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第14話 世間は狭い

 テテノのミスで錬金釜から爆発が起こったが、特に痛い所も無かったのでゆっくりと目を開けると、オーロラの様な物が折り重なる様に何枚もテテノ達を包み込み、錬金釜は氷で覆われていた。


「えっえっ?何これ?」とテテノが驚いたが、それ以上にルディールと祖母が驚いていた。


「いきなり叫んだから何事かと思ったが……爆発するとは思わんかったのう……お主もテラボア殿も大丈夫か?」


 そのテテノ達を包むオーロラと錬金釜を包む氷はルディールの魔法で爆発からテテノ達を守ってくれた様だった。


 テテノが礼を言うとルディールは魔法を解いてくれ、錬金釜が少し焦げたのと材料を無駄にしただけで済んだと思われたのでテテノがほっ息を吐き出すと、祖母の顔が笑っていなかった。




 テテノはその場に正座させられ嵐が過ぎ去るのを待つ以外の選択肢はなかった。


「それで……どういうつもりだい?テテノ」


「ごっごめんなさい」


「錬金術師が一番やっちゃいけない事って何だと思う?」


「……えっと、作業中に他の事を考える?」


「半分正解。考えるくらいは別にいいけど他の事せずにまずは目の前の事を終わらせる。テテノがこれから上へ上へと行ってもそれだけは覚えておきな」


「はい。ごめんなさい……」


「私からはもう言わないけど……死んだかと思ったよ。……なんというか、オントさんありがとね」


「間に合った自分を褒めてやりたいのう。と言うか何で爆発したんじゃ?」


 正座しているテテノを立たせてからデラボアは少し考えてから答えた。


「そうだね~……たぶんだけど、死の沼の泥は魔力を吸い取る効果があるから、テテノの魔力が泥を通して抜けて錬金釜に溜まっている所に錬金反応を起こしてボンって感じだと思うけど……そうならないように錬金術師は集中して魔力操作をしないと駄目なんだよ」


「オントさんも本当にごめんなさい……」


「特に言う事はないからわらわの事は気にしなくて良いが、錬金術師も命がけなんじゃな」


 ルディールがそう言うとテテノは困った顔をしながらあんな単純なミスをしてたら錬金術師の試験に通りませんので明らかに私のミスですと再度頭を下げた。


 落ち込みながら錬金釜を掃除するテテノに祖母のテラボアが話しかける。


「それで?テテノは錬金中に何を考えてたんだい?普段おとなしいあんたが叫んだんだ、よっぽの事だろ?」


 祖母の言葉で爆発前まで考えていた事を思い出し、慌てて自室に死の沼の事が書かれた羊皮紙を取りに階段を駆け上った。


「おとなしそうな娘かと思ったが、良い意味でそうでも無い感じじゃな~」


「母親が男と逃げるぐらいだから変な所は似たんだろうね……」


 などと二人が話していると二階からものすごい勢いで降りてきて肩で息をしていた。


「おっお婆ちゃん……しっ死の沼は……」


 その必死な姿に祖母は大きくため息をつき、自分は逃げないからとりあえず一度落ち着いてゆっくり話しなと言った。


 そう言われたのでテテノは何度か深呼吸をして呼吸を整えるてから説明を始めた。


「お婆ちゃん、死の沼は大っきな錬金釜だよ!これを見て!」


 そう言いながらテーブルの上に羊皮紙をおき、自分の考えを書き込み伝える。


 テテノが死の沼で魔力をよく吸われる位置を線と線で結び沼の形に重ねると、錬金術師がよく使う錬金釜の魔方陣になった。


「ん?確かにこの絵の通りだとそうだね……たしかに当時から錬金釜に見えるといってた連中はいたけど……」


 そう言いながらテテノの書いた死の沼の図を食い入る様に見つめた。逆にテテノはその話を聞いて少し肩を落とした。


「あーでも昔の凄い人達がそこまで気にして無いなら特に何もないのかな?」


 テテノがそう言うとルディールが横からすぐに否定した。


「そういうものでもあるまい。時間をかけて完成する物もあるし、蓋を開けて見れば大した事はなくてもそれを発見できる事は凄い事じゃぞ。自分が感じた事なら結果がどうであれ信じる事も大事じゃな」


「なっなるほど……オントさんは小さいのに大人ですね」


「見た目は子供、中身も子供じゃからな!」


「それって子供って事ですよね!?」


「大人は目が3になる眼鏡とか作らんわい」


 そうなんですけど! とテテノが声を大きくしルディールにツッコミを入れていると、祖母はペンと羊皮紙を取り出し、計算式のような物や文字を殴り書いていく。


 そしてひとしきり羊皮紙に書いた後にテテノに話しかける。


「テテノ……このメモがほんとならこれは大発見だよ。もしかしたら村を死の沼に変えた錬金術師の居場所も分かるかも知れないよ」


 祖母の表情が嘘も冗談も言っていない本気の表情だったのでゴクリと息をのみ、どうするかを尋ねた。


「ローレット国内の事だから憲兵さんに伝えた方がいいのかな?それか冒険者ギルドに行って調査してもらう方がいいのかな?」


「そうだねー……憲兵さんの所に行って説明すれば理解もしてもらえるだろうから派遣はしてもらえると思うけどすぐには動けないね……冒険者ギルドだと伝えた内容を錬金組合に確認してからになるからね……」


「まぁ。沼に行った感じだと今日明日何かが起こる事も無さそうだったから憲兵さんに伝えてゆっくり調べてもらえば良いね。……大発見とかあったらいくらかもらえないかな!?」


 と目をキラキラさせるテテノを祖母とルディールは大きくため息をついた。


「どうしてそこでため息をつくんですか!?」


「フェリテスさん……あのじゃな」


「お婆ちゃんもフェリテスですからテテノで大丈夫ですよ。お世話になっているイオード商会の護衛さんですし」


「ではお言葉に甘えてテテノ殿と呼ばせてもらうが……憲兵さんに言わずとも、自分で行って確認してから報告すればよかろう。その方が信憑性も高いし良い物が出て来たらもらえるんじゃろ?」


「私は戦えませんし、危ない橋は渡らないので嫌ですよ!」


「まったくあんたは……誰も一人で行けって行ってないだろ?冒険者を雇って行けば良いじゃ無いか


「お婆ちゃん、何言ってるの!?釜に見えるって事は沼の下に何かが溜まる所があるんだよ!?魔物とかいる事考えたらBランク辺りを雇う事になるからすっごい高いよ!」


「う~ん……しっかりしておるのか、しておらぬのか難しい所じゃな」


「何も出なかった時の事考えてだろうけど……テテノ。何か忘れてないかい?」そう言って祖母が先ほど爆発した錬金釜を指さした。


 その意味が分からずテテノが首をかしげるとテラボアはもう一度大きくため息をついた。


「はぁ……オントさん。この子はあんまりしっかりしてなかったよ…テテノ、あんたが爆発させた物は何だったっけ?」


 テラボアにそう言われたの錬金釜を見つめながら作っていた物を思い出す。


「魔抜きの灰…………ああああああ!」


 そう叫び死の沼から持って持って帰った泥の残りを確認したが依頼分を作れる量は残っていなかった。


「どっどうしよう……」


「どうしようも何も今から別の作り方だと間に合わないからまた死の沼に行くしか無いよ」


「自分のミスだけど泣きたい……」そう言いながらテテノはその場に両膝をついた。


 テテノを見ながらテラボアは大きくため息をつき、ルディールに話しかける。


「オントさん、あんたはイオード商会の護衛なんだろ?料金はちゃんと支払うから、この子と死の沼までいって調査してきてくれないかい?」


 その話ルディールは腕を組み少し考える。


「オントさん、すみません……できればお願いします。そしてできればお安く……」


「お主な……そういう時は安くしてというより少し高くてもいいのでと言った方が相手は喜ぶぞ。わらわも死の沼の事は気になるから行って見たいんじゃが……」


「何かあるのかい?」


「うむ。行きたくない用事と、何かを調べたり罠を発見したりする技能は持っておらんのじゃよな……その辺りが一番気がかりでな。相手を倒すとか物を破壊するのに特化しておるからのう……」


 そう言って腕を組みながら考えていると何かを閃いた様で腕をぽんと叩いた。


「そういうのに特化した友人がおるからそやつ等に頼んでも良いか?」


「私は護衛してもらえるなら誰でもいいですが……」


「では少し聞いて見るので少し待つのじゃ」


 そう言ってルディールは腰辺りに装着している小さなアイテムバッグの中をゴソゴソと漁り魔道具を一つ取り出した。


 その魔道具に見覚えがあるテテノは少し驚く


「通信用魔道具……そんな物まで持っているんですか……凄いですね」


 数ヶ月前にスノーベインと言われる雪と氷で覆われた国で開発が成功し、遠くにいても人と人が話せる魔道具だ。


 現状出回っている通信魔道具は大昔に大賢者が作った物を使っているので持っている人は本当にごくわずかだった。


 スノーベインが開発に成功したことで修理もおこなっているので、壊れてもコレクションとして集めていた商人や貴族が直してもらっていると言う話だが、それでも数はまだまだすくない。


 テテノが羨ましそうに通信魔道具を見ているとルディールは魔力を流し何処かにかけた。


 そしてすぐに誰かが出たのか話を始めた。


「もしもし~わらわわらわ~。わらわわらわ詐欺では無いぞ。今、話をして大丈夫か?うむうむ。大丈夫そうじゃな」


 どうなるか心配だったが聞き耳を立てる訳にもいかないでテテノはお金の神様に祈りながら事の成り行きを見守った。


 そして通話が終わりアイテムバッグに通信魔道具をしまってからテテノにルディールは話しかける。


「一度、ここに来てくれるそうじゃぞ」


「え?その人はこの工房を知ってたんですか?」


「うむ。だいたいの位置を伝えて錬金工房って言ったら通じたぞ?王都で冒険者をやっておるからお客さんだったのかも知れんのう」


「あーそうかも知れませんね。すぐに来られんですか?」


「近くにいると言うておったからすぐに来てくれるらしいぞ」


 祖母が良かったね~といいテテノも見ず知らずの冒険者に頭をさげ、五分も経たない内に玄関のベルが鳴った。


 丁度、祖母が近くにいたので対応し中に三人の冒険者を迎え入れると、テテノはその三人の冒険者のウチ二人に見覚えがあった。


「……ぶふっ!火食い鳥のスティレ・ヴァンキッシュさんとソアレ・フォーラスさん!?」


「ルディール殿から聞いた場所に聞き覚えがあると思ったが、やはりか」


「ん?あんた達、知り合いなの?」

 

 テテノが火食い鳥と言った冒険者のパーティーは、女性が三名のパーティーで、テテノと話した女性は名をスティレといいフルプレートに近い銀色を基調とした鎧を装備していた。


 そして自分の名前を呼ばれ頭を傾げ明らかに魔道士と呼ばれるような服装をしており手には雷を切り取った様な杖を持った人物がソアレ・フォーラスだ。


 スティレが弓を背負った仲間とルディールにテテノとの関係を話そうとしたと所で、スティレに耳打ちするようにソアレが尋ねる。


「……スティレ、どちらさんでしたか?」


 その言葉にスティレは呆れ大きくため息をついた……


「ソアレ、お前は……本当に……」


「……何がですか?」


 その話し声が聞こえていたテテノは目に涙を溜めながらソアレに訴えた。


「まだ!卒業してから数年しか経ってませんよ!ほぼ毎日学校で会ってました!ソアレさん!貴女の元クラスメイトですよ!」


「……あー、右後ろの席のベルフェさんでしたね。お久しぶりです。元気でしたか?」


「誰ですかそれ!しかもクラスにそんな名前の人いませんでしたよ!」


 ソアレの適当さにスティレは頭を抱え、祖母は大笑いしていた。


「何というか、世間は狭い感じじゃな~」


「そうなんだけど、何であんたは眼鏡かけてるのよ……」


 ルディールは弓を背負った女性と世間話をしながら成り行きを見守った。

次回の更新も明日のお昼予定。

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