第15話 元クラスメイト
「先に自己紹介しておくけど、私はカーディフ・シアイスよ。職業はレンジャーね」
「ありがとうございます。本来なら私も名乗らないと駄目なのですが……ソアレさんが思い出したら言います」
「それで?ソアレ。思い出したか?」
と、元クラスメイトに詰め寄られ、魔法使いのソアレ・フォーラスは悩んでいた。
「……先ほどのは冗談ですよ。一緒にご飯食べたり、図書館に行った仲じゃないですか。先生に怒られて廊下に立たされたのも良い思い出ですね」
ソアレがそう言うとテテノはこめかみをヒクヒクさせながら「私は全くそんな記憶ありませんけどね!」と言った。
火食い鳥のリーダーのスティレも呆れながら少しヒントを出す。
「ヒントだが、名前にテが多いな」
「確かに二つ入ってますね」
「……テケテケ?」
「何ですか!テケテケって!その新手の魔物みたいなのは!」
「それ、わらわがこの前の怪談で話したやつではないか……」
「あれは怖かったですね……ではもう一つヒントをお願いします」
そうだな~とスティレはさらに呆れながら、テテノは錬金術師だと言う事を伝えた。
「錬金……錬金テテ子!これであっているでしょう!」
「テテノです!しかもそれすっごい悪口に聞こえますよね!?」
などと孫が友人? 達と面白おかしく話しているのを祖母が笑い、皆に飲み物などをだした。
「まさかテテノの同級生が来るとは思わなかったよ。あんた達も忙しいだろうけどゆっくりしていきな」
祖母の姿に心当たりがあったソアレは首を傾げながら尋ねる。
「間違っていたら申し訳ないのですが……テラボア・フェリテスさんですか?」
「ん?そうだけど何処かであった事はあったかい?」
「はい。私の母が魔女の国にいるので子供の時に数回あっていますし、高名な薬師なので覚えています」
「そりゃー光栄な事だね。その調子で孫の事も覚えてくれるとありがたいね」
そう言ってテラボアがテテノを指さすとテテノ目には涙が溜まっていた。
「どうして数回しかあった事のないお婆ちゃんを覚えていて、3年間同じクラスで、しかも一年の時の合宿が同じだったクラスメイト覚えていないんですか!?」
「そうですね……私は学生時代を駆け抜けていましたから。と言うか正直にいいますと学生時代は余裕が無かったので」
「どうして、そこで自信満々に言えるんだ……テテノももう諦めろ。私もパーティーに誘った時にどちらさんですか?と言われたからな……」
気苦労が絶えなさそうなスティレに同情しながら、テテノはソアレとカーディフに名乗り、次は覚えておいてくださいといい、席に着いた。
テラボアが入れてくれた飲み物を飲みながら、ソアレはルディールに親しげに話しかける。
「ルディールさん。今みたいに自称クラスメイトに会った時はどうやったらいいんですか?」
「自称じゃないですよ!」
そうじゃな~と腕を組み少し考えてから「少し見ておれよ」と言ってからスティレに会話をたのんだ。
「わかった、やってみよう。……久しぶりだな、ルディール殿元気にしていたか?」
「うむ、久方ぶりじゃな……すまぬ名前は?」
「忘れたのか?バンキッシュだ」
「いや、それは覚えておる名前のほうじゃな。少し物忘れがひどくてな」
「スティレだ」
「と言うような感じにすれば性も名も聞けるぞ。というか忘れていても明るく接しておれば気付かんと思うがのう」
と言ってルディールは深呼吸をしてからテテノの手を取りソアレの声で話しかけた。
「あっ!久しぶり~元気にしてた?わたしソアレ!おぼえてる?みたいな感じでじゃな」
ルディールの口からソアレの声が出たのでテテノは驚き口をパクパクさせたが、スティレ達は慣れているようで冷静にソアレがそんな性格だったら苦労しないと頭を抱えた。
「なるほど……今度、同級生にあったら試してみます。私、ソアレソアレー」
「お主はもう少し感情を込めて言った方がよいぞ……」
クラスメイトとルディールのやり取りを見ながらテテノは盛大にため息をつき話しかける。
「ソアレさんは変わりましたね……学生の頃はもっとこう隙が無く、雷のように人を寄せ付けないイメージでしたが……」
「ビリビリ女学生でしたからね。と言うより人が変わったと言う前に自分が変わったと思った方がいいですよ。過去と他人は変わりません。貴女が変わったんです。子猫を助ける為に川に飛び込んだ優しかった貴女はいますか?」
「いませんよ!そもそもそんな過去はありませんし!!ソアレさんは変わりましたよ!そんな冗談言う人ではなかったでしょう!無口で必要最低限しか話していませんでしたよ」
テテノとソアレが面白おかしく話しているのでスティレやルディールは席に着き話始めた。
「それで、ルディール殿はどうして私達を呼んだんだ?」
スティレにそう尋ねられたので、ルディールはアイテムバッグに仕舞った瓶底眼鏡を取り出し装着した。
「この眼鏡を作ってもらって、なんやかんやあってテテノ殿が死の沼に行きたいから高ランクの護衛が欲しいと言ってな。それで呼んだ訳じゃな」
「なるほど、眼鏡の方はあの依頼で使うからわかったが……」と言ってスティレが飲み物を口に含んだ瞬間にルディールは眼鏡を外した。
眼鏡に付与された特殊効果でルディールの目は3になっており、それがツボにはまったのかスティレもカーディフも盛大に吹いた。
「くっ!ルディール殿の事だから何か仕掛けてくるとはおもっていたが!くっやられた!」
スティレはそう言いながら悔しそうだが笑いカーディフはお腹を押さえ笑いを我慢していた。
それからルディールは追撃を仕掛けるように頭の上に眼鏡を乗せ「めがね~めがねはどこですか~」と言って手を突き出し上下にバタバタと動かした。
その光景もテテノやソアレも見ていたようで皆が落ち着いてから話し合いが始まった。
「それでじゃな。そこのテテノ殿が……」ルディールは頭の上に眼鏡を乗せながら腕を組み真面目なトーンでそう話し始めたがカーディフから待ったがかかる。
「ルディ……真面目な話をするんならその眼鏡をとりなさいよ!気になって集中できないしょうが!」と大きな声を上げならルディールの頭から眼鏡を取った。
「しかたないのう……」と眼鏡をアイテムバッグに仕舞うとスティレが尋ねた。
「というかどうしてそんな能力を付与してもらったんだ?もっと良い物があっただろうに……」
「魔法使いが人を楽しませる心を忘れてはだめじゃろ?そういう事じゃな」
「「なるほど……」」とスティレとソアレは納得したがテテノとカーディフは意味が分からないと言うような顔をしていた。
それからルディールがスティレ達に丁寧に事の経緯を説明した。
「と言う訳じゃな。わらわが行っても良いが護衛なら火食い鳥の方が向いおるじゃろうから相談した訳じゃ。わらわも死の沼に興味はあるから行きたいのは行きたい」
「ルディは行ったら駄目でしょうが……今夜はまた鉱山に手伝いにいくんでしょ?」
「絶対に行くとは行って無いから大丈夫じゃぞ」
「……たしか今回はAランクが多かった筈だからルディール殿、行ってあげてくれ。同じ冒険者だがあの鉱山には同情する……テテノの死の沼には私達が責任をもって護衛をするから」
スティレが頭をさげたのでルディールはどうしようかと悩んでいたので、その間にテテノがソアレに質問した。
「ソアレさん。あのルディールさんって何者ですか?装備とかとんでもない物をお持ちですが?」
「そうですねー。私の親友で、魔法も教えてもらうので第二の師匠でしょうか?無名のスタイリッシュ魔法使いですね」
「なんですかそのスタイリッシュ魔法使いって……他にも気になりますがそれが一番気になりますよ!」
「魔法使いなのに接近戦を好みスタイリッシュに動くので、スタイリッシュ魔法使いですね」
その話が聞こえていたのかルディールがソアレに話しかける。
「ソアレよ。それ使わせてもらって良いか?」
「どうぞどうぞ」
「今度から職業を聞かれたらスタイリッシュ魔法使いと答えようっと、ヘブンリーディザスターとか言っても誰にも通じんしのう……」
「なんですか……その聞いた事の無い職業は……」とテテノがルディールが冗談を言っていると思い少し呆れながら尋ねると、天の災害の様な魔法が使える魔法使いと言ったので冗談を言っているのだと納得した。
「災害かー。確かにルディの使う魔法は災害ね……間違って無いわ」
「カーディフさん、またまた~そんな魔法使いはスノーベインの女王ぐらいしかいませんよ」
テテノが笑いながらそう言ったのでスティレもソアレも笑いながらそうですね。と飲み物を口に含んだ。
「気にはなるが、後から聞けばよいか。約束はしてないが頼まれておるしのう」
「ああ、ルディール殿はすまないが、そうしてやってくれ。それでテテノ、私達もその話は気になるから護衛の件は引き受けよう」
知らない冒険者に気を使いながら護衛をしてもらうよりは、知ってる同級生に護衛をしてもらえると分かりテテノは頭を下げて礼を言った。
「スティレさんありがと~ほんと助かるよ」
「いえいえ、元クラスメイトのよしみですからね」
「あんたは忘れてたでしょうが……」
「そうですよ!ソアレさんは忘れてましたよね!?」
それからその場で話し合いをはじめ、テテノが気付いた事などを詳しく伝える。するとソアレが小さく手を上げてから言った。
「でしたら、今夜行った方がいいですね」
「え?ソアレさんどうしてですか?」
「はい。理由は二つありますが、一つ、夜は魔力が上がるので地下の様な所があると漏れ出しているのがわかりやすいので。もう一つは都合の良い事に今日は満月なので似たような理由で発見しやすいですね」
「……そう言えばソアレさんは魔眼持ちでしたね。魔力の流れとかが色で見えるんですよね?」
「はい。テテノさんは黄色っぽい色をしてるのでオナラが漂っているように見えてます」
「そんな事ないですよ!学生の時に聞いたら紫っぽい色って言ってました!」
「過去の私はユーモアのセンスが無かったんですね……」
「別人ですよ別人」
テテノが苦情を言うとスティレも笑いながらテテノももう少し大人しかったような気がするがなっと笑い話を戻した。
「ソアレの意見を参考にするなら、準備を整えてすぐに行く事になるが、カーディフもそれでいいか?」
「うん、いいわよ。私も気になるしね。何か発見があるかもしれないしね」
「では、決まりだな。テテノもそういう事だからすぐに準備をして向かうぞ」
「え?それはいいけど飛空艇に乗って行くから、すぐには無理だし、いくらクラスメイトでもお金の話をしないと……」
そう言うとソアレはまた小さく手をあげ、私は転移魔法を使えますといい、テテノを心の底から驚かせた。
「はい!?この国でも十人もいないって聞きますよ!?」
「その内の一人が私です」
「……シクシク。同級生がしらない間に遠くに」
「まぁソアレは元々主席だしな。それはそうと料金だが今は依頼を受けてないから、私達がもしハイポーションや毒消し薬を使ったらその分だけ作ってくれればいい」
「え?皆さんも冒険者で生計を立ててるのに流石にそれは……」
「テテノン。クラスメイトの厚意は素直に受けて起きましょう。けっこうお高いですよ」
「ソアレさん……ほんと変わりましたね。火食い鳥は前に噂で聞いた時はBランクって聞いたので、私も借金はありますがそれぐらいなら払えますよ?」
「じゃったらテテノ殿よ。悪い事は言わんからスティレ達の厚意に甘えておいた方がよいぞ」
「えっどういう事ですか?」とテテノがルディールに尋ねたので、ルディールがスティレの方を向き言っても良いか?と言う様な顔をしスティレ達も頷いたので答えた。
スティレ達、火食い鳥はSランクのパーティーだと。
ルディールが冗談を言っているのだと思いテテノは冗談を言ってもダメですよと笑っていた。
「いや、本当じゃぞ?」
「私が前に聞いた時から一年も経っていませんからね。流石にスティレさんが強かろうがソアレさんが凄かろうが一年経たずにSランクは無理ですよ~」
信じないのならそれでもいいか?ともスティレは思ったが、自分達を鍛えてくれた恩人も目の前にいるのに嘘を言う訳にもいかないなとアイテムバッグの中から自身のギルドカードを出しテテノに渡した。
受け取ったギルドカードを見るとスティレの名前等が記入してあり、パーティー名の隣に嘘偽りなくSと書かれていた。
「えっえ?嘘じゃないですよね?」
「ああ、本当だな」
眼鏡を外して目をこすっても、目を3にしても確かにそこにはSランクパーティーのSという字が確かに書かれており、母親に借金を背負わされ錬金組合で教えてもらった時と同等かそれ以上の大きな声をあげ驚いた。




