五十歩百歩の音楽性の違い
「絶交だッ!」
そう言って飛び出していった友人。いや元友人。
「おいおいどうした。この前の二次会で意気投合したんじゃなかったのか?」
幼馴染が気を遣ってか、やってきた。
「ちょっとな」
「絶交って言っていたぞ。アイツ、数少ないお前の友達だろ。ダチになったときのこと思い出せよ。なんで仲良くなったんだっけ?」
「お互いに音痴だったんだよ」
「そうそう。音痴を肴に語り合えばどうだ?」
仲直りを進める幼馴染。
「しかし、喧嘩の原因が音楽性の違いなんだよ」
「どういうことだよッ!」
幼馴染が食い気味に怒鳴るのも分からなくもない。
「アイツ……、リズム感が壊滅的にないんだ……」
「はあ、お前だった音程外しまくりじゃないか」
幼馴染だから音楽のときの歌を知られている。
「そうじゃない。そうじゃないんだ。アイツ絶対音感持ってるんだゾ」
「はぁ? マジ、それで音痴なのか?」
「そうだよ。なのに音痴なぐらいリズム感がないんだよ」
「どれだけひどいんだよ、それ……」
「それでアイツ、絶対音感持っているということでモテたんだ。ずるいだろ」
「をい! それのどこが音楽性の違いなんだよッ!」
「それでオレが太鼓の達〇でモテようとして失敗したというのにィイイイ」
「お前もお前だな……。というかいつだよソレ?」
「昨日、ナンパして成功して話してるときに、さ。だがカラオケ行ってヤツは自爆した。それを弄ったら、ああなったんだ」
「はあ、仕方ない。俺がお前らを特訓してやる」
こうして幼馴染によって仲直りし、カラオケで特訓して、仲良く必修の単位を落とした。
「絶交してやるッ!」
そういって飛び出していく友人。いや元友人。
「おいおい。今度はなんなんだよ」
「音楽性の違いだよ」
「またかよ。だからなんだよッ!」
「アイツ、あの見た目でアイドルオタクだったんだよ」
「お前も似たようなもんじゃないんかよ」
「全然違うよッ! 声優が好きだんだよッ!」
「どっちもどっちだよ。ヨシッ任せろ。俺がお前らの音楽性を統一してやる」
前回のことでオレは幼馴染を信用していた。友人もだ。仲を取り持ってもらい関係を修復した。
幼馴染に従って、特訓をすることになった。
だから幼馴染に洗脳された。布教活動を行ったんだ。
オレたちは幼馴染の闇に堕ちた。
オレたちは幼馴染との音楽性の違いをちゃんと調べておくべきだったんだ。
幼馴染はエロゲの音楽が好きだった。エロゲオタクだったからだ。
そうしてオレたちは単位を落とし留年した。