駆け抜ける閃き
長らくお待たせして申し訳ありませんでした!
何かと忙しかったのに加え、空き時間も、手術前の検査に時間を費やしていたため、執筆時間がなかなか取れませんでした。その報告をしていなかったことについても、この場を借りて謝罪いたします。
今後については、来週に予定を活動報告に上げますのでそちらをご覧ください。
結果から言えばエインのかいしんの会心の一撃はお父さんには通らなかった。
だけど、なぜ通らなかったのは僕にもわからない。お父さんの口が少し動いていたのは見えたけど、それだけで、そのすぐ後に起きた爆発で二人が見えなくなって、そこに立っていたのは、お父さんだけだった。
エインはその隣に倒れていた。どうやら気を失ったようだった。
「何をしたの?」
たまらず僕は疑問をぶつけた。
「俺の切り札みたいなもんさ。これを俺に切らせただけ、こいつはよくやったと思うよ。」
そう言って、エインを家のベッドへと引きずっていった。そこは普通に運んでやればいいのに...。
しばらくすると、お父さんが僕のもとへきて、こういった。
「さあ、次はお前の番だ。準備は当然できてるよな?」
「もちろん。」
「さあ、位置につけ。すまない、ポレット。万が一のために見ておいてくれ。」
「わかりましたよ、ただ、やりすぎはだめよ?」
「わかってらあ。やるぞ、レイ!」
「うん!」
僕は、愛刀の[氷神]を構えて返事を返す。
『メディ、やるよ、最初っから本気で行くから。』
『任せなさい、同一化と鬼人化で一気に決めるわよ!』
「了解!!」
僕はその言葉を聞いて飛び出す。僕駆けながら[鬼人化]の詠唱を、メディは同一化のコントロールを行う。
「神よっ!我は願う、祈りの対価に、っ!」
「そんな悠々とはさせるわけねえだろ!おらっ!」
重撃を軸に、堅実かつ豪快に大剣をふるうお父さん。まともに打ち合うのも分が悪いし、下手に受け流そうものなら、即座に、大剣以外の何かの手痛い一撃が飛んでくるはず。
「今は滅びし、古の一族っ!我の鬼人の血と魂を、っく、はっ!呼び起せ、大巫術[鬼人化]!」
「おまけよ![精霊同一化]!」
僕を中心に氷の竜巻が巻き起こり、お父さんをも退ける。
『鬼人化は久しぶりなんだから、力の使い方、間違えないでねっ!』
「もちろん、氷柱展開!継続発射!」
力に振り回されないように丁寧に刀を振るう。これでやっとお父さんと打ち合える。でも、これだけじゃあ足りない。常に氷柱で狙い続け優位な状況を作り、それを渡さないようにする。
「少しはやるようになったじゃねえか!俺もギアを上げるぞ!破壊[一ノ鎖]!」
お父さんから感じられる気力が跳ね上がったのを感じた。僕も身体強化のために気力を費やして対応する。
第一撃の振り下ろしを後ろに下がりながら受ける。正直まともに受けれる自信はないので、可能な限り威力は減らしたい。反撃の切り上げは横から振られた大剣で失せがれるどころか、刀が飛んで行ってしまうところだった。しかし、手放さないがために、体制を大きく崩してしまう。
「隙あり!」
飛んでくる[重撃]仕方なく、[防壁]を展開。何とかしのぐ。だけど、結界を使えば鬼人化と同一化をしていられる時間が減ってしまう。維持に使う神気が減るからだ。
「ほんと厄介だなそれ!」
「それが強みだしね、[疾風一閃]!」
「おっと、食らわねえよっと。」
僕の一撃は僕難なくしのがれ、はねのけられる。一撃の重さが足りないのを自覚する。
「まだまだ![刹那一閃]!」
「一辺倒はよくねえな![気力爆発]!」
この一撃は囮だ。向こうもそれをわかっているはず、だから、もう一つ囮を仕掛ける。
刹那のうちに刀と大剣がぶつかり合い、気力の爆発で僕は吹き飛ぶ。ここまでは予想通り。
「凍りなさい![凍結結界]!」
メディが現れ、大剣を封じに行く。そのまま大剣を持っていれば、お父さんも凍り付く。
たまらず大剣を投げつけるお父さん。そして、メディの懐に飛び込んだ。
「かかった![氷獄]!」
魔力の塊が立ち上り、お父さんを包み込み瞬時に凍らせる。
「しゃらくせえ!破壊[二ノ鎖]」
閃光、そして飛ぶ、光の塊。
「きゃあああ!」
それをまともに食らったメディが吹き飛ぶ。だけど、気にしてはいられない。
「結構思い切りぶつけたのに、転移しないとは、相当上位の精霊か。」
「自慢の相棒だよ!はあ!」
一気に近づき斬りかかる。
「甘い!」
僕に向けられたのは、二つの筒。お父さんの腕に引っ付いていた。
閃光。訳が分からないまま僕の体は吹き飛んだ。
「氷柱展開、一斉発射!」
苦し紛れの一撃。とにかく時間を稼ぐ、僕が起き上がるまでの時間を。
閃光。惜しげもなく[偽完全盾]を展開し防ぐ。距離をとってようやく理解できた閃光の正体は、まるで銃弾のようだった。ただ、本来のそれより速く、ありえないほどに破壊力がある。
「頼んだケリー。」
「お任せを~。[常闇空間]~」
あたりが漆黒に覆われる。ここでは、光は存在できない。
「精霊ってのはなア、権力だ。より強い奴の権力にはあらがえねえ。覚えとけ。」
空間が壊され、光が戻る。
そして飛来する閃光。吹き飛ぶ体。痛みは感じても、ぐっとこらえる。
『メディ、いける?』
『もう大丈夫よ。道は私に任せなさいっ!』
その声を信じて駆ける。
閃光。目の前で氷の壁が出来上がって砕けた。
閃光。目の前で氷柱が大量に飛来して砕けた。
光線。
「[アンダンテ]!」
世界が止まって見える。目の前に現れたそれを何も考えず斬る。
「なっ!?あれをどうやって?」
動揺するお父さん。気にせず居合の構え。
「居合[光速一閃]」
描くのは似たような閃光。刹那すら存在せず、光が翔ける世界。
「っ!破壊[三ノ鎖]」
刀が切り裂いたのは、一降りの大剣。と思われたが、斬られたそれは二つになって再生した。
「油田大敵ってな!」
左右から振るわれる二対の大剣。[防壁]で防ぐ。結界にぶつかった大剣は砕け散り、それぞれがまた分裂する。計四つだ。
「まだまだ!はああ!」
大剣を握らせる前に刀を振るう。が、宙を舞っていた大剣はまるで意思を持つかのようにこちらに飛んできて僕の一撃を受け止め砕け散り、二つになって再生する。
「さあ、さあ!増え続けるこいつを前にお前はどうする?」
「[凍結結界]」
壊せないなら凍らせるまで、次々と大剣を凍らせる。
「それに注意をとられすぎたな、[陽炎]!」
揺らめく炎が見えた気がして、反射的に刀を振るう。しかし、それは実態を持たず、当たらなかった。
「[偽完全盾]」
刀での防御は無理だと考えて結界を展開する。
「そいつは完全無欠じゃねえ。穴はあるのさ。」
閃光。それがこの戦いの最後の記憶だ。