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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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宣戦布告

先週の予約投稿が予約できていなかったことに、金曜日に気づき、投稿するか迷いましたが、日曜日にまとめて投稿しました。

海翔たちがレイを見つける頃。


「あ~やっぱり待ちきれないし、、暇!」


メディには帰ってもらったけど、居てもらえばよかった。


暇をつぶすために少し外に出る。秘密基地を出てすぐ近くにあった少しぼろいベンチに腰掛ける。


「あ~。」


路地を通り抜けてくる風が少し心地よい。全身をベンチに預け脱力する。頭が上を向き、青空が見える。

穏やかに雲は流れ、時間もゆっくりと流れる。喧騒から離れたこういう場所も悪くないな。強いて言えば、

もう少し、きれいにしたい。


「ん~、よっと。」


脱力させていた体に力を入れて、背もたれから体を離す。そして、大きく伸びをする。


「そろそろ戻ろうかな...。ん?」


誰かに見られているような感覚。さらに言えば、誰かに自分をのぞき込まれているような感覚を覚えた。


「誰かいるのかな?」


警戒心を引き上げ、動かずに、周囲の気配を探る。数人の気配が離れていくのを感じた。

僕はなるべく気配を隠して、気配があった方向へと向かう。


『レイ!』


メディの念輪が来た。


『何?メディ、今ちょっと手が離せない。』


『そこにたぶん、勇者たちがいる。』


『っ!?本当?』


『ええ。フェーノラースが近くにいる。私はあんたからそれほど離れてないから分かったのよ。』


帰ってなかったんだ。


『ちょっと、気になることがあったからね。』


『へぇ、で、どうしたらいいと思う?多分僕は向こうに姿は見られている。今接近中なのはばれてないみた いだけど。』


『おそらく、勇者には代々[鑑定]という、相手の能力が知れるものがあるの。それに、フェーノラースは種 族固有の力を探すのが得意よ、あんたがハーフであることはばれているはずよ。こんな時期に、ここに来 るなんて、不自然とは思ったけど、たぶん、国からの命令か何かで、鬼人族を殺して回っているんじゃな いかしら?鬼人族は同じレベルでも、得られる経験値が、魔物とかよりも多いのもあるし。国の目的   は、鬼人族の復讐を恐れているからでしょうけど。』


さっきののぞき込まれるような感覚はそれか...。実に厄介な能力だな。さすが勇者。


『だから、さっさと奇襲でもかけて、人質でも取るか、逃げるかのどちらかね。』


『せっかく、フーラたちに会えたのに逃げるのは勘弁だな...。』


『でも、勇者たちを敵に回すのはこの街を敵に回すのと同意よ?』


『じゃあ、邪魔されないところで戦う?』


『相手は四人だからね...。戦力差はあってもどうなるかはわからないわ。』


メディは僕に逃げてほしいと暗に伝えてくる。できればその手段のほうがいい。勇者は人類の希望だ。別に僕は人類と敵対したいわけじゃない。だからこそ、敵対するつもりもないのに襲われるのは、理不尽だ。それをただで認めるのも、腹が立つ。


『少し案があるんだ。』













僕は息を潜めて機会を待つ。フェーノラースに見つからないように、少し勿体ないけど神気をあたりにばらまいた。間に合わせの対応策だけど、具体的な位置はばれないはず。現に勇者たちはフェーノラースとあの霊気をを扱う女の勇者、確かノリエだっけ?に言われてかしきりに周囲を警戒している。


狙うのはノリエのほうがいいかな、位置がばれるのは面倒だ。とりあえず、今はメディ待ちか。ケリーには隠密空間を展開してもらうように頼んである。


刀の柄に手をかけ、いつでも抜けるようにしてある。後は神気を撒き続けるだけ。


そうして、張り詰めた雰囲気の中、ついに、場が動く。


ばらまかれた神気を媒介に、周りが何もかも凍り付く。空を自由に飛んでいた鳥さえも巻き込まれ、自由を奪われる。それはまるで、氷の結界。範囲内に入れば、すぐさま凍り付いてゆく。


しかし、さすが勇者たちと言えようか。足元は凍り付いているが、それ以外は特に異常はない。フェーノラースのせいかもしれないが、姿を現さないところを見ると、まだ警戒しているのか?

それでも、警戒していたとしても何が起きるなどと、勇者たちにわかるわけもなく、軽いパニック状態に陥っているようだった。


戦場では、中途半端、あるいは、背中を向けたものはほとんどが、死の運命をたどる。それが、計画された、あるいは、まとまった行動であれば話は変わるが、急にこのような状況になれば、迎撃するよりかは逃走を選ぶはず、向こうには最上級の精霊が各属性いるのだから、なおさらだ。


いくら、戦力的には勝っていても、未来は不確定要素の集まりだ。いとも簡単に状況は変わる。いまするべきことは、不確定要素を可能な限りのぞける状況を見つけ、それを逃がさないことだ。


勇者たちは周りをしきりに見回して一斉に弾かれたように走り出す。それと同時にフェーノラースが顕現し、あたりを爆炎で包む。しかし、その爆炎さえも、一瞬で鎮火し、フェーノラースの足元が凍り付いてゆく。あれ?メディってこんなに強かったっけ?


僕はかぶりを振って思考を勇者たちにシフトする。メディが作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない。ノリエを狙うつもりだったが、観たところもう一人の女勇者であるユウナが近接能力が低そうだったのでそちらへと狙いを変えて、抜刀。


殺す理由もないし、いろんな意味で、不利益になるので()()殺さない。足を浅く切って、まともに動けないようにするため、[刹那一閃]で切り裂く。


「きゃあああぁぁ!!」


悲鳴を上げたユウナを片腕で抱え込み、刀を首筋に当てる。


「優那!!」


すぐさまカイトが攻撃しようとしたが、状況を理解し、剣が止まる。


「おい、ユウナを返しな。」


静かに怒りをたぎらせるユウキ。


「...。誰が返すとでも?人の命を奪おうとした奴に言われる筋合いはない。たとえ、命令されているのだ としも。」


観たところ、無意味な殺害を好むようなやつにも見えなかった。国の恨みを勇者で晴らそうとでもしたのだろうか?このあたりの決定権は基本的にトライアルが持っていて、ほぼ一強だから、周囲の反対は押し切ることは容易なはず。


「それに、状況を分かっているのか?お前の精霊は今頃氷漬けになっているはずだよ?」


その証拠に、勇者たちが逃げていた路地のあたりも、温度がだんだんと下がっているのがわかる。


「わざわざ人質でも取るってことは、何か取引でもしたいの?」


三人の中でも、比較的冷静なノリエが問うてくる。なんか、僕が悪役に見えてきたな...。


「思ったよりも冷静なんだね。質問の答えだけど、君たちは僕を殺したいんだろう?でも、ここでやるのは 僕は嫌だし、仲間を置いてまたここから離れたくはない。せっかく再開したんだから。」


僕は息を吐いて、息を吸った。


「...。だから。正式なところで戦おうじゃないか。僕が勝てば、もう邪魔しないと誓ってもらう。」


「俺たちが勝てば?」


カイトが静かに問う。僕は少し考えるそぶりを見せてからこういった。


「殺してくれてかまわないよ。」


「ふ~ん、けどよ、どこで戦うつもりなんだ?」


「僕は、ビュルンデル学校の生徒で、もうすぐ、卒業生がチームを組んでトーナメント形式で試合をする。

 だから、そこで、優勝したチームと戦ってほしい。必ず、優勝するから。」


「それなら可能な訳か、いいんじゃねえのか、海翔?」


カイトはしばらく考え込んだが、深くうなずいて、僕の案を了承した。


「メディ、もういいよ!」


僕がメディに合図を送る。すると、まるで、手錠のように両手首を凍らされ、下半身には完全に凍り付いたフェーノラースがカイトの目の前に現れた。


「フェーノ!」


カイトが拘束されているフェーノラースに走り寄る。


僕はそれを横目にそそくさに立ち去った。



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