探偵会議
「探偵会議を始めようか」
そう言って冴島は、今回の依頼について話す。
「この依頼は、簡単に言えばただの"迷子探し"だ」
「迷子探し……ですか」
滝人が聞き返す。
「そうだ。手紙を見ればわかるが、どうも娘さんが出ていったままらしい」
「で、捜索対象者の名前は」
「差出人の名前もわからないんだ。わかるわけないだろ」
「まあ、そうよね」
どうやら花笠ももわからない事を承知で聞いてきたようだった。
「確かに、差出人も捜索対象者もわからない。しかし、だ」
冴島はそこで言葉を切り、手紙の裏をみせる。そこには目立つ大文字で、大きく[A]と書かれていた。
「なによ、それ」
「ここで出てくるのが、この一枚の写真だ。この写真の右側の電柱、その上の方を見てくれ」
「そんなとこになにが……、あっ」
「Aの文字、……なるほど」
「確かこの手紙ってX市内の警察署から回されたんですよね」
そう、この依頼は依頼書を書いた本人から直接届いたわけではない。X署で少しの調査をして、ここ冴島探偵事務所に回されたのだ。
「面倒な依頼を回されたもんだよ、本当に」
本来ならこの事務所に通さなくても署内で事をすませられるのだが、依頼の時期が悪かった。
というのも、今、X署では警視庁が関わるレベルでここ数ヶ月の間起こり続けているY区内大規模連続殺人事件の対策に追われているからであった。
この写真はそのX署で少ない時間の中、調査をして得られた少ない証拠だった。
「この写真はちょうど一週間前、つまり最近の殺人事件の5人目、桑田 清次が発見された日にその付近で撮った写真だそうだ」
「で、その撮られた写真を入れてこのショボい事務所に届けられた、と言うわけか」
「ショボいは一言余計だが、そう言うことだ」
「ようするに、その写真の子を探せばいいんですよね。」
「なんだ、なら簡単だねー」
「どうするの。すぐに出る?」
「いや、その前に……」
と冴島が言った時だった。中谷の腹が飯時を告げた。
その様子に冴島はフッと頬を緩ませると
「飯にしよう」
そう言ったのだった。