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第34話 聖女さまをお救いせよっ!!

 (まずは、御楯(みたて)を七人集めよ。話はそれからだ)

 リスが喋る。ううん。リスになった聖獣さまが話す。

 「聖獣さまって、セルヴェだったんですね……」

 その背中の黒い筋模様。フサッとした尻尾。どこからどう見ても、リスのセルヴェ。

 (お主の魔力が足りぬからな。長い時間元の姿でいるのは難しい)

 え? それってあたしのせいなの?

 「……すみません」

 (いや。責めているわけではない。魔力が足りぬのは、封印が施されているせいだ)

 「封印?」

 あたしには、まだ何かあるの?

 (女神の娘がそのまま地上に現れたら、なにかと不都合なことが多い。ゆえに、時が来るまで、女神によって姿と魔力が封じられておる)

 なるほど……って、姿と魔力?

 (お主本来の姿だ。母君である女神によく似ておるぞ)

 「そっ、そうなのっ?」

 思わず声が裏返る。なにそれ、未来に期待しちゃうんですけどっ?

 「だから、時を進める魔法が効きにくかったのか」

 レヴィル先生が、ボソリと呟いた。そっか。そういえばあたし、三年、時を進めてもあんまり変化しなかったんだっけ。それは、あたしの未来が残念だったわけじゃなくって、封印が存在したから、魔法がかかりにくくなっていただけなのね。

 あー、よかった。じゃあ、まだ未来に豊満な胸を期待することは出来るっと。よしよし。

それも、女神譲りの容姿だって言うし。期待大じゃない? それ。

 (話がそれたが、とにかくまずは御楯の一人、商いに通ずる者を連れてこねばならない)

 商い? それってライネルさんのことだよね。

 (かの者は、あの聖女とやらに一番通じている。力を取り戻させるのに、必要な存在だ)

 「じゃあ、ライネルさんに会いに行かないと」

 こんな荒唐無稽すぎる話、絶対驚くだろうけど、それもこれもミサキさまのためだ。ミサキさまを思って王都に来たって言ってた人だもん。ちゃんと説明すれば、協力してくれるに違いない。

 「ああ、リュリ、少し待ちなさい」

 ソワソワするあたしを先生が止める。

 「まさか、その格好で会いに行くつもりじゃないだろうな」

 え? 格好?

 ああああっ! あたしナイトウェアのままだった!

 かろうじてガウンは羽織っているけど、こんな格好で人に、それも男性に会いに行くなんて非常識すぎる。というか、今まで格好なんて気にする余裕なかったっ!

 意識しだしたら、急に恥ずかしくなって、ガウンの前をキュッと合わせる。

 「一度、着替えに屋敷に戻ったほうがよさそうだな」

 そうですね、先生。

 (なにか不都合があるのか?)

 人間の常識を理解してください、聖獣さま。


 レヴィル先生に伴われて、屋敷に戻る。

 辺りは真っ暗で、人通りも全くない。これなら、この格好でも目立たない、かな?

 そう思って、音を立てないようにそっと馬車から降りる。

 

 「リュリッ!」


 ぴゃあっ!

 だっ、誰っ?  思わず背筋が伸びる。背筋がピリピリしたぁっ!

 曲がり角のむこう、止められた馬車から駆け寄ってくる人の姿。

 「殿下っ? それにアウリウスさま、ルッカさまも!」

 駆け寄る三人と、少し遅れてもう一人。

 「オーウェンさま」

 「ご無事で何よりです」

 あ、はい。ありがとうございます。その静かな笑みに胸が跳ねましたが。

 「リュリ、すまなかった」

 「うわわっ、で、殿下、顔をお上げくださいっ!」

 殿下だけじゃない、あとのお二人まで頭を下げてくる。

 「きみをあんな目に遭わせるなんて。守るとか大層なことを言っておきながら、本当にすまなかった」

 「いいんですっ、殿下。事情は聖獣さまから伺いましたからっ!! 操られていたんですよねっ、だから、平気ですっ!」

 頼むから、頭、上げてよぉ。

 というか、ナイトウェアのまま、一国の王子殿下に頭を下げられるって、どういう状況よぉっ! 恥ずかしいのか、恐れ多いのか、自分でもわかんない。

 「リュリ……」

 ようやくこっちを見てくれた殿下が驚いたような声を上げた。

 「大丈夫ですよ。あれぐらいのことで、あたし、なんともありませんから。ほら、聖獣さまにも助けていただきましたし」

 皆さまの負い目を軽くして差し上げなきゃ。あたしを守れなかったという罪悪感は、どっかに捨ててくれるとありがたい。

 皆さま、本当に責任感の強いお方ばかりだから。

 「聖獣……」

 ルッカさまが辺りを見回す。

 馬車から降りてきたのは、あたしとレヴィル先生だけ。見回したって、それらしい人影は見当たらない。

 「……聖獣さまです」

 肩の上から、そっとセルヴェを下ろして差し出す。

 「えっ? リスッ?」

 (ただのリスではないぞ)

 ルッカさまの驚いた声に、聖獣さまが反応する。心なしか、エッヘンと胸を反らしているような……、でもリス。喋るリス。

 なんだかな。


 あたしが着替えている間、皆さまは、聖獣さまとともに、ライネルさんに事情を説明、協力を求めに出かけた。……ライネルさん、きっと驚くんだろうな。なんたって、王太子殿下にそのお付きの人たち、神官、学校の教師、そして、自称聖獣さまな喋るリスが「力を貸してくれ」だもんね。

 あたしが事情を説明に行ければよかったんだけど、皆さまから「リュリは休め!」と言われてしまったので動けなかった。ライネルさん、ゴメンナサイ。

 屋敷に残っていた使用人の皆さんは、夜着のまま帰ってきたあたしにかなり驚いていた。うん、まあそうなるよねって顔。こんな大変な時にどこに行ってたんだというお叱りと、急にいなくなって心配した、無事でよかったというお言葉と。ホント、お屋敷の人たちも、家族のようにあたしのことを思ってくれてるんだなって感じられて、少しうれしい。

 とりあえず、今は捕らわれたお嬢さまを取り戻すために動いているんだというふうに説明しておいた。ウソをつくのは心苦しかったけど、全部本当のことを話すことは出来ないから、心のなかで謝っておく。

 一人、自分の部屋に戻って、いつもの木綿の質素な藍色のドレスに着替える。

 髪も、いつも通りのまとめ髪。これ、意外と落ち着く。

 「……ふう」

 一通りの着替えが済むと、そのまま寝台に腰かける。

 お嬢さまの部屋は、今朝と違って、キチンと片づけられていた。屋敷の皆さまが直してくれたんだろう。

 だけど、直らないものもある。

 あたしの立場。周りの状況。


 ――あたしの母さんが女神ルビーニアで、聖女ミサキさまを暗黒竜の手からお救いしなくてはいけない。

 

 出来るの? あたしに。

 聖獣さまは、出来るとおっしゃるけど、あたしにそんな自信はない。女神の娘っていうのも、何かの間違いじゃないかって思う。

 というより、これは全部夢なんじゃないかって。目が覚めたら、部屋にお嬢さまがいらっしゃって、「おはよう、リュリ」っておっしゃって。いつものように、学園に向かわれるお嬢さまのつきそいをして、いっぱいお世話して。「美味しいわね、このお茶」なんて他愛のない会話を交わして。

 そういう日常のほうが、しっくりくる。


 「……痛い」


 いくら頬をつねっても、目が覚めることはなくって、これが現実なんだと、痛みがそう主張していた。


 第三十四話です。

 リュリの未来は期待大!? の回(違う)

 でもよかったね、リュリ。未来のキミは、ボン、キュッ、ボンッだ!!

 そして物語は妙なバトルモードへ。……最初、このお話をひらめいたときは、まったく考えてなかったよ、この展開。転生悪役令嬢の身代わりになった侍女がアタオタする話、程度にしか思ってなかったから。関わってくる相手も、ナディアードとアウリウスしかプロットに存在してない。あとミサキ。

 ・ゲーム世界らしい。

 ・お仕えする令嬢が悪役らしい。王宮に上がれば、断罪→処刑コンボ。

 ・で、お嬢は王子にも誰にもキョーミないから、代わって欲しいと。

 ……この程度のプロットしか書き込まれてないよ。(もちろん、これは初期の設定。このあと、イロイロと書き込まれてます)

 いつものことなんだけど、初期のヒラメキプロットって、とんでもなくペラペラ。次回作かもしんないヤツのプロットなんて、「自己評価低い系王子」としか書き込まれてない。他にも、「将軍のアレ」、「悪ノ娘」、「騎士と侍女」、「更科日記とレオポルト1世」、「退行魔法」。……もう少しストーリー性のあるプロットを書いておけや。(これではどんな話か、わからないだろうが)

 これからもよろしくお願いします。

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