第12話 消えない違和感
寝心地が良かった宿のベッドのおかげか、採取の為に死の沼まで行ったのが良い運動になったのか目覚めたテテノの調子は良く、まだ寝ているタリカを起こさない様に一階へと降りた。
一階へ降りると女将がテーブルを拭いたりと掃除をしていたのでテテノはおはようございますと声をかけた。
挨拶で気がついた女将は一度手を止めて、テテノに挨拶を返した。
「おはようございますだね。錬金術師さんはもう帰るんだろ?」
「はい。目的の物は採取できましたので」
「そうかい。飛空艇に乗って帰るだけだろうけど気をつけてね。また浴場の魔道具が壊れたら修理をおねがいするよ」
そう女将が言ってくれたので、テテノはアイテムバッグの中から工房の場所等が書かれた名刺の様な物を手渡し礼を言った。
女将と少し世間話などをしてからテテノは向かいにある酒場に朝食を買いに行き、まだ寝ているであろうタリカの分のサンドイッチやコーヒーを買ってからまた宿の部屋へと戻った。
部屋のドアを開けた音でタリカが目覚めたのか眠たそうにテテノのに挨拶をする。
「フェリテスさん……おはようございます。朝早いんですね」
「家では私が朝ご飯作っていましたし、錬金する物によっては朝日を浴びせないと完成しない物もありますから、錬金術師は夜遅くまで起きてるか朝早くから起きてるかのほぼ二極ですね」
目をこすりながらなるほど~っとタリカが納得した所で、テテノは母親の事を思い出し、夜も早めに寝て起きるのも遅く昼寝もする錬金術師もいたな~と笑った。
「タリカさん、起きてすぐなので食べられないかも知れませんが朝食を買ってきたので、良かったら食べましょう」
「ありがとうございます。私は寝ながらでも食べられるので全然食べられますよ」とまだ眠いのか言葉が少しおかしかった。
タリカは顔を洗い完全に目覚めてからもう一度テテノに礼を言ってから二人で食事を取った。
食事を取り終わりタリカが着替えている間にテテノは簡単に宿の掃除をして魔法で部屋の空気を入れ替えた。そして忘れ物が無いか等を確認しタリカと一緒に部屋を出る。
また一階に降りて女将に料金を支払うとアスキスやティグラはもう先に宿を出たと教えてくれた。
「あの二人は……」とタリカが怒りそうだったのでテテノはまぁまぁと落ち着かせてから女将に礼をいい宿をでた。
「どうします?このまま発着場にいってもまだ早いので市場でも見にいきますか?」
「そうですね。なにか掘り出し物があるかもしれませんので、市場を見ながら発着場にいきましょう」
タリカが分かりましたと言ってくれたので市場へと向かった。
市場に行くとアスキス達も何かを買っており、簡単に挨拶をしてから後で発着場に向かうと伝えた。
アスキスもティグラもそれで問題はなかったようなので「飛空艇に間に合うならなんでもいいぞ」と少しぶっきらぼうに答えた。
昨夜の様に目立って安い物は無かったがそれでも王都よりは安い薬草の類いがあったのでテテノは財布の中を確認してから揚々とそれらの薬草を買い発着場へと向かった。
「アスキスはあれですね。フェリテスさんが自分より強いので拗ねているんですよ」
発着場で船とアスキスを待っているとタリカがいきなりそんな事を言い始めた。
「どうなんでしょうね?魔法が強いだけで接近されたら終わりですし、私程度と比べられてもと言う感じですが……」
「フェリテスさんは錬金術師で私達は冒険者ですからね。比べるのもおかしな話ですが……なんというか子供なんでしょうね」
「それ、絶対に本人の前で言うのは止めてくださいね……絶対に大喧嘩になりますよ」
「パーティーはこれで最後ですから言っても良いような気がしますけどね」
「だったら余計に止めましょう。冒険者ギルドや街で出会ったら気まずくないですか?」
「その時は大喧嘩しますよ。こう見えて殴りもいけるプリーストなので!」そう言ってタリカはアイテムバッグの中からメイスを取りだして振ると素人のテテノが振ったような音ではなく明らかに使い慣れた人が振ったような音がした。
「タリカさん……妙に様になってますね」
「はい。前のパーティーが魔法使いとアーチャーだったので前衛がいなかったので私がやることになったんですが……神の導きで新しい自分を見つけましたという訳です」
「聖職者に鈍器……なにかおかしい……慈愛ってなんだろうって感じですね」
「慈愛ですか?……狙った獲物は苦しめない様に一撃の下に葬り去る事ですね。……ってそんな顔しないでくださいよ!冗談ですよ!プリーストですから鈍器を持っただけでそんなに戦えませんよ!」
そんな話をしながら発着場で時間を潰していると、アスキス達もやって来て、サンファルテから王都に向かう飛空艇も到着した。
来た時と同じ様にアスキスが受付を済ませ、全員が飛空艇に乗り込んだ。
サンファルテから王都に向かう人の方が多いようで来る時よりも人が多かった。
飛空艇が上昇しようやく安定したので大部屋からデッキへとテテノの達は向かい世間話をしたりして時間を潰した。
大きな鳥が横切る等のハプニングなどは合ったが大きな問題はなくテテノ達は無事に王都に帰ってきた。
王都の発着場から外に出ると少し薄暗くなっていた。
テテノが大きく背伸びをしているとアスキスが話しかけ「知ってると思うが冒険者ギルドに依頼の達成や報告を頼むぞ」
「はい。大丈夫ですよ。これからすぐに向かいますね」
「分かった」と返事をしアスキス達も冒険者ギルドに行くので一緒に向かう事になった。
冒険者ギルドに依頼を頼むと達成、非達成にかかわらず依頼者は冒険者ギルドに行き、依頼に関わった冒険者を評価する必要がある。強ければいいという職業だが人格者でなければ任せられない仕事も多いので義務ではないが報告すると喜ばれる。
アスキス達と冒険者ギルドに向かい中に入るとそこで解散と言う形になり、テテノはアスキス達に丁寧に礼を言ってから受け付けへと向かい、アスキス達も別の受付へと向かった。
受付にいくとこの前とは別の男性の職員さんだった。
「すみません。依頼が終わったので報告に来ました」そう言ってテテノはアイテムバッグの中から依頼票の写しを取り出し職員さんに渡した。
「確認しますので少々お待ちを」と言われ依頼票の写しに水晶の様な物を当てるとその依頼が正式なものだと分かったので奥の棚に行き本物の依頼票を持って来た。
「ありがとうございます。この後少しお時間大丈夫でしょうか?今回、同行した冒険者達の話を聞きたいのですが……」
断って帰った所でテテノの借金が減る訳でもないので大丈夫ですよといった。
断られる事も多いので職員さんはテテノに礼を言ってから机の中からアンケート用紙の様な紙を取り出し質問をしながら書き込んでいく。
「今回の依頼で何か問題はありましたか?例えば冒険者同士で喧嘩したなど」
アスキスとタリカが少し揉めてはいたが喧嘩と言う様な事でも無いし、移動中はしっかりと護衛もしてくれたので特にテテノから見ても問題があるような事は無かったと伝えた。
「私から見てですが特に問題はなかったと思います。パーティー内で意見の違いはあったと思いますが……それで採取に問題が出たという訳でもないので」
職員さんはありがとうございますと礼をいい、その事を書き込みながら話しかける。
「アスキスさんのパーティーは依頼者からの苦情が他の冒険者と比べて少し多いのでお聞きしました。タリカさんも今回の依頼でパーティーを脱退するという話が出ていましたので、もう少しお互いに気をつけてくれればCランクには上がれるんですが」と愚痴のような呟きをもらしていた。
出会ったばかりの冒険者の事を語れる訳でも無いので困った様に苦笑していると職員さんもそれに気がついたのかすみませんと頭を下げていた。
もう少しだけ職員さんと話をし、今回の依頼はテテノの話から問題が無いと言う事が分かったので職員さんは依頼票に依頼が達成された判子を押して、依頼書を二枚まとめてヒモで括った。
「これで全て終わりました。お付き合い頂きありがとうございます」と礼を言ってくれたので、テテノもまた依頼するときはよろしくお願いしますと頭を下げ席を立った。
受付からロービーに行くとアスキスはいなかったがタリカとティグラがいたので話かけた。
「タリカさんもティグラさんもありがとうございました。アスキスさんは?お礼を言いたいんですが……」
「リーダーなので受付で詳しく話をしていますね。ほっといて良いですよ。こちらこそありがとうございました」
「アスキスの方には俺の方から言っておこう」
二人と少し話をしていたがまだ戻って来る気配はなかったので、工房の事が気になるテテノはもう一度、二人に礼を言ってから別れた。
冒険者ギルドから出ると外は薄暗くなっていたので、テテノは寄り道などもせずに家へと急いだ。
家に着くと出発した時と何も変わらない工房があり、ドアノブにかけた看板を取り外し鍵を開け中へと入った。
中に入ると祖母が夕食の準備をしているのかとても良い匂いがした。
匂いに釣られるようにキッチンに行くと想像したように祖母が料理を作っていたので挨拶をする。
「お婆ちゃんただいま~」
「ああ、おかえり。上手くいったかい?」
「うん。採取してきた。というかお婆ちゃん、私が帰ってくる時間よくわかったね」
「そりゃー。サンファルテのほうから飛空艇が飛んで来たからね。そこから考えれば簡単さ。っと料理ができたからテテノはお皿を並べな」
「は~い」とテテノは返事をし皿を並べ終えると二人で夕食が始まった。
「そうそう、お婆ちゃんお土産」といってトルボ村で買ったお酒を祖母に渡すと、祖母は礼をいいすぐに封を切り、テテノにも注ぎ飲み始めた。
「ん~ひさしぶりに飲んだが、良い酒だね~。テテノありがとね」
「さすがに留守番までしてもらってるのにお土産ぐらいないとバチが当たるよ。お婆ちゃんもお母さんも見てて思うんだけど、美味しくないお酒ってあるの?」
「それは難しい話だね。安いお酒でもそういう物って思えば美味しいからね~。後は合う合わないぐらいだから……多分ないね」
なるほどと変に納得しついでもらったお酒をテテノも飲みながら死の沼であった事や冒険者達の話や手に入れた素材の事などを話した。
「へー一角鹿の角が手に入ったのかい。どうするつもりだい?」
「売っても良いけど言いすりこぎ棒が欲しかったらそれにすると思う」
「良いけど勿体なくないかい?」
「そうなんだけど、その次のすりこぎ棒ってなったら値段が跳ね上がるから元からなかったと思ってすりこぎ棒にするよ。これはこれでいるものだし」
「まぁ、薬師や錬金術師は絶対にいるものだしね」
「お婆ちゃんは私が出てる間は何してたの?商会長の所にいってたの?」
「ああ、昔なじみだからね。世間話をしに行くのと礼をいってきたよ」
「返済まってくれてるからね……お婆ちゃんありがとう」
「若い時の私に感謝だね」
そんな何気ない会話をしながら楽しい夕食の時間は過ぎてゆき、今回の遠征で手に入れた物を棚やアイテムボックスの中にしまってからテテノは自室に戻った。
自室の椅子に座り、アイテムバッグの中を整理していると死の沼の事を自分なりに描き込んだ羊皮紙が出て来た。
「あーこれか……」と自分の記憶お羊皮紙を手に取り、昨日いった死の沼の事を思い出した。
「何か絶対に変……なんだけど……大昔に宮廷魔道士とかが調べて何も無かったって話だし……何が変なのかって聞かれたら答えられないけど変」
いくら考えても、その違和感は消えなかった。遅い時間だったので明日にでも祖母に相談しようと考えベッドに入ると遠征で疲れたのかすぐに眠気がやって来たので、明日の錬金する物の段取りなどを考えテテノは眠りに落ちていった。
次回の更新は明日の朝で奴がでます。
????「わらわの出番じゃな!」




