第7話 冒険者ギルドに行こう
テテノがいつもの職員さんに依頼票を手渡した。
「では確認しますので少々お待ちください」と言ってテテノのクラス以上の依頼が入っていないかを確認し魔抜きの灰の依頼票の所で手が止まった。
手が止まった事で少し不安になったテテノが職員さんに話しかける。
「……もしかして危ない依頼ですか?」そう尋ねると職員さんは苦笑しながら答えた。
「いえ、テテノさんはいつも一日二日ぐらいで終わる依頼をこなしていたので、制作時間がかかる依頼は珍しいなと思いまして」
「あー確かに。魔抜きの灰だと死の沼の泥を使うと簡単に早くできるので冒険者ギルドに依頼して死の沼まで行こうかと思いまして」
「なるほど、そういう事でしたか。名前だけ聞けば危険地帯かと思いますが生き物がいないだけの沼ですからね」
「草も木も生えないですから食料がないから何もいないらしいですね」
「何が原因でそうなってるかは分かりませんのでお気を付けて」
「ありがとうございます。出発の日が決まったらまた伝えにきますね」
「分かりました。知っているとは思いますが、受けた依頼を完了しない事には次の依頼は受けられないのでお気を付けくださいね」
「大丈夫ですよ。魔抜きの灰以外は完成したら持って来ますのでよろしくお願いします」
そう話しだけ少し世間話をしてからテテノは錬金組合を出て、祖母が待つ自宅へと帰って行った。
自宅に戻るといい匂いが玄関まで流れき、テテノのお腹が小さく鳴った。
「もう少し落ち着いたらお婆ちゃんに料理習おうかな……」
独り言をいながら玄関のドアを開けると料理はすでにできており祖母は本を読みながらテテノを待っていた。
「ただいま~」
「おかえり、ちょうどできた所だよ。食べようか」
そう話しふたりで夕食を取り始め、その中でテテノは祖母に依頼の事を伝えた。
「それでね。魔力抜きの灰を作る依頼を選んで来たから死の沼まで行こうと思うんだけど……お婆ちゃん、留守番任せていい?」
「良いも何も選んで来た時点で決定事項だろうに、キャンセルしたらペナルティーがあるんだろ?」
「うん。たしか……罰金だったかな?依頼をキャンセルしたこと無いから詳しくはしらないけど」
「居候だから別にいいけどね。魔抜き灰か、普通に作ったら一週間はかかるし難しいから私の時代は人気のない依頼だったね」
「そうなんだ~。お婆ちゃんありがとう!」
「はいはい、どういたしまして。しかし死の沼か……あれから五十年ぐらい立つのにまだ生命が生まれないんだよね」
祖母は腕を組み少し難しい顔をしながらその時の事を思い出していた。
まだ二十代前半のテテノは生まれているわけも無かったので当時の事件が気になったのでその事について尋ねる。
「あの事件ってSクラスの錬金術師が錬金に失敗して村一つ無くなったんだっけ?」
「あー……今ではそういう風に伝わってんだね。外で言ってはダメだけど、正確には村の人間を材料に若返りの秘薬を作ったんだよ」
冗談かと思ったが祖母の表情が嘘を言っていなかったので、ごくりと生唾を飲みこんでから話の続きを尋ねた。
「え?それでどうなったの?」
「前国王陛下の話だとローレットの精鋭部隊が腕と足は落としたらしいけど、逃げられて行方不明だね」
「しっ知らなかった……っていう事は今も何処かで生きてるの?」
「私はくたばってると思うけどね。エルフや魔神の様な長寿じゃないし、あの頃でたしか七十とか超えてた筈でそれから五十年だろ?」
祖母はどこから持って来たのかワインをグラスに入れ、昔を思い出すように飲みながら話を続けた。
「手足もなくなって死に物狂いで錬金釜を使って、あの辺り一帯を死の沼にしたからね~。よほど恨みがあるなら五十年もあれば何かしら行動はすると思うけどね」
「人体精練とかで手足を治して復讐の機会を狙ってるのかな?」
「人体精練みたいなクソ難しい錬金なんか手がないとできないよ。私でも無理だよ。まぁ協力者がいたら別だろうけど……言い切って良いけど死んでるよ」
「私はその時は事は本とか話でしか知らないからお婆ちゃんが言うなら間違いないか」
「ああ、間違いないよ。でも死体は出てないから死の沼にいったら探しても良いかもね~。時効なんかないからまだ賞金がかかってた筈だよ」
「ローレット騎士団が探して何も出なかったって書いてあったから、私みたいな一般錬金術師が探した所で無いもでないよ。というかさっきからお婆ちゃんが飲んでるお酒と前国王陛下にあった事があるとか聞きたい事は多いんだけど……」
「そりゃー私が若い頃はブイブイ言わしてたからね~。前の国王陛下には何度もあってるよ」
「そうだった……お婆ちゃん凄い錬金術師だったからお会いしてるんだ……それでそのお酒は?」
家に母が飲むお酒はあったはずだが色も香りもテテノのが見た事も嗅いだ事もなかったのでそのお酒がどうしても気になった。
祖母はウインクをしながら錬金の大釜を指さしたので、何をしたのかが分かった。
本来なら錬金術師以外は使用してはいけないのだが、気分良く飲んでいる祖母を見ると、まぁいいかという気分になったので軽く注意だけしておいた。
「お婆ちゃん、私以上の錬金術師なんだから変な事しちゃだめだよ」
「お?テテノはそういう所は口うるさいかと思ったけどそうでもないんだね」
「言っても聞かない人が最近までいたからね」
そう言って大きくため息をつくとテテノが使っていたコップに祖母がワインを注いでくれたので二人で楽しく夕食を取りその日は過ぎていった。
次の日、いつもより早く起きるとまだ祖母は起きていなかったので流石に続けて朝食を作ってもらうのは気が引けたので台所に立ったが……
「明日からでも簡単な料理を教えてやろうか?」
「お願いします……」
詳しくは語らないが黒く焦げた目玉焼きと焼きすぎたパンを食べてから今日の予定を話し合った。
「それでテテノは今日はどうするんだい?」
「魔抜き灰以外の依頼をしても良いけど先に冒険者ギルドに行って、死の沼まで護衛の依頼を頼もうと思ってる」
「採取の依頼じゃないんだね」
「うん。採取の依頼だと片手間にする人もいるからいつになるか分からないし、死の沼の泥だけになるから、私も付いて行って使える材料も採取してこようかと思って」
「なるほどね~。というかテテノって戦えるのかい?見た感じ引きこもって何か作ってる錬金術師にしかみえないけど?」
「そうだけど!一応は魔法学園でてるしAクラスの真ん中くらいにはいたから戦えるよ!たぶん!」
「たぶんって……まぁ魔法学校出てるならDランク冒険者並には戦えるか」
「……E位じゃない?」
「……もう少し自身を持ちなよ」
祖母が後片付けをしてくれる事になったので礼を言ってからテテノは冒険者ギルドへと向かう。
すこし早い時間帯だったがもう街は起きており露店で商売を始める人や王都の見回りをする兵士など色々な人達が活動を始めていた。
川沿いの道を歩き橋を越え歩いていくと目的の建物に近づくに連れ武装したテテノとは住む世界が違うような人達とすれ違っていく。
(すっごい怖い……冒険者さんもたまに持ち込みで工房とか来てくれるし、依頼を頼みに冒険者ギルドに行くけどいつまで経っても慣れない!超怖い!)
そんな事を考えているとようやく冒険者ギルドにたどりついたので、帰りたい気持ちを抑えながら中に入った。
テテノが中に入ると同時に大剣を背負った男がが出てくる所だったので、ぶつかってしまいテテノは尻餅をついた。
男の方はびくともしなかったがテテノに手を差し出した。
「嬢ちゃん、すまね……言い訳にはならんが近頃戦ってばかりだから、戻ってきて気が抜けててわ」
「いえ、こちらこそすみません」そう言って男の手を取ると軽々とテテノを持ち上げ立たせた。
その男がどこか痛い所はないか? 気を使ってくれたのでテテノも特に痛い所はなかったので起こしてくれた事に礼を言い別れた。
もう一度謝ってから男が去って行ったので、職業上、男が背中に背負っていた大剣に目がいった。
(オッオリハルコンの大剣!?あっでも光の反射が純正とは違うからミスリル辺りの合金かな?……あそこまで綺麗に混ざってるなら錬金術師の仕事だと思うけど……何処の工房でやってもらったんだろ?鎧もパンツァービートルぽかったし……強い剣士さんに見えるから他国でやってもらったのかな?)
人の顔を見ずに装備を見る生産職の職業病が発病して、しばらく考えていたが冒険者ギルドにきた目的を思い出したので依頼を頼む受付へと向かった。
少し早い時間だったので待たずに受付にいき職員さんに依頼の相談をする事ができた。
「おはようございます。冒険者への依頼でしょうか?」
「はい。そうです」
「では、少々お待ちください」職員さんはいって机の中から羊皮紙できた依頼票と魔導ペンを取り出した。
ペンに魔力を流すとインクが出てくる魔導ペンで羊皮紙に綺麗な字で日付などを書いていき、テテノに尋ねた。
「お名前と本日はどういったご依頼でしょうか?」
「テテノ・フェリテスで錬金術師です。死の沼に材料を取りに行こうと考えているので、その道中の依頼をお願いしたいのですが……私自身も行った事がないのでその辺りも考慮してもらえると助かります」
職員さんは分かりましたと言ってから依頼票にテテノの名前や依頼内容を書いていき、水晶の様な物を取り出し魔力を流した。
すると水晶に死の沼の詳しい内容と冒険者の適正ランクなどが書かれており、それを見ながらテテノにもう一度尋ねた。
「王都からトルボの村まで馬車で三日、飛空艇で一日ですね。村からは徒歩で半日といった所になります。冒険者の適正ランクはDになりますが……もし夜間採取をするのでしたらCの方が安全かと思います。
「夜に採れる様な特殊な物ではないのでお昼だけで大丈夫ですが、私が戦えない場合はCランクの方がいいですか?」
「そうですね……死の沼で採れる物は泥と石で獣は寄りつかず魔物もいないで……Dランクでも大丈夫とは思いますが、馬車でいく場合はCの方が良いかもしれません。数ヶ月前に中央都市近くの森で盗賊が討伐されましたが……もしかしたらその手の類いがいるかも知れませんし獣が流れて来ているかも知れませんので」
「すみません。話は戻ってしまいますが、村なのに飛空艇があるんですか?」
「はい。王都から砂都サンファルテに二日に一度ですが飛空艇が飛んでいるので、進路上なので立ち寄っています」
テテノは礼を言ってから少し考え、日空艇で行った時の費用と馬車で行った時の費用などを相談した。
職員さんは素早く計算し細かく差額などを伝えた。その値段を見て飛空艇の方が少し高かったが、工房をあまり空けたく無かったので飛空艇を使うと伝えた。
「でしたら、フェリテス様は戦えないかもしれませんが死の沼にはそこまでの脅威はありませんのでDランク冒険者への依頼で十分かと思います」
その言葉に少し悩んだが、せっかく言ってくれているのでDランクの冒険者に頼むことにして話を詰めていった。
話始めてから一時間ほどたった頃にようやく依頼内容が纏まったのでテテノは羊皮紙の依頼票にサインをした。
「よろしくお願いします」とテテノが頭を下げる。
「フェリテスさんは何度か冒険者ギルドで依頼をされているので分かっていると思いますが……受理されるとマジックポストに手紙が届きますので確認をお願いします」
「はい。その手紙に冒険者さん達の名前等が書かれているんですよね?」
「そうです。今回の依頼は護衛で飛空艇に乗っていくので集合場所は発着所になると思いますのである程度の準備をよろしくお願いします」
テテノは分かりましたと言ってから先払いで支払うと、職員さんも礼を行ってからお金を受け取り、後は冒険者が受注してくれる事を祈って冒険者ギルドを出て自宅へと向かった。
今回の護衛の依頼で、護衛対象のテテノが死ぬ事があったら依頼失敗でお金が戻ってはくるが死んだら意味が無いな~等と考えたりしているといつの間にか自宅の前まで帰って来ていた。
中に入ると祖母が掃除をしていたので礼を言ってから冒険者ギルドの事を伝え、祖母の方も持ち込みでの来客等は無かったと教えてくれた。
冒険者への依頼にばかり気を取られては仕事にならないので、他の依頼の準備を進めていると工房内に設置してあるマジックポストが手紙が届いた事を知らせる為にぼんやりと光った。
流石に早すぎるから冒険者ギルドからじゃないよね? と思いながらポストを空けると冒険者ギルドから依頼が受理されたという手紙だった。
次回の更新は明日予定。
あまり書き溜めていると途中の簡単な内容忘れませんか?




