仲間と酒場
「ユウ!」
はずれにある暗い店内の酒場に入るなり、声をかけられる。聞きなれた声だ。「あんたユウって名前だったのね」と刀ちゃんが言うのに返事をしながら、声のする方向へ向かう。
「ダイ! 会えてよかった!」
「ああ、本当にな」
ダイは魔法使いが身に着けているようなローブを着て、妙にメカメカしい杖を持っていた。
「なんとか牢屋から出れたぜまったく……」
「おつかれ。抜け道あったか?」
「なかった」
「そんな時もある。まあ一杯飲もうぜ。マスター」
ダイの隣のカウンター席に座る。マスターがドリンクを出してくれる。薄い青の飲み物だ。飲んでみるとさわやかな味が口に広がった。
「さて、話したいことが沢山あるんだ」
「俺もだ」
「まずダイはどうしてここにいるんだ?」
「こっちも聞きたい」
俺はまず刀ちゃんに連れてこられた事を話し、ここまでの経緯を語った。ダイも、その魔法というよりは科学の結晶のような杖に連れてこられたと言った。その杖をマキナと呼んでいるそうだ。
「実家に向かう途中でな。ちょうど県境のあたりで目の前が真っ白になってさ」
ダイも真っ白空間を経て、こちらに来たようだ。ダイはIT会社だったか。色々大変な話を聞く。ヨシもIT会社だが、また色々と分野が違うらしい。
「まるでゲームみたいだよな」
「それよ」
「ステータスやら敵やら……楽しくなってきた」
ダイは笑顔を浮かべていた。ゲームが好きなのだ。彼のゲームの上手さがこの世界でも活きるだろう。
現段階で分かっている知識を共有した。ダイによると、この世界にもダメージ計算や属性相性といったものがあるらしい。ちなみにダイはLv 5 だ。ステータスを見せてもらった。HP 40 MP 60 。魔法使い寄りのステータスみたいだ。力やHPも低いというほどでもないが。
スキルは 脳死付与 と 小火球。脳死付与は味方に脳死を付与する魔法。小火球は下位火炎魔法らしい。
「そろそろ時間です」
女性の無機質な声が聞こえる。発信源はダイの持つマキナからだ。
「その杖も喋るのか」
「ああ、最初会った時はどうかしたのかと思ったぜ」
「だよなあ」
「ちょっと、どういう意味よ」
刀ちゃんが反応する。マキナに比べて刀ちゃんは感情豊かなのだろう。一方マキナは冷静なタイプと見た。営業マンの目が光る。
「おてんばっぽい刀だな……。んじゃ早速だが、俺がやっかいになってるとこがある。そこに来てくれないか?」
「わかった」
ダイと共に酒場を後にした。