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第12話 体育倉庫内での……

体育倉庫での出来事

「綱引きなんて競技はなかった?それなら……体育祭が終わるまでここに誰も来ないってことになるよ」


綱引きの競技はなかった。

そんな事実に動揺を隠せず、思わず体育倉庫に綱を持ってきて欲しいと依頼された体育委員、倖田の顔を思い浮かべる。

なんのために僕に依頼をしたんだ?


「ということは……体育祭が終わるのが5時くらいで、物品を片付けに来る人がそのくらいの時間に来るのでそれまでは人は来ないってことですか?」


「ああ、最悪の場合5時まで待たないといけない」


1時間くらい立ってこの暑さで喉の渇き。現実的にあと3時間もここにいられる自信なんてない。

命まで削るようなことはないかもしれないが、数日は寝込みそうだ。


「そんなの……耐えられない……」


夜宮さんは自分の顔を覆い泣き顔を僕に見せないよう弱気を吐きながら下を向き俯いて小さな声でつぶやいていく。



暑さで頭がさらに回らなくなってくる。

腕時計を確認すると今は2時30分。閉じ込められてから1時間半程経っただろうか。

これだけ僕はみんなの前に顔を出していないことになるし、誰かが探しにきてもいい気はするけど……



夜宮さんの方を見れば彼女は暑さで熱中症になり辛いのか、マットに体を横に倒し今は休んでいる。

それもそうだろう。僕も今は横になって休みたい。

でも、今は……回らない頭で考えよう。なぜこうなったのか。倖田は何の目的があったのか。

時間は今いくらでもある。だから今はそう考える時間にしよう。


少しでもポジティブに考えるよう頭を回すことにする。体育倉庫の中は散らかっており、窓はない。そのため出入り口は扉があるだけ。


そして体育倉庫の中を見渡すと少しだけ違和感に気付いて。


「あれ、昨日生徒会と体育委員で体育祭に使う物品を出した時にここまで散らかってたっけ?」




僕は昨日の放課後の時間を思い出す。


「めんどくさいですよねー、生徒会が体育祭の準備物を用意するの」


学校祭2日目が終わり下校時刻になってはいるが、生徒会と体育委員は翌日の体育祭に使う競技物をあらかじめグラウンドに出す仕事があった。

それを生徒会がやることに詩織は少し文句を言いながらも渋々と仕事をしていて。


「詩織、そういうことはあんまり言ったらダメだよ?」


もし聞かれてたら生徒会として他の生徒に信用が得られないかもしれない。そう思い僕は優しく注意する。


「それにしても……すごく散らかっていたのに物を出したら一気に片付いたわね」


純恋が体育倉庫の扉を閉めてそう呟く。

それには僕も同感で首を縦に振って。


僕たちが最初準備しようとした時は、何ヶ月整理していないのかモノが散らかりすぎていて。

そして物を出すのと一緒に片付けをしていておかげか体育倉庫ないは結構綺麗に整頓されて始め見た時とは比べ物にならないくらいで。


「でもこうやって綺麗になると心も少しだけいい気分になるよなぁ」


佳織の言葉に僕も首を縦にふって。


「そうだね、疲れたけどやりがいはあったよ」


こうして僕たちの体育祭の準備は終えた。




「そうだ、昨日はあんだけ綺麗に整頓していたはずなのにどうしてこんなふうに汚くされてるんだ?」



僕は体育倉庫内を歩き回りながら物品に触れていく。

そんな僕を夜宮さんはマットに横になり、体操などに使いそうな柔らかいマットを布団代わりに体にかけながら少し不思議そうな顔をしてみている。


物品に触れていきながら昨日見た景色を思い浮かべながら元の位置に戻していく。

たしかこれはここで……

こんなメモ帳とペンとか置いてあったっけ?誰かが置き忘れたのかな?

昨日なかったものまで置かれており、誰かの忘れ物なのかそれとも元々あったものなのかどうかわからないためその場所から移動せず置き僕は片付けていく。



……もしこれが仕組まれたものだったら何が目的だ?

僕1人を巻き込むものだったのか?夜宮さんがきたのは想定外?

もしくは、2人とも閉じ込める。僕以外とそれ以外の人だったら誰でもいい?


もしどっちとも考慮するならーーーーーーーー

今の時刻が気になり腕時計を見て時間を確認する。14時45分。そういえばこの腕時計……スマホとBluetoothだったっけ。何かの回線でどっちかの居場所を知ることができるはず。もし誰かが僕のスマホを持っていたら僕の時計の位置を示す場所に僕がここにいるってわかるかもしれない。

そのまま腕時計のタッチパネルに触れ他の機能を見ていく。

そして……一つの考えを思いつく。


「夜宮さん、これってだれの悪意で閉じ込められたと思う?」


横に眠る彼女に目線を向け、いつもよりかは少し低い声(僕の自覚はないけど)で彼女にそう問いかける。

彼女はキョトンとした顔で僕を見つめて。ニヤッと微笑みかければ彼女は立ち上がり僕に抱きついてくる。


「副会長さん、それ以上の追求は良くないですよ?」


彼女は僕に抱きつき僕の耳元で囁いてくる。

劇の際に抱きしめた鳴霞の体とはまたどこか違った柔らかさを感じるが、抱き心地は良くこの柔らかさや暖かさに甘えてしまうような気分で。

いや、そんなことを……考えてる場合じゃない……


僕は思わず彼女の体を突き放そうとするも、彼女の小柄な体からは信じられないほどの力を感じ僕に抱きついてくる。


いや、僕に今力が入らないからだ……

彼女の目的は?……

なぜ抱きついてきた?……

倖田とグル?それとも……

そして僕はそこで思考が途切れ目の前が真っ暗になり彼女の方へ寄りかかるようにマットに倒れていき。


ーーーーーーーーーー

そして動き出す夜宮

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