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勇者の一歩  作者: 勇者
3/10

エルフの里

 「ここは……」


痛みと共に目が覚めた。エルフはどうなっただろうか。そしてここはどこだろうか。


 「私の家です」


天から透き通った声。頭の下には柔らかい感触。そうか、俺はエルフちゃんに膝枕をされているのかって。


 「ななななんだってー!」

 「うるさい」


鋭いツッコミが飛んでくる。あ、喋る刀さん。


 「ようやく目が覚めたみたいね」

 「ふふふ」


エルフちゃんが笑う。なんというスマイル。好き。


 「大事なさそうで良かったです」

 「素敵な感触をありがとう!」


営業たるもの感謝を常に示すべし。ありがとう。ありがとう。


 「さ、そしたら色々と説明しようかしら」


喋る刀さんが言う。そうだ、オークの件で全くわからない状況だった。


 「まず、あんたは勇者で世界を救う……ってのは教えたわね」

 「そういやそうだった……」

 「具体的には魔王を倒す」

 「はい」

 「以上よ」


またしても簡潔だった。魔王って、RPGに出てくるような魔王なんだろうか。できるのか俺に。


 「だからオークなんかで手間取ってもらっちゃ困るのよ」


刀さんはため息をつく。そんなこと言われましても、あの筋肉には勝てないのでは……。


 「ステータスを見てみなさい」


ステータスとな。どう見るのか。あ、見たいと思ったら勝手に目の前に現れるのか。


 勇者:Lv 1  HP 30 MP 30 ・・・


レベルなどの他に力や素早さといったよく見るパラメータが並んでいる。他にはスキルの欄があるな。


 スキル: 脳死 消費 MP 8 狂戦士状態になる 敵味方関係なく攻撃し自律戦闘に入る


これか……。どうやら、これを使ってあの場を退けたらしい。刀ちゃんが教えてくれた。


 「俺、弱くない?」

 「弱いわ」


遠慮なく言う刀ちゃん。クールだぜ。しかし不屈の心を持った営業マンの俺には効かないぜ。


 「オークのレベルは 6 よ」

 「5レベル差か……」

 「そうね。HP 100 程度かしら」

 「3桁かよ!」

 「あんたが弱すぎるのよ」


衝撃だった。勝てるはずがない。よくもまあ逃げられたものだ。しかし、RPGと言えばレベルが上がれば俺だって最強ウハウハ勇者になれるはずだ。


 「レベルがあがればスキルも増えるわ。頑張りなさい」

 「はい」


素直に返事をする。営業たるもの素直さが大事だ。


 「あのぅ」


エルフちゃんが困り顔で見てくる。天使よ、どうされたのです。そんな美しい瞳で、見つめられると照れます。


 「そろそろどいて頂けると……」


はっとした。ずっと膝枕モードだったのだ。「失礼致しました」と身を起こす。


 「勇者さん、ありがとうございました」

 「いえ、当然のことをしたまでです」


決まった。かっこいい俺。昔、ヒーローになることを憧れていた時期がある。今まさに俺輝いてる!?


 「Lv 1 だけどね」

 「いうな」


刀ちゃんが付け足す。そう、そこがネックですよ……。



身を起こしてエルフちゃんを見つめる。ふむ。大体想像通りの容姿をしている。長い耳、綺麗な金髪。セクシーなプロポーション。エルフにしては少し幼いのか、そこまで高身長ではない。


 「あの勇者さん」

 「なんでしょう」

 「お会いしていただきたい方がいらっしゃるんですが」

 「行きましょう」


即答だった。エルフの里にいてじっとなんてしていられない。刀ちゃんをもって、エルフちゃんと共に外に出た。



★ ★ ★


 「ここがエルフの里……」


中央にそびえる大きな木。神聖な雰囲気がある。ここはその周りにできた集落といったような場所みたいだ。


 「エルフがちらほらいるわね」

 「エルフの里ですから」


刀ちゃんとエルフちゃんが話している。俺はその間、少し考えていた。


ここは異世界。現実ではないが、出血もしたし痛みもある。ゲームの世界のようだが、詳細は不明。現時点でわかっているのは、俺は勇者で弱い。魔王を倒すのが目標。現在はエルフの里にいて、これから旅をするはめになるのだろうか。会社のことはどうしようか。時間の流れはどうなっているのか。1日休むと、ノルマがたまっていくんだが……。


 「ここです」


エルフちゃんに案内され、中心の天高く貫く木へと到着した。そこで、エルフちゃんが手をかざすと木の扉が現れた。


 「おお……」


思わず驚きの声をあげる。中に入り、エルフちゃんが何かを唱えると、エレベーターのように上昇した。


 「ここから先は、族長の前になりますので失礼のないようにお願いします」

 「わかった」


エルフの族長か。ヒゲもじゃもじゃな杖ついた老人エルフがでてくるんだろうか。そんなことを思いつつ、扉を開けた。


★ ★ ★


 「あなたね。わたくしの仲間を助けてくれたのは」


美女。美女だった。しわしわの老人ではなかった。輝く宝石のようなものが多数装飾された服を身にまとい、魔法の杖のようなものをもち、足を組んでイスに座っている。


 「感謝するわ。今、エルフの里はオークに襲撃を受けて困っているのよ」

 「それは大変ですね」

 「そうなのよ。で、私たちは仲間以外のものを信用していないのよ」

 「そう……なんですか」

 「ええ。だから、ね?」

 「えっ」


族長の傍らにいる親衛隊長のような騎士が前に躍り出る。


 親衛隊長 Lv 11


目の前に表示されるレベル。なぜだ。なぜ戦闘になっている。


 「ま、待ってください!」

 「待たぬ」


親衛隊長が切り込んでくる。速い。一発でも当たったら終わる気しかしない。これは負けイベントなんだろうか。死んだらどうなるのか。そうだ連れてきたエルフちゃんはどこへ! いないぞ!


 「刀ちゃん、どうしよう!」

 「……」


刀ちゃんはだんまりを決め込んでいる。どうしたのだろうか。ええい、やるしかない。そう思い、構えをとろうとした。


 「遅い」

 「なっ」


圧倒的能力差で、勝負は決したのだった。


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