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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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無責任

二連続投稿なので間違って話を飛ばしていないか確認をお願いします。

すぐさまその場から立ち去った僕は、先ほどの基地へと戻った。メディが言うには、しばらくフェーノラースはまともな力を使えず、僕を探知することもできないので、安心していいといわれているのでその言葉を信じて、待ち合わせ場所へと向かった。


「遅いぞ、レイ。どこ行ってたんだよ。」


エインが眉をひそめながら、言ってくる。先ほどのことを言うべきかを少し考えた結果、エインたちを巻き込みたくはなかったので、今は黙っておくことにした。


「フーラ~!、マナ~!レイが帰ってきたぞ~!」


その言葉への返答はなかったが、代わりに、足音が近づいてくるのが聞こえた。


「あ、ほんとだ。どこ行ってたの?」


マナが不思議そうに首をかしげる。フーラは何も言わず、じーっと僕を見つめ続けてくる。


「えっと、フーラ?僕なんかしたっけ?」


フーラが少し怒気をはらんでいることに気づいた僕は、不安になって何故かを聞いた。不用意に出歩いたからかな?


「...。ちょっとこっちに来て。エインたちはここに居てて。」


僕たち三人は顔を見合わせ、マナとエインが、顔で何かしたかを聞いてくる。僕は顔を横に振って否定の意思を表す。本当に何かしたっけ?隠密空間が展開されていたのは確かなはず。


僕は、奥の部屋へ行く廊下を通って、速足であるくフーラを追いかける。その足は心なしか怒気をはらんで、どんどんと音を立てる魔物のように見えた。そうやって委縮しながら追いかけるうちに、小部屋にたどり着いた。


フーラはその部屋の丸椅子に、僕はフーラが座っている丸椅子を机を挟んで対照的な位置にある背もたれがある椅子に座る。


「ええと、僕何かしたっけ?」


改めて問う。ここまでくるとさっきの件かなと思い始めてきた。


「心当たり...あるんでしょ?」


しらを切ることを決意した僕は思い切りとぼけることにした。


「心当たりって言われても、僕はここに来たばっかだよ?」


「そうじゃない、私たちが来るまでの間、何してた?」


もうばれてるかなと思いつつも、ごまかすことを僕は選んだ。


「え?刀の様子がおかしかったから、武器屋に行ってきただけだよ。」


「ふ~ん。」


誤魔化せたかな?でも、まだ疑ているようにも見える。


「じゃあ、どうして、靴が濡れているの?」


「え?」


僕は靴を確認する。確かに少し濡れていた。足には特に感じなかったから、大したほどではなさそうだけど。おそらく、いくら僕が身に着けているからといっても、どこかが凍ってしまうことはあるのかもしれない。メディにほぼ無差別に凍らすように頼んだからか...。


「今日は雨じゃないし、ここ最近は、一度も降っていない。ここから最寄りの武器屋でぬれるような要素は ほとんどない。...それに、さっき、メディの気配を感じた。」


「っ!?」


ばれていたのか、だけど、表情には出さないように努める。


「気配ぐらいならあり得るんじゃないか?」


「...。まだとぼけるつもりなの?...仲間なのに。」


最後の言葉に胸をえぐられた僕は、話すべきか否かを再び迷うことになった。そんな僕の様子を見てか、フーラがふたたび口を開く。


「別に責めているわけじゃないの。私はあなたをもう失いたくはないの。それは、私たちみんなの思い。」


そうきっぱりといったフーラはとても凛としていた。そんな彼女に僕は折れることにした。


「...。さっき勇者たちに会ったんだ。」


「そっか。ごめん、私もそのことは知っているの。」


「え?」


まさかの一言に今度は表情を隠さずに驚く。


「私ね、フーラと仮契約をしているの。だから、さっきのことはメディから聞いた。」


メディに聞きたいことがたくさんできたな。


「仮契約って?」


「両方が合意の上で、力の末端の末端を精霊から借りる契約のこと。念話もできなくはない。」


「いつの間にそんな仲良く...。」


「喧嘩するほど仲がいい?」


「どうして疑問形...。って喧嘩は一度しかしてないでしょ。」


「とにかく、仲間なんだから、私たちも頼って。...お願い。」


切実に訴える彼女を前にそれを断ることは僕にはできなかった。むしろ、そんな彼女を守ってやりたいとも思った。ただ、守るのは当たり前じゃないかと自分で自分に疑問を抱いたけど、何かがわかったような気がした。


あの時のアイが放ったことば。


「己が正義を貫き通せ、か。」


「なんか言った?」


フーラが首をかしげる、そんな小動物のような彼女の行動に、ぎゅっと抱きしめたくなったが仲間を多やれるときに頼らない、無責任な僕にはそんな資格はない。


だけど、無責任だとしても、誰かを守ることぐらいはできるはずだ。お母さんのように全員守ることはできなくても大切な人たちを守ることができる、そんな力は僕にだってある。()()()()()()()が。


僕だけの、結界。完全な(イージス)ではなく、不完全でも、自らを犠牲にしたとしても、己が力尽きるまでは守り続けられる結界。


「いいや、何もいってないよ。それと、ありがとう。こんな無責に「だから!」わっ。」


僕の言葉にかぶせてきたフーラに驚く。


「そういうところ。いくら守りの力があるといっても、それは万能じゃないでしょう?」


「まあね。」


「万能じゃなくても、仲間がいれば補えるの。だから、無責任でも、私たちの仲間なんだから、自信を   もって。」


「わかったよ。」


「ふふ。」


フーラが浮かべた自然な笑み。前は見られなかったその笑みはおそらく初めてかもしれない。
















のはずなのに、どうしてこんなにも胸が痛むのだろう。
















リビングへと戻った僕たちはエインたちにも、さっきの出来事を話した。

当然、二人にも怒られたが、そのあとは笑って許してくれた。エインは、俺達で倒してやろうと息巻いていたし、マナは自分の魔法がどれほど勇者たちに通用するのかを楽しみにしだした。そんな二人にフーラの一喝が飛んだという話はさておき。僕たちはそれをグラン先生に相談することにした。


そこでまた僕はグラン先生に叱られたが、そのあとは、どうするかを案を出し合い、勇者たちは実質的な乱入になるので、一応学校長もとい、ミルさんにも話を聞くことにした。


「へぇ、それで私のところに来たのね。」


この時点で僕は怒られることを覚悟していたのだが、そんなことはなかった。


「怒ろうと思ったけど、二回も言われれば、さすがに懲りるでしょうしそれはまたの機会にしますか。」


その言葉に僕は内心息を吐く。自業自得だとわかっていても、怒られるってつらい。


「で、その話だけど、さっき勇者たちから話が来たの。トーナメントの優勝者と戦わせてくれっていう話が ね。急なことだからちょっと怪しいなと思ったけれど、そんな裏があったのね。」


「はい。」


「その話は許可したんだけど、負けられないとなれば話は別かしら、レイはともかく、ほか三人は戦力的に 勇者たちに劣っているわけだし、一対一ができるのも難しいわね。」


「じゃあ、どうすればいいの?ミル。」


フーラが問う。


「私が稽古をつけてあげる。私はフーラと、マナ。エインにはレイのお父さんにでも頼むしかないわね。」


「あと一か月しかありませんが大丈夫なのですか?」


グラン先生が不安げに聞く。


「大丈夫どうこうじゃないわ。やるしかないの。どうして、うちの生徒が何の理由もなく殺されなきゃなら ないのよ。たとえできなくても抗うのよ。」


その言葉に、少し目頭が熱くなるのを感じた僕は下を向く。


「とりあえず今日はゆっくり休みなさい。明日からあんたたち四人は特別カリキュラムを組むから。」


「「「「はい!」」」」


僕たち四人はそう声をそろえて答えた。




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