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第11話 採取

 一角鹿と戦った後は大きな戦闘もなく、太陽が真上に見える頃には森を抜けようやく目的の死の沼が見えてきた。


 死の沼に近づくにつれ草木は細くなっていき、目と鼻の先に来る頃には小さな生き物も何もおらず苔のような植物すら生えていない大きな丸い泥の沼へとたどりついた。


「ここが死の沼……」


 その沼の作りにテテノは少しだけ違和感を覚えたので、沼を見ながら少し考えていた。


 黙って沼を見ているテテノを不思議に思ったタリカが話しかける。


「フェリテスさん?どうかしたんですか?ジッと沼を見て何か変わった物でもありましたか?」


「いえ……何というか沼にしては人工的というか何というか……すみません上手く説明出来ません」


「あれだろ?俺達が生まれる前に大きな事件があってこの場所が生まれたって冒険者ギルドの職員に聞いたからそのせいじゃねーの?」


 アスキスがそう言ったのでテテノはそこで一旦考えるのを止めた。


「……そうかも知れませんね」


「昼の間は魔物がいないが夜になると脅威度が跳ね上がるって聞くからさっさと採取して帰ろうぜ。あんたを守りながらだと俺でも無理だぞ」


 絶対に戦いたくないテテノはアスキスの言う事に納得できたので、すぐに準備を始めたが、その言い方が気に入らないタリカがアスキスに文句を言う。


「……だからフェリテスさんは依頼者なんだからそういう事言わない」


「なんだよ。守りながら戦うのは難しいんだぞ」


「はぁ……もう二度と言わないけどフェリテスさんは貴方より強いし、上にいくならもう少し気をつけた方がいいですよ」


 その一言で明らかに険悪なムードになった事が分かったのでテテノはそれを遮る様に明るく話しかける。


「では、私は沼の中に入っていくので、よろしくお願いします」と言ってマジックバッグの中から長靴を取り出し履き替えてから泥の沼へと入って行った。


 私も着いて行きますと自分に泥や砂に足を取られない魔法をかけると、少しは泥の上に沈むが地面を歩くようにタリカがテテノの後を追った。


 テテノが履いている長靴は自分で作った特別製で泥がテテノを避ける様に動いた。


「テテノさんの長靴、変わってますね」


「湿地帯とかこういう沼地で汚れるの嫌なので前に作りました。あまり深い所だと意味は無いんですがこれぐらいの深さだと便利ですよ」


「さすがは錬金術師……」


「私からすればその魔法の方が便利良さそうですけどね」


「この魔法を使えないと砂地や沼地で戦えないですからね~頑張って覚えました」


 等と少し世間話をしながら泥の質が良い場所を探していく。


「私には全部同じに見えるんですが……何か違うんですか?」


 手の平を泥の上にかざし左右に動かしながらテテノが泥の上を調べていく。


「魔抜きの灰を作る時は魔力を吸う素材がいるので、今は手から魔力をうっすらと流してどの辺り泥が魔力を吸うかを探していますね」


「なるほど……沼の中心が一番って訳でもないんですか?」


「感じ的に中心が一番だとは思うのですが長靴じゃ無理ですし、タリカさんの魔法だと表面しか採取できないので今みたいな感じにどの辺りが一番吸われるか探しているんですよっと」


 タリカに説明している最中に魔石の欠片が落ちていたのでテテノはそれを手に取り「他の物もこんな感じで採れますからね」と言って手をかざしながら、羊皮紙の束を取り出し沼のどの辺りが魔力を吸収されるかを詳細に書いていく。


 沼の形を書き、吸収される魔力の多い少ないや周りの地形なども書き込んでいくと、テテノが自分の描いた沼の絵に少しの違和感を覚える。


「ん?ここで魔力が吸収されるのが多い場所で……あっちが少ない場所……だとするとこっちは多い方かな?」と言いながらその場所に向かって行くと気になったタリカが話しかけてきた。


「先ほども何か悩んでいましたが、何か問題でも?」


「問題と言う訳でもないんですが……妙な引っかかりが……」


 悩みながら目的の場所までいくと、その場所はテテノが言ったように魔力が多く吸収される場所だった。


「う~ん……出そうで答えがでない……」


「くしゃみみたいなものですね」


 ほんとそんな感じですよとテテノが言いながら悩んでいると、陸からアスキスの声が聞こえた。


「おーい!もうすぐ戻る時間だから早く採取しろよー!」


 まだ早くないですか!?とタリカが言い返したが、アスキスは森は夜になるとめんどうだからさっさと帰りたいんだよと言った。


 テテノはまだ沼の調査をしたかったが、来る時に遭遇した鹿ならまだしも魔物とかとは絶対に戦いたくないテテノはアスキスに分かりました! と言って手を上げた。


「フェリテスさん、あんなの気にしなくて良いですからこの沼を調べてもいいですよ?」


「気のせいだって事もありますし、それ以上に私は戦いたくないので!」


「私より強いんですから……もっと自信を持ちましょうよ」


「錬金術師は臆病なぐらいが丁度良いんです。危ない物も取り扱いますからね」


「あー……さっきのフェリ毒みたいなやつですね」


「フェリ毒ってなんですか!?へんな名前をつけないでくださいよ!」


 雑談をしながらテテノはアイテムバッグから泥を入れるための小樽とシャベルを取り出した。


 今、テテノ達が立っている場所が魔力を多めに吸収される泥だったので、樽の蓋をあけ足下の泥を少し掘ってから中へと詰めていく。


 樽が泥で一杯になると漏れないように蓋をして水の魔法でシャベルを洗ってからアイテムバッグの中にしまった。


「これだけあれば依頼分は作れますね。ではタリカさん戻りましょうか」


「はい。でも良いんですか?この沼に何か違和感があるんですよね?もしかしたらとんでもないお宝があるかもしれませんよ?」


 その言葉に借金まみれのテテノはかなり悩んだが、アスキスに怒られるのも嫌だし大昔にここで事件があった時に自分より遙かに優秀な人達が調べているので絶対にそういう物は出ないと思い込みお宝があるかもという雑念を祓った。


 そしてアスキス達の所に戻るとティグラは木の上から辺りを確認し、アスキスも警戒していた様だったが特に何も問題は無かった様だった。


「さてと、目的は死の沼の泥の採取だからこれで達成か……さっさと帰るか」とアスキスが言ったので護衛対象のテテノが返事をする。


「ありがとうございます。目的の物も採取でき、長居する必要も無いので夜になる前に村まで帰りましょう」


 タリカはテテノが沼を気にしていた事が気になっていたようだったが、本人から却下されしぶしぶ村へと戻る準備を始めた。


 来た時と同じ様にアスキスが前を歩き、テテノとタリカが真ん中でティグラが一番後ろを歩き来た時と同じ道を歩き始めた。


 帰り道は大きな戦闘などは無かったが、いきの戦闘や死の沼で少量とは言え魔力を吸われたので少し疲労が溜まっていたので多めに休憩を取った。


 軽食を取り長めの休憩を取っていると昨日より少し仲良くなったタリカとテテノが話をしている。


「死の沼の泥で確か、魔抜きの灰を作るんですよね?何に使うんですか?」


 読んで字のごとく魔力を抜く灰なのだが、興味津々に聞いているタリカが分かる様に少し考えてからテテノは答える。


「冒険者さんとかが使う物だと属性剣とかの属性を変えたりする時に使います。付与された属性が抜けますからね。あとは……そうそう雷雲蜂の蜂蜜とかもそのまま食べると危ないので、灰の中に瓶ごと付けると一晩で電気が抜けるらしいですよ。超高級品なので私は食べた事ないですが……」


「へー色々と使える所が多いんですね。冒険者でも持ってた方がいいですか?」


「あれば良い事もあるかも知れませんが、他に代用が効く物も多いですしある程度量が無いとダメですからアイテムバッグがかさばりますからね」


 他愛もない話をしながら休憩と軽食を終え、もう一度気を引き締め出発した。


 そして太陽が沈んだ頃にようやくテテノ達は村に到着し宿へと戻った。


 宿に入ると丁度、女将がおりテテノ達が帰って来た事を喜んでくれた。


「どうだい?採取の方は上手くいったかい?」


「はい。おかげさまで無事に手に入りました」


「明日の朝には帰るんだろ?今晩が最後だからゆっくりしていきな」と言って女将は宿の奥へと入っていた。


 テテノが女将に頭を下げているとアスキスが皆に話しかける。


「とりあえず昨日と一緒でいいな。王都に戻るまでは護衛だからタリカはフェリテスさんと一緒にいてくれ。後は明日の朝までは自由行動で」


 タリカはあーはいはいと頷き。アスキスはティグラを連れて宿を出て行った。


「フェリテスさん、どうしますか?」


「そうですねー……お婆ちゃんに工房を任せているので、何かお土産でも買って帰ろうと思うので市場の方にいきませんか?」


「いいですね。陽は落ちてますがまだ明るいですから人もいますしね。行きましょう」


 そう言って二人は宿を出て村の大通りに出ている市場や露店などに向かった。


 目的の大通りに着くと、暗くなるには少し早い時間だったので市場はまだ賑わっていた。


 その市場の一画に魔物の素材や薬草などが売っている場所があった。


「やった!王都ではなかなか売ってない薬草が売ってる!しかもかなり安い!」


 露店の商品をみて目を輝かすテテノに店主が話しかけた。


「嬢ちゃん、よく知ってんな。商人に下ろすには数が少ないから、村人が使う薬草だな。幾ついるんだ?」


「その陽無しスミレは全部ください。後はそこの爆弾ホオズキと七色露草と……」


 少しテンションが高いテテノに店主は苦笑いをしながら商品を包んでいく。


「フェリテスさん今回の依頼で一番嬉しそうですね。そんなに安いんですか?」


「王都で陽無しスミレをかったら軽く倍はしますね。物が少ないのもありますけどね」


「商人は見落としていたんでしょうね。露店を見回ってたでしょうし」とタリカが言うと店主が店を出したのは日が沈んでからだなと言ったのでテテノが少し付け足した。


「陽無しスミレは直射日光に当たると枯れるので残っていたんだと思いますよ」


「そういうこった。嬢ちゃんいっぱい買ってくれてありがとうよ」


「いえ、私の方こそありがとうございます」と頭を下げてその場から離れ、他の店を見回った。


「さっきのスミレでどんな物が作れるんですか?」


「そうですねー。粉末にして元の薬にまぜると、洞窟とか日の当たらない場所で使うと効果が上がる薬ができますね。後は危ないですけどかかると陽が当たっただけで火傷する劇薬が作れたりですね」


「……フェリテスさんはもしかして毒大好きっ子ですか?」


「そんな事ないですよ!タリカさんに分かり易い様に例に出しただけですよ!」


「ほんとですか~?こう解毒魔法無効の毒とか作れそうですね」


「…………作れませんよ?」


 そう聞かれたテテノの表情が明らかにおかしかったのでタリカは作れるんだと呆れていた。


 そんな事を話しながら市場を回り、テテノは留守番をしてもらってる祖母にお酒とつまみを買い、タリカは冒険で使えそうな小物などや入浴剤を買っていた。


 市場を見終える頃には辺りも暗く鳴り始めたのでテテノ達は宿へと戻った。


 そして夕食を食べ、今日の疲れを取るようにお風呂に入り部屋に戻ると寝るには少し早い時間だったので、アイテムバッグの中から死の沼の事を書いたメモを取り出し見始めた。


 だがこれと言って新しい発見があるわけでもなく、タリカがお風呂から戻ってくる気配を感じたので心配をかけてはいけまいとまたメモをアイテムバッグの中にしまった。


 戻ったタリカと寝るまでの間少し話をし、明日は王都に帰る日なのでその日は速めに布団にはいる。


 テテノもタリカも自分が思っている以上に疲れていたようですぐに心地の良い睡魔が現れ身を委ねた。

次回の更新は明日の予定。



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