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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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雪山と思い出

いつの間にか一月でビビっています。大変遅れてしまったのは申し訳ありません。

3月の試験が終われば、前の投稿ペースには戻せるとは思うので何卒ご理解お願い致します。


「暇...。」


秘密基地と言われれば僕も男だから気分は上がる。けれども、一人でできることなんか大したことは無い。

必然的に僕は暇な時間を過ごすこととなった。仮眠でも取ろうかとベッドで横になってみたけど、なんだか眠れなかった。


「メディでも呼ぶかな。」


用もないのに召喚するのはメディに悪いかなとは思ったけど、いつ帰って来るかもわからないエインたちを待つのはつらい。こういう時の一分は十分ぐらいに感じるし、僕は内心謝りつつメディを呼ぼうとした。


「わっ!!」


「なっ!!ってメディか、脅かすなよ。」


そこにいたのはしたり顔で立っているメディだった。


「ええ~、誰かさんが暇そうにしてたから遊びに来てあげたのに。」


「ん?見てたのか?」


「忘れたの?一応私は貴方の心を読めるのよ、全部は無理だけど、だいたいのことは読み取れるわよ。」


そうだった。一緒にいることが多かったし、念話もよくしていたから完全に忘れていた。


「忘れてたな...。ごめん。」


「別に謝る必要はないわよ。」


なんとなく謝った僕だが、改めてメディを見ると、普段から漏れ出る冷気が普段より格段に増えていることに気付いた。


「な、なに?そんなまじまじと見て。」


僕はメディを凝視していたことに気付き慌てて視線を逸らす。


「ご、ごめん。なんだか、いつもより溢れる冷気が多いなぁと思って。」


「ああ、そのこと?なんだか急に力が増した気がしてね。なんでかは分からないけど。」


「ふうん。つまり、大幅な戦力アップって事?」


同一化した時の戦力も上がるし嬉しいことばかりだ。


「ええ、早く戦ってみたいわね。それより、いつまで横になってるのよ、いい加減起きたら?」


「ん、ああ。そうする。...。よっと。」


僕はベッドから降りて軽く背伸びする。


「はい。あなたの愛刀。」


[猛吹雪]を手渡され、僕はそれを手に取った。


「ん?メディ、これに何かした?」


何とも言えない、違和感と言うか、不思議な変化を感じた僕はメディに尋ねた。


「え、何もしてないわよ。」


「本当に?」


「ホントよ!」


僕は刀の銘の部分を見る。そこには[猛吹雪]の名が無く、代わりに[氷神]となっていた。


「ほら、やっぱり違うじゃん。メディのせいだね。」


「わ、悪い?別に悪気があったわけじゃ...。」


頭を伏せて声がすぼんでいくメディの頭を僕はそっと撫でた。僕も成人しているから今なら出会ったころのように腕を伸ばす必要はなかった。


「別に怒ってないよ、むしろ嬉しいよ。ありがとう、メディ。」


出来るだけ優しく言った。メディは顔を上げしばらく黙っていたが、笑顔を浮かべて頷いた。

















*マナside


「あ、フーラじゃん。勇者のパレードを見に来たの?」


学校での調べ物を終えたあたしは噂の勇者を見に大通りまで来た。そこには私が来た道を逆走するかのように歩いてきたフーラがいたので声をかけた。


「ん。見たい人は見たからもう寮へ帰るところ。」


いつもの彼女のように淡々と述べる。だけど、そこに少しのうれしさがにじみ出ているのを私は見逃さない。


「ご機嫌ね。そんなにかっこよかったの?愛しの彼みたいに?」


からかいの言葉。若干エインがあたしの気持ちに中々気付かない八つ当たりも添えて。

でも、フーラは何事もなかったかのように表情を変えず、微笑む。


「また八つ当たり?確かに世界にはまだあんな強い人がいたんだって思ったけどそれだけ。」


これがあたしたちの会話。エインへの鬱憤をフーラにからかい交じりにぶつける。嫌と言わずにこれに付き合ってくれる彼女には本当に救われている。


「ふーん。」


そこであたしは一つの疑問を思いつきフーラに聞く。


「そういえば、フーラがレイを好きになった理由って何?」


「え?」


なんか階段がどうとか言ってたけど、あたしには納得できなかった。他に理由があると疑いたかったけど、そのころの彼女に聞くのはあれだったし、レイがいなくなってからはそれどころじゃなかったし、ようやく落ち着いた今、やっと聞けそうだった。って五年越しの疑問をいまさら聞くのも変だけど。


「...。聞きたい?」


少し悩むそぶりを見せた後、あたしに確認をとってきたので、無言で頷く。


「多分。私とレイは一度、会ってるはず。」


「それ、ほんと?」


いつもの起伏が少ない声で、割と衝撃的な事実を話す。ただ、フーラの過去はあたしも一度聞いている。そのころのフーラに学校長以外とあっている人はいなかったはず。少なくとも、親しい間柄は。


「私が...。11歳のころ。ちょうど保護されてから2か月くらいかな。」


そういって、フーラはぽつりぽつりと語り始めた。歩きながら会話していたあたしたちはいつの間にか学校へと来ていて、ちょうどベンチがあったので、二人で座ってフーラの話に聞き入った。













そう、私が保護されてから二ヵ月たった頃。


「フーラー。」


私を呼ぶ間延びした声。こういう時はろくなことがない。私はこの二ヵ月で身をもって学習した。例えば、魔法でいきなり夜の砂漠に転移したり、魔物がひしめく島へ転移したり、よくわからないお使いや、下手に衝撃を加えると即爆発する配達物。挙句に落とし穴。


警戒心を最大まで引き上げた私は、魔力の気配をほんの少しでも見逃さないようにミルのいる部屋へと向かう。足音は消した上で。そんな感じでゆっくりと近づいてくる私にしびれを切らしたのか、部屋から出てきたミルは私にこう告げた。


「友達の所へ行くわね。それっ!」


この時点で、私の中では、決定事項なのかという諦めと、せめて準備位させてほしいという怒りがぐるぐると渦巻いていた。


 次に私が目を開けた時、そこに広がっていたのはどこまでも白い世界。そう、雪山だった。初めて見る雪に感動するのもつかの間、とてつもない寒さに襲われた。何の準備もさせてくれないのになぜこんな場所へ問答無用で飛ぶのかを真剣に問い詰めたい私は後ろを振り返った。そこにはいつの間にかあったかそうな格好をしたミルが立っていた。さっきまで、普段着だったのに。


「刺してもいい?」


私は腰に携えていた細剣を構えながら問うた。


「ダメ。」


「嫌。」


私は細剣を振るった。カキンという硬質的な音が遅れて聞こえた。


「わかったわかった。ハイこれ。」


私には大きすぎる上着が二枚。私は差し出されたそれをもぎ取るようにとっていそいそと羽織る。


「...。まだまし。」


寒いのは依然変わらず、私は魔法で炎を作り出し、ふわふわとそばに浮かせて暖の代わりにする。


「寒いでしょ、早くいくわよ。」


そういって一面雪景色の中を迷いすら見せることなく歩いていくミル。連れてきたのは貴方でしょう。と突っ込みたい気持ちに駆られたけど、それを押さえ、寒さに身を縮めながらついていった。


 そこからは、雪を踏みしめる音だけが、私が聞き取れる音だった。寒すぎて考える余裕もなかった私はただただ、ミルについていった。すると、ミルがポツリと言葉をこぼした。


「迷ったわね。」


「...ぇ。」


寒さに口がまともに動かずかすかな声しか発せなかった私は茫然とした。


「最初からこうするべきだったわ、フーラ。そこで十分待ってて。」


さらっと、雪山でまともな厚着が上着二枚で十分という死刑宣告にも近い言葉を残したミルに私は怒りやあきれを通り越して、力が抜けた。私は仰向けで雪に体を預けた。


空からは雪がちらちらと舞っていた。本でしか見たことのない雪山の光景にまるで幻想だと思った。体の感覚は消え失せていて、瞼が落ちそうだった。私の理性と本能が起きろと訴えるので、仕方なく瞼を持ち上げ続けた。


 そんな時だった。まだかすかに感覚が残っていた聴覚が誰かが雪を踏みしめる音をつかんだ。ミルかなと最初は思っていたけど、私の顔を覗き込んだ人の顔は見慣れた顔ではなかった。私が瞼を開けていることを確認すると、その人は私を担ぎ上げた。暖かい体温を感じた私はそれに身を任せ意識を絶った。


 目を覚ました時、そこには雪景色はなかった。夢だったんだと思ったのもつかの間、ぱちぱちと焚火の音がした。音の方向へと体を向けると、さっき私を助けてくれた人、女性ではなく男性、そして少年が焚火に薪をくべていた。私にかぶせられていた毛布が私の体にこすれる音を聞きつけたようで、私に背を向けていた少年は後ろを振り返った。


「あ、目を覚ました。大丈夫?」


不安げな顔で問うてくる彼に私は頷いた。


「そっか、ならよかった。僕はこの辺りに住んでいるんだけど、君は?」


それが彼との、レイとの最初の出会いだった。


次回の投稿ですが、2月11日を予定しています。ただ、こちらが投稿できるかは正直わかりません。ですが、3月11日(正午)には必ず投稿できると思います。

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