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第9話 トルボ村

 飛空艇が空を飛んでいるが好き勝手に船内をうろうろすると、護衛をしてもらっている炎の獅子にも迷惑がかかるのでデッキに置いてある椅子に座り、マジックバッグから錬金術に関する本を取り出し読もうとした。


 だが先ほどまで楽しそうに飛空艇のデッキから空を眺めていたプリーストのタリカが戻ってきてテテノの近くに座り話しかけてる。


「フェリテスさんは何を読んでいるんですか?」


「あまりうろうろしてご迷惑をかけるのもあれなので、Bクラスの錬金術師の試験が先であるので本でも読んでおこうと思いまして」


「錬金術師の試験はどんな感じですか?冒険者だと依頼をこなして討伐すればすぐにでも上がれるんですが」


「年に数回ほど試験があってそれに合格してから錬金組合で特定の物を錬金して合格って感じですね。後は功績を挙げれば上がる事もありますね」


「流石は国家資格。難しそうですね」


「戦えない私からすれば、討伐して依頼をこなす方が難しく感じますけどね。基本的に魔物がいる所には行きたくないので……材料が欲しい時は買うか採取の依頼を出しますので」


 タリカはでは今回はどうして死の沼に? と言う様な顔をしていたので、借金の話や母親が男と逃げた等の余計な事は省いて話始めた。


「採取の依頼を頼むとそれだけになるので。死の沼はあまり目立って良い物はないですが鉱石なども採れるので……少し生活の足しに」


「なるほど……私達もほとんど駆け出しの冒険者なので依頼をこなすだけでいっぱいいっぱいですね。それで今回は死の沼のような割と安全な所で護衛の依頼があったので引き受けたんですよ」


「すぐに受理されたのでこちらも助かりました。ありがとうございます」


 タリカとそんな事を話していると炎の獅子リーダーのアスキスがやって来て話に加わった。


「簡単に飛空艇の中を見回ってきたが、乗ってる冒険者は俺達よりランクが高いな」


 タリカが私達の様なDランクの冒険者なら王都の近くで依頼をこなしてるだけでCまではいけるから無理に飛空艇に乗る必要は無いとテテノに言う。


「後数時間もすればすれば着くらしいから、フェリテスさんも少しは飛空艇の中を見てきてもいいぞ」


「興味はありますが……絡まれても怖いのでおとなしくしておきます」


「まぁ他の職からしたら冒険者は怖く見えるからな」


 そんな事を話ながら飛空艇はゆっくりと空を飛び進んでいった。


 時折、雲の隙間に大型の飛龍の羽が見えたり、雲に巣を作る雷雲蜂の巣などが見えたりと飛空艇の乗客をハラハラとさせた。


 そしてお昼になり炎の獅子と一緒にテテノは食事を取ったり世間話をしたりして、日が少し傾き始めた頃にようやくトルボ村が見えてきた。


「さっきの蜂とか飛龍はもったいなかったな~。もし狩れてたらCランクにはなってるし装備も充実してるよな」


「Dランク程度の私達がどうやって倒すんだ?」


 トルボの村の発着場に飛空艇がゆっくりと降りて行く中、アスキスとティグラは空で見かけた魔物の事を話していた。


「殺虫玉とか持ってるしいけるだろ」


「一匹なら何とか倒せると思うが……連中は群れだからな」


 二人の何気ない会話に少し呆れているタリカも加わった。


「二人とも蜂の巣を突くのは良いですが、私がいない時にお願いしますよ。というかアスキス。雷雲蜂の名前の由来を知っていて言っていますか?」


 タリカの問いかけにアスキスは考えたが答えが出なかったのでテテノに話を振った。


「どれだけの数の魔物がいると思ってんだ、そこまで詳しく知らねーよ。フェリテスさんも知らないよな?」


「えっと……学校で習ったので一応は知ってます。雷雲に巣を作るので雷雲蜂と呼ばれてると思いがちですが、刺された時の一撃が雷が落ちた程のダメージがあるのでその名前がついたと聞きました」


「フェリテスさん正解です。アスキスも覚えておいてくださいね。ちなみに脅威度は一匹でBランク上位でさっきみたいな巣ありだと普通にSですよ。私達みたいなDランクがどうこうできる相手ではありません」


 テテノが答えた事が少し気に入らなかったのか、軽く舌打ちをして「はいはい、ごめんなさいよ」とタリカに言っていた。


 その態度にタリカが怒っていると発着場に着いた様でアナウンスが流れた。


 テテノも炎の獅子も飛空艇から降り発着場のロビーへと出た。


 ロビーに出るとトルボ村からサンファルテに行く人は多く何人もの人が飛空艇に乗る準備をしていたが、逆に降りる人はテテノ達と数人ほどだった。


「初めてきたが……あんまりこの村に降りる人はいないんだな」とアスキスが言ってから発着場の外に出る。


 外に出ると陽はまた傾いていたが、まだ明るく先に宿を確保しようと言う話になり、村人に宿のある場所を訪ねた。


 何軒かの宿があるらしく、冒険者達がよく使うという場所を教えてもらったので四人はその宿へと向かった。


 飛空艇が定期的に寄るので村と言うには少し大きく町と言う様な感じだったが、村の中に鶏が歩いていたり丘の上の方には牛のような生き物も見えたので村と言えば村だった。


 村の大通りの様な道には商人達が露店を出し村人達が品定めをしている場所の横を通っていくと目的の宿に着いた。


 木で出来た大きなドアを開けるとカランカランとベルが鳴った。その音が聞こえたのか奥から女性が現れて話しかけてくる。


「いらっしゃい。お泊まりですか?」


「ああ、四人だが……二人部屋が二つ空いてるか?」とアスキスが答える。


 すこし待ってくださいね。と言って帳面を取り出し何かを確認した。


「大丈夫ですよ。ちょうど隣同士で空いています」


「じゃあ、それで両方二泊ほど頼む。フェリテスさんは護衛の加減もあるからタリカと一緒の部屋でいいか?」


「はい。大丈夫ですよ」とテテノは言ったがアスキスが護衛対象に相談もせずに決めたのが不満だったのかタリカが相談してから決めようねと不満を口にした。


 その言葉が聞こえて無かったのか無視したのかは分からなかったがアスキスは宿の女性にまた話しかける。


「この宿の食事はどうなってる?」


「ウチは泊まるだけの宿などで食事は向かいの酒場に行ってもらった方がいいですね。お持ち帰りもやってるのでこの宿から来たと伝えればすぐに作ってくれますよ。静かに食べたい時はこちらに持ち帰って食べるのがいいですね」


 そう言って女性が指さした方向を見ると幾つものテーブルや椅子が置いてあり窓から外が見えるテラスの様な作りになった場所があった。


 アスキスが分かったと言うと女性は料金は後払いと言ってアスキスに部屋の鍵を二つ渡し部屋の番号を伝えた。


 そしてアスキスは鍵をテテノに一つ渡し今後の予定を話した。


「とりあえずは村にいる間は自由行動でいいが、フェリテスさんは何処かにいくならタリカを連れて行くか声をかけてくれ」


「わかりました。出かける時は声をかけますね」


 炎の獅子の全員が頷き、その場で一旦解散となりアスキスとティグラは夕食に行くと言い、テテノとタリカは一度部屋に行くことになった。


 そして別れて行動しようとした時に宿の女性から声がかかった。


「そうそう、後出しの様になって悪いんだけど、今、宿のお風呂が壊れてるから申し訳ないけど浴場は使えないよ」


 アスキスとティグラはそんな事か、と特に気にもせずテテノも錬金で一日二日錬金釜から離れない事もあるので仕方ないと諦めたが、タリカだけはこの世の絶望を聞いた様な顔をしていた。


 そんなタリカを何とか励ましテテノ達が借りた三階の部屋に行くと中は思った以上に広く、大きな窓もありとても明るく開放感があった。


「思った以上に良い宿ですね」とテテノがタリカに話しかけると、いいえお風呂が無いのでダメですときっぱりと言った。


「タリカさんはお風呂が好きなんですか?」


「私の家は昔から聖職者の家系なので子供の頃から体を清めるのが日課なので入らないと、なにか落ち着かないんですよね」


「なるほど……私も昔から錬金術師なので毎日、錬金しないと落ち着かないので少し分かります」


「でしょ!そういう訳でフェリテスさんの錬金術でぱっぱと直せませんか!?」


 タリカの必死な姿にテテノは気圧され、見てみないと何とも言えませんと言ってしまったので手を引っ張られまた一階へと降りてきた。


 一階へ降りると先ほどの女性がテーブルなどを拭いていたのでタリカが話しかける。


「すみません。この方が錬金術師なので、もしかしたらお風呂を直せるかもしれないので見せてもらっていいですか!?」


 その必死な形相にその女性も気圧される。


「ウチとしては助かるけど良いのかい?そんなに高い修理代は払えないよ?」


「私も見てみないと直せるか分からないので、一度見せてもらえますか?」


 テテノがそういうとその女性は、じゃあ着いて来てと言ってくれたので二人は後について宿の奥にいった。


 後ろについて行きながら話を聞くとその女性が女将で旦那が向かいの酒場を経営し子供が手伝っていると話した。


 水が抜かれた浴場の脇を通りさらに奥の部屋に入ると水晶の様な物が取り付けられた魔道具があった。


「少し見てみますね」とテテノが言い、その魔道具をチェックしはじめた。


 魔道具を詳しく見ると水晶から魔石に伸びていた管に穴が空いていた。


(ネズミにでもかじられたかな?ここに穴が空いてるから魔力が抜けてお湯がでないと思うけど……水晶の部分が魔力を溜める様になって魔石で水と温度調整で……十年ぐらい前に作られた魔道具っぽいね)


 自信は無かったので他の所も確認したが目で見て分かる範囲ではその管が原因ぽかったのでその事をタリカと女将に伝えた。


「これなら何とかなると思いますので、一度やってみていいですか?」


「本当かい!?」と女将は驚きテテノにお願いするよと頼んだのテテノも準備に取りかかった。


 錬金術師のたしなみと言う訳ではないが、釜などが無くても簡単な錬金等はできるので大方の錬金術師達は外でも錬金出来る様な物を持っている。


 テテノもその内の一人でアイテムバッグとは別の小さな鞄から粘度の高い液体とペンとインクを取り出した。


 穴の空いた管にその液体を塗りペンの先に血のように赤いインクを付けて幾何学模様の様な魔方陣を書き込む。


 魔方陣を書き終え呪文を唱えると液体を塗った所と魔方陣がうっすらと光り始めた。


 そしてテテノがその書かれた魔方陣に手をかざしもう一度、別の魔法を唱えると穴の空いた管は生き物の様にゆっくりと動き穴を塞ぎ始めた。


 管と管が元から穴が空いていなかった様に綺麗に治ると、発光を止め書かれていた魔方陣も綺麗に消えていった。


 穴が全て塞がっていたのを確認してから水晶に魔力を溜める。


「これで直ってると思うので動作の確認をしてもらえますか?」とテテノが言うと女将はあいよ! と元気よく言い、慣れた手つきで魔道具の操作した。


 すると魔石が光り出し勢いよく水があふれ出し、配管を伝って浴槽へと流れ始めた。女将がさらに操作すると水の温度が上がっていき少し熱いぐらいの温水へと変わった。


 テテノがどうですか?と尋ねると、ちゃんと直っていたようで女将は丁寧に礼をいった。


「さすがは錬金術師ですね、これで今日はお風呂に入れますね!」とタリカは満面の笑みになりとても嬉しそうだった。


「それで錬金術師さんには修理代いくら払えばいいんだい?」


 女将にそう言われたのでテテノは少し考え計算した。


(頼まれていったならそれなりにもらえるけど、修理費もあまりかかってないし……部品交換とかの方が安くついたかも知れないからもらうにもらえない……)


「私達がお風呂に入りたかっただけですし、特にお金のかかる事はしていないので今回はまけておきますよ」


「流石に直してもらっておいてそれは悪いとおもうんだけど……」


「簡単な部品の交換でも直せたので……」


 取り寄せた時の事を考えたら高くつくけどねと言って女将が悩んでいると急に何かを思いついた様で手を叩いた。


「じゃあ、こうしよう。あんた達の今日の宿泊費はまけておくよ。それならいいだろ?」


「私は助かりますが、いいんですか?」


「ああ、この浴場は村人も使うからね。直してもらったお礼さ」


 そこまで言ってくれているので断るのも気の引けたテテノは女将に礼をいいその厚意をありがたく受け取った。


 宿泊費が安くなった事でタリカの機嫌がまた良くなり、浴場に温水が溜まるまで魔道具に不具合が無いかを確認し女将に礼を言ってからテテノとタリカは部屋に戻った。


 そして二人で隣の酒場に夕食を食べに行き少しゆっくりとした時間が過ぎていった。

次回の更新は明日の予定

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