覚醒
「おい」
俺は、低く冷めた声を出した。
「……」
エルフ族長は目線をこちらに向ける。
営業たるもの平常心を忘れるなかれ。俺は営業マンだ。どんな時でもその精神で戦う。
「すぅー……」
息を吸い込み、足を広げ腰を落とす。地獄の研修で鍛えられた力が今。活きる時が来た。
「時間稼ぎは任せなよ」
ダイが前に出る。その表情は、もう1落ちも許されないドラゴンガンダムのようだった。
「う……うがあ!」
「なっ!」
瀕死状態のオーク長が決死の一撃! オークキングの斧をぶん投げた!
エルフ族長の杖にヒビが入る!
「っぷはぁ! やっと喋れるようになったわね」
「デバイス再起動」
刀ちゃんとダイのマキナが目覚める。
「遅いわよ」
「目標確認」
悪態をつく刀ちゃん。可愛い。
俺は刀ちゃんを腰に据え、居合の構えをとる。
「いくぞ……! 社訓唱和あああああ!!」
『社訓唱和により 力と素早さのステータスが上昇します。』
「はああああああああ!! まだまだあああああ!」
社訓を唱和し続ける俺。ステータスは上昇し続ける。
「うるさいわね!!」
「あんたの相手は俺だぜ」
ダイがマキナを構える。エルフ族長はダイに向かって杖を振りかざす!
「邪魔よ!」
「遅いなあ」
「なっ」
ダイはエルフ族長の魔法を避ける。彼の空間把握能力は卓越している。
そして、マキナの形が変化する。
その形はまさにドラゴン。龍であった。
「ドラゴンファイヤアアアア!!」
「きゃああ!」
ドラゴンの口から炎が噴き出す。
「っく! な!」
「後ろに下がっちゃったかぁ。残念、そこにはフラッグを置いといたんだぁ」
痺れるエルフ族長。もう十分時間は稼いだ。
「あとは任せたよ兄貴ィ!」
「おう!!」
「はあああああああああああ!」
社訓唱和もループし続け、限界値まで達した。そのオーラで全身が黄金に輝き、髪が逆立っている。
今こそ俺は、スーパー営業マンだ!!
「いくぞおおおおおおおおおおおおお!!」
かつての同僚を思い出す。彼はこれを伝えたかったに違いない。やっと今、わかったよ……!!
「切り裂けえええええええ!!」
「きゃあああああ!!」
一閃。この世のすべてを切り裂いた男。そう、名を馳せることになった戦いだった。
完