意識に彼女の頭に行っていて


「鳴霞、顔真っ赤だよ。かわいいね」


「かっ、かわっ、かわいいって......」


顔を真っ赤にする彼女に思わず自分でも「かわいい」という言葉が抵抗なく出てきたことに驚いた。

鳴霞は小さな腕で僕の体を叩いて来る。

その力はほとんどなく、じゃれているようにしか僕には感じなかった。





「先輩はやっぱり誰にでも優しいんだね」

その様子を詩織は見ていた。みていたというより、扉を開けると先輩が鳴霞の頭を撫でていて、入り辛かった。幸いにも二人に築かれずすぐに扉を閉めたため気づかれてはいないだろう。

2人の様子を想像したら鳴霞に対するいやな気持ちが湧いて出てしまう。

嫉妬だ。

鳴霞のことは大好きだ。同じ生徒会で1年こコンビということで一番仲がいいのも鳴霞だろう。

なんで二人して好きな人がかぶってしまうのだろう。



今先輩には記憶がない。それ故になんでも信じてしまうだろう。

もし先輩と私が付き合っていることにしたら...

だめ、そんなことは絶対にしてはいけない。

でもこの気持ちが抑えられるのだろうか。



先輩が記憶をなくして大変な時期だというのにこんな最低なことを考えてしまう自分に嫌気がさしていく。

ああ、“あの時”と同じだ...


「詩織、お前には俺がついてるから。俺がいる限り絶対に寂しい思いにはさせない」


あの時の秋紗先輩の声が、言葉が、態度が、気持ちが、様子が、意思が、目が、行動が、思いがよみがえる。今でもあの時は簡単に思い出せるくらい私の人生を変えた日。


私を寂しくさせないって言ったくせに...うそつき。


先輩の嘘つき。



訳アリな生徒会メンバー...

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