第13話 瓶底眼鏡
いつものと同じ様な時間に目が覚めたテテノは一階に降りると祖母が朝食を作っていたので礼を言ってから料理を習おうと手伝った。
「いい心がけだ。いい人を見つけた時に逃がさない様に胃袋を掴んでおかないとね」
「返済でいっぱいいっぱいだからそういうのはいいかな……」
「貴族でも確保したら一括で返済してくれるかもしれないだろ?まぁ男爵ぐらいだとフェリテス家の借金で簡単に潰れるけどね」
「ねっ狙うは侯爵か公爵……借金の返済で結婚するのって何かやだ」
「いっその事、惚れ薬とか作った方が速い様な気がするね。量を作って霧状にして屋敷に巻けば簡単だし」
「人としての尊厳は最低限は守って返済したい……たまーに学生とかが作って欲しいって来るけど、アレって効果あるのかな?付き合い始めしたーとかお礼の手紙がくるけど……そもそもそういう洗脳系の成分って入ってないし」
「あー……その偽物じゃなくて禁書とかに書かれてる本物の方ね」
「本物ってなに!?」
「使うとその人以外は灰色に見えて、その人以外の声はノイズに聞こえて~とかそういうの。歴史で習わなかったかい?三百年ぐらい前に王様がひとりの女性に固執して国が滅んだって昔話があるだろ?」
「学生の時に習った気がする。国よりも一人の女の人を助けたってやつだよね。劇とかでもやってて人気のお話だよね」
「アレってその女性がその王様に惚れ薬を使っただけだよ。ふつうにドブスだったし」
「えっえ?……まさか……我が家の家系が作ってないよね!?」
「フェリテスの家系に人に迷惑をかける錬金術師はいないよ!」
貴女の娘で私の母が錬金組合の歴史に残りそうな大迷惑をかけて男と逃げましたが?と言いたかったが、言ったら絶対に怒られるのでテテノはその言葉を飲み込んだ。
「でも、お婆ちゃん……なんで知ってるの?」
「そりゃ~おばあちゃん長生きだし、その惚れ薬を作ったのお隣さんだったしね」
「そうだったんだ……というかそんな薬を作ったら私が捕まるよ!」
「ほぼ大丈夫だけどね。もう作り方をしってるのは私ぐらいだから、対策の取りようもないからやりたい放題だよ」
「今!人に迷惑をかける錬金術師はフェリテス家にいないって、お婆ちゃん言ったよ!」
「惚れ薬つかって結婚したら親族になるから別にいいんだよ」
お母さんのお母さんだな~っと変に納得してる間に朝食が完成したので皿などを並べ二人で朝食を取る。
料理の事など祖母に教えてもらいながら朝食を終え、テテノが皿などを洗い片づける。
そして今日も一日頑張ろうと腕をまくり、採取してきた死の沼の泥を取り出し、依頼品の魔抜き灰を作る準備を始めた。
祖母も椅子に座って煙管をふかしていたので、死の沼での違和感を祖母に相談しようとしたタイミングで玄関のベルが鳴った。
持ち込みで制作依頼のお客さんかな? など考えながら工房の入口まで走って行きゆっくりドアを開け声をかける。
「いらっしゃいませー。もう開店してますのでどうぞ」
ドアを空けた先には山羊の様な角が生えた薄い金色の髪の少女が立っており、数日前にこの工房に来たので見覚えがあった。
「あっイオード商会の護衛の方ですね。……もしかして返済でしょうか?」
「いや、作ってほしい物があるので来た感じじゃが……営業しておるか?」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。こちらにどうぞ」
そう言ってテテノは護衛の少女に工房の中に入ってもらい、来客用のテーブルに羊皮紙を置きお互いに向かい合う様に座ってもらった。
「それでどういった物をご依頼でしょうか?」とテテノが尋ねると少女はテーブルの上に手を置いた。
その細く綺麗な指には不実の指輪とシンプルな造りだが見た事も無いような細かな模様が刻まれた指輪をしていた。
そしてその少女が作って欲しい物を言うタイミングで、コーヒーを飲みながらこちらを眺めていた祖母が盛大に吹き出した。
祖母が訳も分からずいきなり吹き出したのでテテノは少女に少し待ってもらいむせている祖母の背中をさすった。
「ちょっと!お婆ちゃん、大丈夫!?」
「ごほっ!ごほっ!はぁはぁ……テテノもお客さんもごめんね」
しんどそうな祖母の背中をさするテテノを見てそのその少女も近づき祖母に回復魔法をかけた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、ありがと……お客さんに色々聞くのはタブーなんだけど一ついいかい?」
その少女は少し考える素振りをしてから大丈夫ですよと答えた。
テテノは祖母が慌てている意味が分からなかったので、事の成り行きを見守ろうと静かにした。
「ああ、ありがとよ。と言うか話しにくそうだから、目上とか気にせずさっきの話方でいいよ」
「そう言ってもらえるとありがたいが……盛大に吹いたが大丈夫?」
「それ本物かい?」と祖母が少女の指輪を指さしたので少女も驚き少し二人で話をしていた。
テテノには話の内容が分からなかったが、その少女の人柄が話のしやすい人だと言う事がわかり、さっそく祖母とも知り合いのように話をしていた。
「それでその指輪はどういう物なんですか」とテテノが尋ねると本を読む時に便利な指輪だとその少女は教えてくれた。
「まぁ……確かに便利なんだけど……まぁいいか。お客さん名前を聞いてもいいかい?」
「本を読むのと羊とか牛を呼びに行く時いがいはあんまり活躍せんからのう……ルディール・ル・オントじゃな」
「私はテラボア・フェリテスだね」
祖母が名乗ったのでテテノも「テテノ・フェリテスです」と名乗った。
そしてテラボアがテテノとルディールにコーヒーを入れて飲みながら雑談をし、先ほどの依頼の話に戻った。
「それで、オントさんはどういう物をご依頼で?」
「うむ。錬金組合の方で聞いて材料は持って来たんじゃが、度の入ってない瓶底眼鏡を作って欲しいんじゃが」
眼鏡なら道具屋さんに行けばオシャレな物も売っているので、何か付与でもするのかな?っと考えルディールに質問する。
「丸い眼鏡でガラスの部分が分厚い眼鏡ですよね?作れますけど道具屋さんの方がオシャレなのありません?」
「オシャレな眼鏡が欲しい訳では無いし、少し顔を隠す様な感じにしたいからじゃな」
「なるほど。分かりました。追加料金はでますが便利な効果を付与できますがリクエストはありますか?」
「どういうのがあるんじゃ?」
「少し高くなりますが矢よけ、花粉よけ、粉塵よけとかも作れますね。冒険者の人だと暗闇でも見える様な効果がついてたりもします。ちなみに私の眼鏡も自作で閃光無効がついてるので眩しくないですね」
テテノがそう言うとルディールは目をきらきらさせながらテテノの理解が及ばない事を言った。
「じゃたら眼鏡を外した時に目が3に見えるような効果がついた眼鏡を作って欲しい!」
「はい?」と少しテテノは悩んでからようやく理解が追いつき、自分も朝起きて鏡見た時にたまになるあれか……と分かった。
「えっと……こういうのですか?」と言ってテテノが眼鏡をとり目を細めると、ルディールの思い描いた顔になっていた様でそうそれ!と喜んでいた。
「どうじゃ?できそうか?」
「はい、できるとは思いますが……花粉よけとか!矢よけの方が便利よくないですか!?」とルディールにテテノは冷静にツッコミを入れていた。
「わらわは花粉症では無いし、矢とか当たらなければどうという事はないしのう。顔を隠したい時に使う眼鏡じゃからな」
「そうかもしれませんけど!他にありますよね!?」
テテノがそう言っていると、テラボアは笑いルディールは弟子みたいなツッコミをするのう言っていた。
「お婆ちゃん、幻惑鉱を入れて相手にそう見える様にしたらいいよね?」
「ああ、それで良いと思う。魔王……じゃなかったオントさん。効果時間は何分にするかい?頭の上にかけておくなら吸魔鉱も入れるから効果はずっと持つけど、外してテーブルの上とかに置くと数分しかもたないね」
「一分もあれば十分じゃな!」と瓶底眼鏡で追加効果が外した時に目が3に見える眼鏡を作る事が決定した。
テテノはもっと他に良い物があるような気がすると悩んだが、祖母もルディールもノリノリだったので色々と諦め眼鏡の縁の形や色を細かく尋ねて羊皮紙に書き込んでいく。
完成するのに小一時間ほどかかるとルディールに伝えると、錬金術は初めて見るからテテノさえ良ければ見学させて欲しいといったので、テテノははいと返事を了承した。
そして祖母がルディールと何か話をする中でテテノはアイテムボックスや棚から必要な物を取り出し錬金を始めた。
ルディールの持って来た材料を錬金釜に入れレンズの部分を作り、小型の錬金釜にはフレームの部分になる材料を入れた。
そして小型の錬金釜に入れて作った材料にテテノは魔力を流し伸ばしたりちぎったりしてルディールの顔に合うように作っていった。
(う~ん……これだけ整った顔なのに……凄い人の考える事はイマイチ分からないな~)等と考えながら仕事をし、ちょうど一時間がたつ頃にルディールの瓶底眼鏡は完成した。
「これで大丈夫と思いますので一度、身につけてもらえますか?」
そう言ってルディールの前に鏡と出来上がった眼鏡を置き確認してもらった。
ルディールが眼鏡を装着し鏡の前でつけたり外したりすると鏡ににも見ていたテテノにもちゃんと眼鏡を外した時に目が3になっていた。
ルディールの整った顔の目が凄い事になっているのでテテノは思わず吹き出してしまうとルディールは満足そうにバッチリじゃなといった。
「他人からみるとそう見えるんですね……」
「うむ!まさに理想の眼鏡じゃな。それでいくらになるんじゃ?」
そう聞かれたのテテノは使った材料の事などを計算しルディールに伝えた。
「すみません……吸魔鉱や幻惑鉱がすこし高いので白硬貨二枚ほど頂きたいんですがいいですか?」
「全然よいぞ!黒硬貨一枚でもお釣りが来るできじゃからな!」と言って眼鏡を外しアイテムバッグの中をゴソゴソとしだしたのでまたテテノは吹き出した。
テテノは謝ってから満足そうなルディールから白硬貨二枚ほど受け取り礼を言った。
そしてルディールは礼を言ってから帰ろうとした所で祖母から呼び止められていた。
「オントさん、暇だったら少しゆっくりしていかないかい?」
「わらわは良いが、仕事の邪魔にはならぬか?」
テテノも特に見られてても困る事はないし、妙に面白い人だったのでゆっくりして行ってくださいと声をかけ魔抜き灰を作り始めた。
ルディールも礼を言って椅子に座り、錬金術師で気になった事を祖母に聞きながらテテノの錬金術を見ていた。
そしてしばらく錬金術を見ていたルディールが祖母に質問する。
「あの釜に入れて作るんじゃよな?」
「ああ、液体になる物はほとんどあれで作るね。錬金術師だと無くてもできるけど液体だとこぼれるし、釜だと魔力も安定するんだよ。その為の錬金釜だしね」
「大きければ大きい程良いと言うのもでも無いんじゃよな?」
「魔力さえ供給できれば大きい方がいいね。作る物が安定するんだよ、その辺はややこしいから省くけどね」
「カレーみたいに大量に作った方が味が安定するみたいなもんじゃろか?」
ルディールがそう言うとテラボアはツボにはまったようで大きく笑いそういう認識で合ってるよといった。
その話が聞こえていたテテノは違和感が消えて行く様な感覚を覚え手が止まった。
「大きい……作る……」
「わらわも錬金術を習おうかのう」
「オントさんが習ってどうすんだいって話になるけどね。イオード商会の護衛やってるのもおかしいし、王都を歩いてるのもおかしいだろうに」
「魔法使いが街を歩いておってもおかしくないわい。錬金でゴーレムとかも作れるのか?」
「ああ、組み立てはゴーレム技師になるけど作れるのは作れるね。ウチの倍以上の大きな錬金釜がいるしそんなに儲けはないから人によったら嫌がるね」
「ではあれじゃな!池ぐらい大きな錬金釜があったら人が乗り込める巨大なゴーレムができるんじゃな!?」
「乗り込む意味は無いだろけどできるね。いくらかかるか知らないけどね」
その話が聞こえていたテテノの動きは止まりパズルのピースがはまっていく様な感覚を覚えた。
「池ぐらい大きな錬金釜……錬金釜……死の沼……錬金釜……あああーーーーーー!それだ!死の沼は錬金釜だ!」
普段静かなテテノが叫んだのででデラボアとルディールは驚きテテノ方を見る。
「お婆ちゃん!オントさん!それだよ!」
そう叫んだ意味は二人には分からなかったが、テテノの近くにある錬金が変に発光しているのは分かった。
テラボアがテテノに何か言おうとした瞬間に錬金釜は急激に発光しボン!と音を立てて爆発した。
次回の更新は明日のお昼ぐらいになります。
来月から仕事が忙しくなりそうな予感……




