第17話 また死の沼へ
テテノが転移魔法の門を抜け辺りを見渡すと、少し前に来たトルボ村の入り口辺りだった。
このまますぐに死の沼まで行くのか、村に寄るのかが気になったのでテテノは火食い鳥のリーダーで同級生のスティレに尋ねる。
「スティレさんどうします?もうこのまま森の中に入って行きますか?」
「いや、それでもいいがそんなに時間がかかるものでも無いから、冒険者ギルドか無ければ村長に少し話を聞いていこう。調査と採取がメインだが地元の人達は森に詳しかったりするしな」
「前に来た時は一角鹿とかでましたね」
「なるほど……そういうのが分かっていれば苦手な匂いなどで無駄な戦闘が回避できたりもするからな村に寄っていこう」
スティレの案にテテノもメンバーも断る理由がなかったので頷き、村の中に入っていく。
村に入りちょうど近くにいた村人にスティレが話を聞くと冒険者ギルドと呼ぶには小さい建物があると教えてくれたので、四人はその場所に向かった。
目的の場所に四人が行くと王都の冒険者ギルドよりこぢんまりした建物があり中へと入る。中に入ると職員が一人で受付をしながら書類の整理などをしていた。
その職員さんが四人に気づき「冒険者ギルドへようこそ」と話かける。
「忙しい所すまないが夜の死の沼に採取に向かうんだが、気をつける魔物などがいたら教えて欲しい」
「冒険者の方ですね。分かりました」そう言って机の中から図鑑の様な物と依頼票を取りだし説明を始めた。
「そうですね。今の時期は特に魔物や獣の繁殖期でもないので特に気をつける事は無いんですが、村のハンターさんが言うには一角鹿より大きな影を沼の近くで見たといってましたよ。ちなみに夜です」
「なるほど……それの調査や討伐の依頼はあったりするのか?」
「この村からは遠いですしね、今の所は噂程度しかないので特に依頼などにはなってないですね」
スティレが分かったと言うとテテノが静かな冒険者ギルドの中を見渡して呟く。
「全然、冒険者の方がいませんね」
「トルボ村は平和ですからね~。採取や害獣駆除などの仕事は村のハンターさんで十分ですからね。極まれに魔物がでたとかでもサンファルテにいく冒険者に寄ってもらって退治してもらうので依頼は本当に少ないですね。飛空艇に乗れば王都まで直でいけますし」
「なるほど~」
「今、やってる仕事も王都の人達の仕事をマジックポストで送ってもらって手伝っているんですよ。そういう訳で比較的安全な場所ですが、夜の森になると危険度が増しますのでお気をつけて」
職員さんにお礼を言ってからテテノ達は冒険者ギルドを出た。
「話しだけ聞いていれば安全そうだが……何が出るか分からないな……」
「そうですね。市場の方に寄ってみて何か探しましょう」
「獣よけのお香とかあればいいわね」
等と火食い鳥が高ランク冒険者なのに慎重だったので少し驚いているとソアレに話を振られた。
「どうかしましたか?」
「いえ、皆さん高ランクの冒険者なのに低位の冒険者より慎重にいくんだな~っと思ってた所です」
「そうですねー。何も無ければそれで良いだけの話ですからね」
「まぁ恥ずかしい話だけどね……何回も本気で全滅しそうになってるからね。思い出してもよく生きてるわって思うわね」
「確かにな……高ランクになって思う事は臆病なくらいでちょうどいいとは思うな」
「Sランクのパーティーが全滅するのが想像できないんですけど……」
テテノがそう尋ねるとソアレが護衛をして魔王に出くわしたらすぐに全滅しますよ。と首を傾げて言っていたのでテテノもどんな状況ですかと呆れながら言い返した。
そんな話をしながら市場に向かい使えそうな物を買ってから死の沼に向かう事になった。
テテノも一度言ったことがあるので大まかな到着時間を伝え出発する。
スティレが先頭を歩き、ソアレ、テテノ、カーディフと静かな草原を歩いて行く。
「前もここを通りましたが、風が気持ちいい静かな草原ですよね。ピクニックとかできそうですよね魔物とかいませんし」
そう言ってテテノが背伸びをするとソアレがキョトンとしながら居ますよと答えた。
「はい?何がいるんですか?」
「ですから魔物が」
「またまた~私をからかおうとしてますよね?この前もDランクの冒険者さん達と来ましたが、こんな感じで静かな場所でしたよ」
テテノが笑いながらそういうとソアレが杖で地面を叩きいった。
「地面の奥深くに結構強いのがいますよ。多分ですが人を襲う魔物では無いので冒険者ギルドも放置してるだけだとおもいます。この辺りが縄張りなので他の害獣や魔物が寄ってこないんでしょう」
ソアレがそう言うとテテノはイマイチ信用してなかったがスティレもカーディフも妙は気配はそれかと納得していた。
「えっえっ?ほんとですか?」
「攻撃して地中から出しましょうか?結構大きいですよ」
「しなくていですよ!」とテテノが叫びソアレを止めると、スティレが面白い物が見れるかもしれないぞといって遠くに狼の群れを見つけた。
テテノが何が見られるんですか?と言ってスティレが指さした狼達の群れを見ていると、少し地面が揺れたかな? と思った瞬間に十頭ちかくいた狼を長く巨大で岩で出来た蛇の様な魔物に飲み込まれた。
その蛇の様な生き物が振り向きテテノと目が合ったが興味が無いのか自分の開けた穴にすぐに戻っていき、大きな穴も元からなかったかの様に綺麗に消える。
「はい?」
「まぁ、あれが先ほどの正体ですね。けっこう立派だったのでこの辺りの主でしょう」
「……前に来た時もいたんでしょうか?」
「さぁ?所でどうします?その辺りに風呂敷広げてお弁当でもたべますか?」
「食べませんよ!何というか……ふざけていても皆さんはSランクの冒険者なんですね……私は全然気がつきませんでしたよ」
「テテノが今のに気がつけるぐらいなら兼業でもいいから冒険者をやるべきだな。今の魔物も索敵が得意な人では無い限り高ランクでないと難しいと思うぞ」
「なるほど……今の魔物は何という名前ですか?」
「ヘビデステテノって名前ですね」
「なるほど……ソアレさん。喧嘩売ってますか?」
「こう、緊張している元級友を和ませる為の気の利いた面白いジョークですよ」
貴女は本当に私が知っているソアレさんですか!?というテテノの叫び声を聞きながら、一行は進んで行くと日が沈み少し暗くなった頃に森へとたどりついた。
リーダーのスティレがテテノを気遣い、一度休憩するかと尋ねたがテテノもまだまだ余裕があったのでこのまま進んで大丈夫だと伝えた。
スティレは疲れた時は遠慮無く言ってくれと伝え、草原を通った時と同じ配置で森の中に入っていく。
「スティレ。そこまで強いのはいないけど全体的に多い感じね」
森に入ってからキョロキョロしていたカーディフがそう伝える。
その話を聞いてソアレの方を向くとスティレも頷いて少し考えてから仲間に指示をだす。
「無意味に戦う意味もないな……カーディフ、さっき市場で買った獣よけのお香を炊いてくれ」
わかったわとカーディフが言いアイテムバッグの中から四角い固形物を取り出し、ソアレに火をつけてもらうと勢いよく煙が出始めた。
「私もたまに錬金組合の仕事でそれ作るんですけど……かなり変な匂いがしますよね」
「確かに……虫呼びのお香とかだったら甘ったるい良い匂いなんだけどね。これ使って冒険者ギルドにいくと獣人の冒険者に嫌な顔されるのよね」
「獣人の方達って尻尾とかに獣の特徴が出てるからなんでしょうかね?」
「たぶんそうじゃない?後、語尾にニャとかワンとかつけるわね」
「あーあれってなんでなんでしょうね?」
「私にはよく分からないが、ルディール殿いわく萌えキャラ気取りじゃろとの事だ」
「……萌えキャラってなんなんでしょうね?」
テテノの質問に答えられる物はいなかったので火食い鳥はさぁ? とだけ暗くなった森の中をソアレの魔法で照らしながら進んで行く。
魔法で辺りを照らしていたが、森の中は暗く時折、獣達の声がテテノの耳に届く度に驚きビクビクしていた。
「夜の森ってここまで怖いんですね」と少し怯えながらテテノはソアレに話しかける。
「そうですね。基本的に人は昼間に行動するので恐怖を覚えるのかもしれませんね。魔物と呼ばれる生物は夜になると活性化するので、テテノンが言うように夜の森は怖いですよ」
少しは雑談もしながら暗い森の中を進んで行き、テテノが少し見覚えがあった場所だったので丁度この辺りが半分ぐらいの場所だと伝えた。
その言葉を聞いてスティレは一度、休憩してから死の沼まで行こうと言う事になりその場で、全員が休憩をとる事になった。
「この森の深さならもっと大きい生き物がいても良い様な気もするけど見ないわね」
「確証はありませんが死の沼のせいでしょう。魔力というのは生命力の様な物なのでそれが吸われると言うのは良い事ではないですからね。余程、群れを追われたとか流れて来たとかで無い限り来ないんでしょうね」
カーディフとソアレがそんな話をしていたのでテテノも少し興味があったので話に加わった。
「となるとトルボ村の平和なのも死の沼が一役買ってるってことですか?」
「小さく見ればそうかも知れませんが……大きくみるとやはり死の沼は問題ですね」
「どういう事ですか?」
「森渡りという大型の獣がいるんですが……それが森から森へ移動する事によって土地に養分が行き渡ったり種を運んだりするんですよ。そういうのが無いので心配になりますね。まぁ森渡りがいなくても鳥が種を運び、虫とかテテノが他の仕事をするので大丈夫ですが……死の沼は無い方がいいですね」
「スティレさん……この人、本当にソアレさんですか!?」
「すまないが……私もあまり自信はないな」
「あの格好いいソアレさんは何処に……」
「それは貴女が面食いなだけなのでは?」
「違いますよ!」とテテノが叫んだタイミングで火食い鳥の三人はすぐに立ち上がり森の奥深くをじっと見つめた。
「皆さん、どうかしたんですか?」
「おとりテテノの出番です。それは冗談ですが魔物の類いが来たましたよ」
テテノがそう言った瞬間に闇の中からスティレに向かって触手の様な黒い物が凄まじい速度で迫った。
それを見た瞬間にスティレが一瞬固まった様に見えたが、はぁとため息を出し剣も抜かずに手の甲で軽く流した。
弾いた触手の様な物の威力は思った以上に強かったようで弾いた先にあった木を軽々と貫通していた。
「焦ったー……無いとは分かっているが……ああいう触手は思った以上にトラウマになっているな」
「大丈夫よ。スティレ……私もよ。かなり焦ったわ……あれだったらあれで絶対に殴るけどね」
とスティレとカーディフがその場に似合わないような事を話していると、攻撃してきたものが姿を現した。
「ああ、シャドウワイパーですか」と呟きテテノを守る様にソアレが前にたった。
真っ黒い体に人の体の目に当たる部分だけが赤く光、手や足の形はあるがずんぐりむっくりしており動く度にその形が崩れとてもいびつなものだった。
その姿がテテノは恐怖心を覚えたので少し怯えながらソアレに話しかける。
「ソアレさん……簡単に大木を貫きましたが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。本当にやばかったらもう逃げてますから、と言うか見ておかないともう終わりますよ?」
テテノが何が終わるんですか?と聞こうとすると視界に剣に手をかけるスティレの姿が写った。
これから戦闘が始まると思いテテノも身構えると、スティレの剣が青白く光り、剣を抜いたと思った瞬間にはシャドウワイパーと呼ばれた魔物は真っ二つに切り裂かれていた。
「シャドウワイパーが出るという事は、森としてはあまり良い環境ではないか……」
と呟きスティレはコロンと落ちたシャドウワイパーの魔石を拾った。
「やっぱり死の沼が原因で今みたいな怨霊系のが湧くのかな?」
「テテノが言うように死の沼には何かがあるな……調査して正解かもしれないな。村人が見た黒い影もシャドウワイパーか?」
スティレとカーディフの話を聞きながら理解が追いつかないテテノはソアレに話しかける。
「ソアレさん……あれは私が知ってるスティレさんでしょうか?」
「寄生虫に体を乗っ取られてる訳ではないので本人ですよ」
「……強すぎませんか?数年前までクラスメイトでしたよね?」
「そうですか?でもスティレはロリコン剣士とその彼女にも負けますし、それこそ貴女が最近知り合ったスタイリッシュ魔法使いさんには私達三人がかりでも歯が立ちませんよ?」
「そんな物騒な知り合いはいませんよ!……学生時代は冒険者もいいなとか少し夢見ましたが、私は錬金術師が一番向いてますね……この調査が終わったら一ヶ月は工房に引きこもります」
「テテノンは冒険者に向いてそうな気がするので、火食い鳥の荷物持ちでどうですか?」
「絶対に嫌です。ソアレさんに毎日いじられそうなので嫌です」とテテノとソアレが話しているとスティレとカーディフもどう進むかの相談が終わった様で、そうそろ進もうと暗い森の中を進み始める。




