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第16話 元クラスメイトその2

「ソアレさんは別として……スティレさんは私と同じぐらいの成績だったのに……たかだか数年でどうしてこうなったんだろう?」とテテノはテーブルに倒れ込み目に涙を溜めていた。


「しかも私は借金まみれ……」


「なんだ、テテノは賭け事にでも目覚めて負けたのか?」


「違いますー。母が娘に借金を背負わせて男と逃げたんですー。シクシク……」


 そう言ってからテテノはスティレ達にこれまでの事を話した。


 同情してもらうつもりも無かったが、久しぶりにクラスメイトに会ったので話をしたくての事だった。


「なんというか……テテノも大変だな」


「同情されたい訳ではないんですが……そんな感じです」


「同情するなら金をくれ!ぐらい言ってもよいぞ」


「慰めにもならんが私も卒業して少し経ってから家が没落したからな……分からんでもないな」


 スティレが思い出すようにいったのでテテノは驚きながら尋ねる。


「そうそう!そうですよ!その時の事は噂で聞きましたが無事だったんですね?どうやって今まで生きて来れたんですか?しかもSランクまで成り上がってますし……」


「う~ん。正直に言うと自分の運が良すぎて……参考にならんが」


「私ぐらい借金のある人もそうそういないので、返済のきっかけになれば良いので是非……」


 そう言われたのスティレは腕を組んですこし考えから答える。


 没落してからすぐに高貴な方に拾ってもらいそこで働きながら冒険者になり、一年ぐらい経ってから冒険者ギルドでクラスメイトと出会い、猿と戦って凄い魔法使いに助けられたり死にかけたりして今に至ると伝えた。


「はしょり過ぎてて……参考にならなかった」


「だから言ってるだろうに、それ以外は特訓してるか依頼をこなしていたから参考になる様な所はあまり無いぞ」


「節約とかどうしてたんですか?」


「拾ってもらうまでは野草とか食べてたな。なかなか美味しいぞ」


「文明まですてる節約はちょっと……」


「それでスティレは薬師並みに野草に詳しいんじゃな~」


「そういう事だ。それでテテノはどうする?私達の厚意を受け取るのか?」


 テテノは少し考え、冒険者として大成しているクラスメイトに甘える訳にいかないので断ろうとしたタイミングでルディールが呟いた。


「ちなみにせっかくできた縁じゃから無理に断らんでもええととは思うぞ」


「でも、さすがに甘えすぎるのは……」


「金を貸せ!とかテテノ殿が大金持ちになったとかで、スティレ達も声をかけてる訳でもあるまいし良いとは思うがのう。というか、お主が断ってもこやつらは行く気満々じゃから一緒に行った方がよいぞ」


「そういう訳です。テテノンが行かなくても私達は行く気満々なので着いて来た方がお得だったりしますよ」


「まぁ、無理にとは言わないけどね。スティレとソアレの友達みたいなものでしょう?私からは反対する事はないから、よほどソアレが面倒くさいって思わないなら別にいいでしょ」


 火食い鳥からも特に反対されずルディールや祖母の後押しもあったので、テテノはその厚意に甘える事にした。


 テテノはその場にいた全員に礼を頭を下げて礼を言った。


 それからスティレが指示を出し一時間後にこの工房に集合すると言ってソアレとカーディフの二人を連れて出て行った。


 ルディールもスティレ達について出て行こうとしたがテラボアに捕まり、少し世間話をしようじゃないか、とグラスにワインを注がれて着席を促された。


「ありがとうございますじゃな。特に何かおもしろい話ができるわけでもないが良いのか?」


「ああ、年寄りの晩酌に付き合ってくれたらいいよ」


 ルディールも席につきテラボアと飲み出したのでテテノは呆れながら少し注意をする。


「お婆ちゃん……朝からお酒を飲むは……というかルディールさんも忙しいのに誘っちゃ駄目だよ」


「あんたはもう少し営業って言葉を覚えな」


「わらわも夕方近くまでは時間を潰さないとだめじゃから全然助かっておるのう」


「そう言って頂けるとたすかります……」と言ってからテテノはルディールにスティレ達の事で礼を言い頭を下げた。


「あやつらはあやつらでかなり大変じゃから久しぶりにクラスメイトに会えてうれしかったんじゃろな。カーディフにしても仲間の学生時代がしれて嬉しかったんじゃろ」


「そうだったら嬉しいんですけどね……ソアレさんとか思いっ切り忘れてましたし!」


 テテノがそう抗議をするとルディールはテラボアに入れてもらったワインを飲みながら笑い、昔のソアレの事は知らないが今のソアレは話しもしやすいから気軽に話しかけると良いぞと言った。


「卒業してから数年経ちますけど……人は変わるんですね~。変な冗談を言うような人では無かったんですが……」


「そういうのも含めて今回の冒険を楽しんでくると良いと思うぞ、今の火食い鳥ならよほどの相手でも無い限り遅れはとらんじゃろうしな」


 なるほど~とテテノが相づちをうっているとテラボアから準備しなくていいのかい? と言われたのでテテノも慌てて準備を始める。


「テテノ殿も気をつけてのう」


「ルディールさん。ソアレさんやスティレさんを呼びすてですので私もテテノで良いですよ。そういうのはあまり気にしないので」


「ではテテノと呼ばせてもらおう。わらわはルーちゃんでもルディールでも何でもよいぞ」


「流石にちゃんづけと呼べる程、仲良くないのでルディールさんでいいですか?」


 ルディールがうむ。と嬉しそうに言ったので、テテノはまた死の沼に行く為の準備を始めた。


 テテノが準備をしている間にテラボアとルディールは真面目に話したり盛り上がったりして、所々に指輪や魔王や魔界などの単語がテテノの耳に届き気になったが、助けてもらう自分が遅れる訳にもいかないのでそれ以上はそちらに意識を向けなかった。


 樽とシャベルや回復アイテムや探索用のアイテムをマジックバッグに入れるだけで良かったので三十分もかからずに準備は終わった。


 そして数日はまた錬金釜を使わないので火がつくような物が残って無いかを念入りに確認してからルディール達のいるテーブルに戻った。


 そして椅子に座り、お酒を飲むわけにもいかないのでコップに飲み物を入れていると、ルディールがアイテムバッグの中から何かを出しテテノに渡した。


「ルディールさん、これは?」


「我が家のコックが焼いてくれたクッキーじゃな。ソアレ達が来るまではしばらく時間があるからのう食べながら待っておると良いぞ」


 そう言われたのでテテノは礼を言ってから受け取り、席に座ってから紙袋をあけた。


「これ美味しそうですね。ではいただきます」と言ってクッキーを一つ手に取り食べた。


「商会長殿もウチで販売しませんか?と言っておったくらいじゃから、美味しいとはおもうぞ」


 テテノは何かを言う前に二枚を手に取り口に運んだ。


「錬金術師の事で少し聞きたいんじゃが、工房とかで物を販売したりせんのか?」


 五枚目のクッキーを食べた後に、飲み物を飲んでからテテノはルディールの質問に答える。


「他の工房ではやっていたりもしますし、普通に儲かるんですが……デメリットも多いんですよね」


「と言うと?」


「はい。ルディールさんは錬金術師ではないので想像しにくいかも知れませんが、錬金組合に依頼を受けて納品すると鑑定してもらえるんですよ。ポーションとかに変な物が混ざってないかとですね」


「なるほどのー。と言う事はその辺りに問題があるんじゃな?」


「そういう事です。鑑定石という物を買えば工房でも鑑定できますが、結構魔力を食うので私みたいに一人で錬金していると魔力が足らなくて数が作れないんですよ、だから錬金組合に任せて自分で作った方が良いと言う事です」


「本でよんだが昔はそういう事故も多かったと書いてあったのう」


「よくご存じで。昔は個人で鑑定して錬金組合に納品だったらしいのでポーションにも色々混じってたらしいですよ。少し待ってくださいね」


 テテノは立ち上がり厳重に蓋をしたアイテムボックスの中から一本のポーションと自分のアイテムバッグの中から一本のポーションを取りだしてルディールの前に置いた。


「ルディールさん、これは見た目はまったく同じですがどっちが毒ポーションか分かりますか?」


 テテノがそう尋ねるとルディールは即座に右が毒ポーションで左が普通のポーションだといった。


 まさか見分けられると思っていなかったテテノとテラボアはとても驚いた。

 

「せっ正解です……まさか見分けられるとは思いませんでした……」


「すごいもんだね~どうやって見分けたか教えてもらってもいいかい?」


 二人が不思議そうだったのでルディールはじらさずにすぐに答える。


「うむ。まったく見分けがつかんが自信満々に適当に答えただけじゃな!」


 ルディールの予想外の答えにテテノは言葉を無くしテラボアは一本取られたねと大きく笑っていた。


「何かこう……とてもしてやられた気分ですね……」


「自信を持つのは大事な事じゃからな。っと、それでそのポーションの様に見た目が同じでも中身がおかしいのが流出しないように錬金組合を通している感じなんじゃな?」


「私の様に借金があれば話は変わりますが、錬金組合を通しておく方が問題も少ないですし、仕事も紹介してもらえたり、付き合いもできたりしますからね。よほど変なこだわりが無い限りは組合に持って行った方がいいですね。鑑定石も高級品ですからね」


 二つのポーションをテーブルの上に置きルディールが観察している間にまたクッキーを食べようと紙袋に手を入れたが、その手は空を切った。


「あれ!無いまだいっぱいあったのに!」


 慌てて紙袋てに取り中身を確認したがもう一つも残っておらず、それを食べた犯人がテテノに話しかける。


「普段そういう菓子は食べないけどなかなか美味しいもんだね」


「お婆ちゃん!なんで全部たべたの!?」


「そりゃー美味しかったからじゃない?」


 もう少し食べたかったな~と落ち込んでいるテテノに祖母が質問する。


「それは良いけど……不用意に机の上にポーションを二本とも置いたけど、どっちがどっちか分かるのかい?」


「あっ……」


 テテノは二本のポーションの方に振り返るとルディールは見た目はどっちも同じじゃな~といって不思議そうに眺めている。


 やってしまった……と言いながらテテノは膝から崩れ落ちた。


 こうなってしまってはどちらが大丈夫な物なのか確実には分からないので、廃棄するしかなく廃棄するにも効果を無効にする薬を混ぜて中身を捨てるのでとても無駄だった……


「私は何をやっているんだろう……」


「ほんとだね~」と笑う祖母を恨めしそうに見ながら二つのポーションに薬品を混ぜて無効化し処分した。


 その光景を見ていたルディールは鑑定の事が気になりテテノに尋ねる


「鑑定石と呼ばれる物を買えばわらわでも鑑定できるのか?」


「いえ、鑑定魔法を補助する為のものですから鑑定魔法を使えないと意味ないですね。鑑定魔法も自分が知ってる物じゃ無いと鑑定できないですね~。転移魔法を物にかえたような魔法ですからね転移魔法も知らない所には行けませんし」


「あーそれで細かい鑑定屋さんがおる訳か」


「そういう事です。鉱石もいますし武器防具の鑑定士も細かく分ければいますが、なぜか皆さんどれでも鑑定できますけどね。そういう趣味の人がなるんでしょう……それはそうとルディールさん?」


「なんじゃ?」


「クッキー、もうないですか?」


「お主な……あるにはあるが帰ってきた楽しみ様にお主がソアレ達と行ったらテラボア殿に預けておくわい」


「ありがとうございます!……でもそれお婆ちゃん全部食べられてるパターンでは!?」


「そこはお主達、家族の問題じゃろう……」


「大丈夫だよテテノ。一枚ぐらいはおいといて上げるよ」


 テテノがテラボアに抗議の声を上げていると玄関のベルが鳴り準備のできた。火食い鳥達が戻ってきた。


 スティレが私達は準備はできたがテテノは大丈夫かと尋ね、テテノも大丈夫だったのでいつでもいけると気持ちを切り替えた。


「すこし早いがトルボ村まで行っておくか……ルディール殿、鉱山の方はよろしく頼む」


「家庭菜園の収穫が忙しいんじゃがな~まぁよかろう。何も無いと思うがスティレもソアレもカーディフも気をつけてな」


「あれから鍛えてるから大丈夫よ。ルディも気をつけなさいよ」


「ふっふっふ。ルディールさん大丈夫ですよ。おとりテテノがいますから」


「護衛なんですから守ってくださいよ!ルディールさんも私の事も心配してくださいよ!」


「テテノは大丈夫じゃろ。火食い鳥がおるんじゃし」


 いつの間にか仲良くなっているルディールとテテノを見て火食い鳥は誰とでも仲良くなるな……と言う様な顔していた。


 それからもう一度忘れ物が無いか等を確認しソアレが魔法を唱えると大きな門が現れたので、テテノはテラボアに火食い鳥はルディールに行ってきますと言ってトルボ村に旅立った。


「う~む。着いていってトルボ村の位置を確認しておけばよかったかのう……」


「そこまで心配しなくても大丈夫だろ?火食い鳥だっけ?相当の実力者達に見えるけどね。中でもあの魔法使いは頭二つぐらい出てるね」


「そういうのってどう見て分かるもんなんじゃ?」


「年寄りの勘って奴さ。魔王様はまだ時間あるんだろ?年寄りの晩酌に付き合っておくれよ」


「わらわも聞きたい事もあるしのう。喜んで付き合おう……まぁ昼前じゃし魔王ではないがな」


 そう言って二人で笑いルディールとテラボアは世間話に花を咲かせた。

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