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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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堅固なる結界

今回は短めです。

 私とマスターの旅はあてのないふらふらとした旅だったけれど、ただただ、上から眺めるだけの今までに比べれば、気にすることなんて何もなかった。


 マスターは旅の資金稼ぎのために、冒険者ギルド。と呼ばれるものに加入した。基本的な活動は各地に潜む魔物の討伐及び依頼人の依頼をこなす便利屋のようなものである。


 マスターはすぐに有名になった。巷では、恐れ無き猪だとか。馬鹿にしているようには聞こえるが、とにかく先陣を切るその姿は、大討伐戦においては周りの冒険者を鼓舞し、どんな逆境にも負けない不屈の大剣使いとして広まっていた。


 そんな戦いに明け暮れる日々を送っていたマスターは、一人の女性と出会った。フードを深くかぶっていて、表情は分かりにくかった。知り合ったのは、とある魔物が大量発生して殲滅作戦が行われたときのパーティーの仲間になった時の事。


「よっ!俺はガイアスっていうんだ!お前は?」


「ポレット。あなたと喋ることは無いから。」


「そんな冷たい子と言うなよ~。命を預け合う仲間なんだからさっ。」


マスターはポレットの背中を軽くたたく。


『マスター。報告します。現在マスターが会話している人物は古代種族かと思われます。』


「!?」


マスターは表情をわずかに変えたが、すぐに元の表情に戻った。


『おいおい、なんでこんなところにいるのさ。その、古代なんちゃらってやつ。』


『それは存じません。ですが、身体より発せられる波動を見る限り、頭部に二本の角のようなものが見られ ます。恐らくですが、鬼人族。又は、竜人族ではないかと推測します』


「ふうん。なるほどな。」


マスターはしばらく考え込んだ。すると、バッと顔を上げ、周りを見回す。辺りに人がいないことを確認していると思われた。


『マスター。お望みであれば、隔離結界を使うことを提案します。』


隔離結界すなわち、一部の空間の所有権を変更する結界。所有権を変えられた空間は所有権を有する者が許可しない限り、その空間内へと入ることはできない。


『ああ頼む、あの辺に作ってくれ。』


マスターが指をさした方には比較的人目に付きにくい場所。隔離結界によって入れない空間が出来てしまうので、それを配慮したと思われる。


『イエス、マスター。隔離結界、展開。』


「ポレット、ちょっと来い。」


マスターはポレットの手首を握り、隔離結界の中へと連れていく。


「な、なに!離して!」


「すぐ済む。すこし、落ち着け。」


マスターはポレットの手首から手を放す。が、ポレットはマスターを警戒しているようで、腰に差していた剣を抜き、正眼に構えている。


「ここはなんだ。どうして、結界が展開されている。」


「結界を知っている奴なんていたんだ。てっきりこいつだけの奴だと思っていたのに。ってかさ、そんなこ と言う辺、正体隠す気ないの?」


「な、何のこと。」


「決まっているだろう、あんたは鬼人族か?それとも、竜人族か?」


「何故分かった。」


ポレットは吹雪が吹き荒れているような冷たい目を一層冷たくした。


「ん、相棒が教えてくれたからさ。」


「それを知ってどうする気だ!」


『魔力と気力の集束を感知、霊気の生成を感知、神気の発生を感知。』


「別にどうもないさ、パーティーメンバーの事は知っておくべきだなって思っただけ。すまん!」


急に頭を下げたマスターを見て、ポレットの剣が少し下がったように見えた。


「アイ、結界の解除を頼む。さあ、ポレット。そろそろ作戦開始の時間だ。持ち場へ戻ろう。」


マスターはポレットの手首をつかむとまた速足に歩いて行った。


「ちょ、ちょっと!止まりなさいよ!」


冷静な口調が崩れている。


 これが、将来を誓い合った二人の出会いであった。














sideレイ


「ぷはあ。」


息苦しかった空間から抜け出し、情けなく息を吸い込む。光る石は、ふわふわと元の場所へと戻った。


小さくても、お父さんとお母さんは変わっていないなと僕は思った。


「それにしても、この石はいったいなんだ?」


僕よりも高度な結界を展開していた。僕では、ケリーの力を借りなければ使えないような結界も使っていた。しかも、結界を強化。と言うのは初めて聞いた。追憶した限り、神気を足して、強度を漸増するのではなく、別種の強力な結界に成った。と言うべきだろうけど、本当にそんなことができるのか?


『あなたがマスターの言っていたものですか?』


急に念話がつながった。


『わっ、ええと、アイさん?』


記憶を引きずり出して名前を呼ぶ。


『イエス。あなたの名前は?』


『レイ。』


『記憶しました。』


人間ではない声が響く。


『マスターって、僕のお父さんだよね?』


『イエス。レイ。そのように記憶しています。』


『お父さんが言っていたものって?』


『あなたの事ですよ。レイ。マスターは貴方が現れたら、固有結界を発現させてやれ。という命令がありま す。推測では、あと一年後と思っていましたが、予想より早期に事が進んでいます。』


『固有結界ってそういう物なの?』


じゃあ、お母さんもアイに手伝ってもらって...?


『ノー。レイ。固有結界の発現方法は様々です。今回の場合。私が最もレイに向いている結界を強制的に 発現させるだけです。』


『そんなのでいいの?』


『イエス。レイ。では、こちらへ。』


僕はアイの元へは行かなかった。


『ごめん、アイ。僕は出来ない。』


『何故ですか、レイ。』


『僕は自分の手で、僕だけの結界を作りたい。』


『人間とはつくづく非効率的ですね。』


『それは僕も思うね。』


『では、助言だけさせていただきます。己が正義を貫き通せ。...。休眠状態へ移行。』


 それだけ言うと、アイは光を失い、一言も発しなくなった。さわっても、さっきのようなめっまいすらも起きない。なんだか変な、というかやりきれない気分だ。


「寝ようかな。」


月も下がり始め、夜がもうすぐで終わりそうだった。僕は眠い目をこすりながら寮へと戻った。


次回は来週の日曜日予定です。

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