燃える里
「にしても悪質だなぁ……」
「戦いは非常なり」
1週間後。もうすぐ出陣という時に、ダイから聞いたのだが、オークの数をだますために「オークはエルフを誘拐し、エルフたちにオークの子を産ませ、戦力を増やしている」という情報をエルフの里に流していたらしい。丁度、俺が酒場でダイと会ったあの日、そのために近くに来ていたそうだ。
「恐怖感も与えられて戦いやすいだろ?」
にやりと笑うダイ。まあ、確かにエルフとオークと聞けば、そういう想像も難くない。実際そういうゲームも見たことがある。エルフからしたら恐怖しかない。
「ちなみにオーク長、どうなんです?」
「うがあ!」
オーク長は否定的だ。実は心優しい種族なのかもしれない。偏見はダメ。1週間の間、オーク長に戦い方を指南してもらったこともあり、オーク長には感謝している。
「なあ、本当にやるのか?」
「おうともさ」
ダイに問う。異世界へきて、あれよあれよとここまで来てしまったが、命を懸ける必要などあるのかと。
「俺は今猛烈に楽しい! だからよし!」
ダイは目を輝かせながら言った。そうか、なら何も言うまい。ダイはそういう男だ。
「そういうユウはどうなんだよ」
「っふ、俺はなぁ。あの美女だけど傲慢なエルフ族長を地につけてごめんなさいと泣いてる姿も見てみたいのもあるけどとにかく謝罪の言葉を言わせないと気が済まないんだ!!!!」
「そうか」
「変態ね」
冷静にダイに返され、久々に刀ちゃんから罵倒される。刀ちゃんはどうやら、オークとあまり関わりたくないらしく黙っているそう。って俺勇者として世界を救うんだよな? オークと共にエルフを倒していいんだろうか。まあ……いいか。
「いよいよだなぁ……!」
オークキングが出てくる。オークの決戦ともいうべき戦いだ。皆、オークキングの言葉を待っている。
「おまえらぁ! やることは単純だ! エルフ共を叩きのめせ!」
「うがあああああああ!!」
オークの雄叫びが響き渡った。
★
「っく! なんなんだ一体!」
「3方向よりオーク接近! 火の手が回ってきます! すぐに消化と迎撃を!」
「熱いいいいい」
エルフの悲鳴がそこかしこで上がる。作戦は順調のようだ。
「オークキング、いけるか?」
「おぉう!!」
オークキングの背中に、俺とダイがつかまっている。オーク長は後ろについている。
「振り落とされんなよぉ!!」
燃え盛るエルフの里。その中央の神聖なる木に向かって、突き進む!
雑魚は無視。エルフにこのオークキングの突進を止めることはできない。そのまま神聖なる木の入り口の木の扉まで突破した。
「あっという間だったな」
「流石オークキング……」
「おぉぉおおう!」
目的地まであと一歩というところで、エルフが集まってくる。
「せあああ!!」
「小火球!」
オーク長に戦闘を教えてもらったことで、俺のLv は 5 になっていた。レベルが上がり スキルも新しく覚えていた。
「雷鳴斬り!」
「ぐはっ!」
≪雷鳴斬り≫ 稲妻の力を纏い、相手を斬りつける。たまに麻痺状態にすることがある。
このスキルは相手を痺れさせ素早さも下げる。エルフ相手にはうってつけだ。
「うがあ!」
オーク長が残りを片付ける。ちなみにオーク長は武器を使わない。己の肉体で戦うファイターだ。
「さあぁ! いくぞぉ!」
斬られたらひとたまりもない大きさの斧を持つオークキングが叫ぶ。
俺たちは扉を開き、族長のいる間へと向かった。