親衛隊長
「このオーク風情が……恥を知りなさい!」
甲高い声が耳を打つ。エルフ族長だ。
「牢屋から逃げ出して、また現れるとはね……あなたもここで殺すわ。親衛隊長!」
「はっ!」
親衛隊を引き連れ、親衛隊長が前に出る。
「ダイ、あの剣には注意してくれ」
「わかった」
親衛隊長が持つ剣には風が纏っている。素早さが上がっているのだろう。親衛隊長の頭上に Lv 11 と表示されている。
こちらは
俺:Lv 5 ダイ:Lv 8
オーク長:Lv 9 オークキング:Lv 12 だ。オークの力で勝つ!
「そこっ!」
「なっ!」
親衛隊長の剣がきらめく。ユウに18のダメージ! ダイに20のダメージ!
「まてまてまて!」
「2回行動……だと」
こんな序盤から2回行動の敵が現れてたまるか! ゲームバランスおかしいだろ!
こっちのHPは ユウ:HP 37/55 ダイ:HP 30/50。 狙われたら終わる……。こういう敵相手は、攻撃がばらけることを祈ってゲームやってたけど、ちょっときつすぎないか!?
「うがあ!」
「ふん!」
そうだ、こっちにはオーク長とオークキングがいるんだ! やっちまってください!
「当たらぬ」
オーク長とオークキングの攻撃は親衛隊長に届かない! 周りの親衛隊に40のダメージ! 親衛隊は倒れた!
予期せず周りの親衛隊にぶつかり、親衛隊長のみとなったが、これは……。
「はぁぁ……!」
親衛隊長が構える。大技がくる。そう感じた。まずい!
「風天乱舞!」
「ひいい!」
「うがあ!」
回転しながら親衛隊長が斬りつけてくる! オーク長がみんなをかばう!
オーク長に攻撃が集中! 25のダメージ! 25のダメージ! 25のダメージ! 25のダメージ!
「オーク長!!」
「う、が」
オーク長が片膝をつく。HP は……。HP 20/120 。
「ダイ!」
「任せろぉ!」
ダイが小火球を飛ばす! ミス! 親衛隊長には当たらない!
「そんな攻撃、遅すぎるわぁ!」
「そいつはおとりさ!」
「なっ!」
ユウは親衛隊長の後ろから斬りつけた! 雷鳴斬り! しかし当たらない!
「ふん、気づいてから間に合う遅さだ! ははは!」
俺の雷鳴斬りを躱し、高笑いする親衛隊長。だが、甘かったな。俺たちの勝ちだ。そこには……。
「うがああああああああああ!!」
「なっ……!」
オークキングの気合の一撃! 大きな斧を一閃!
親衛隊長に100のダメージ! 親衛隊長は倒れた!
「な、何とかなったな……」
「ああ」
ダイと肩で息をする。あえてミスを連発し、キングの前に誘導するしかなかった。まさに、賭けだった……。親衛隊長一人にここまで苦労させられるとは。あとは族長だけか、そういえば族長はどこへ……。
「ああ、つまらない、つまらないわ」
頭上から声がする。上を見上げると。
「所詮、オークよねえ」
そういって、空中に浮かび目に見えないイスに座っているかのように足を組み、こちらを見下すエルフ族長がいた。頭上のLv は 13。
「さ、もう飽きたわ」
エルフ族長は大きな宝玉のついた杖を振るう。
「うがああ!!」
「うぐ!」
エルフ族長の攻撃! 封印の杖! オークキングは動けない!
「こ、このエルフ……!」
「オークキング!」
ダイが叫ぶ。オークキングは床に縛り付けられている。
「さて、どうしてやろうかしら」
「うぐぐ」
「そうねえ……とりあえず石にでもなっててもらおうかしら。あとでゆっくり殺してやるわ」
エルフ族長が呪文を唱える。 オークキングは石になってしまった!
「ああ。もう面倒ねえ。あとは人間だけね」
「くそっ!」
どうする。頼みのオークキングは石化してしまった。
オーク長は瀕死状態で、もはや動けない。
あとは俺とダイだけで、こいつに勝つ……? どうやって……?
「さ、おしまいにしましょう」
エルフ族長の派手な服装飾が炎で赤く輝いていた。