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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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静かな銀色の輝き

間に合うと思っていたのに...。すみません!!

少しほそ日がすっかり沈み、月がよく見える高さまで登ってきた頃。

僕は、天と地の峡谷に来ていた。場所で言えば、天に当たる場所に僕は居た。


「ここか、噂の場所は。」


町の掲示板に今日が月が最も強く輝く日、シルバームーンらしく、最もきれいにみられる場所を探した結果、ここが最も最適だったので登ってきた。


 まだ、月は僕の真上には上がってきていない。真上に月が来た時、もっとも綺麗な月が見れるはずだ。


「ん?水?」


水が流れる音が聞こえた。僕は音がする方へと歩いていく。


「こんなところに。」


そこでは水が湧き出ていて、その先を見ると不思議な石が置かれていた。装飾された台の上にあるので、とてもたいそうな物にも見える。実際、ただの石では無くて、なにか模様のようなものが走っている。


「これ、触ってもいいのかな?」


ちょうど峡谷のそびえたつ岩の一番高い場所に台座と共にあるので、取ってはいけない者にしか見えない。

触るだけならいいかなと思って軽く触れてみる。


「ううっ。」


立ち眩みがした。しかし、それ以外に何の変化もない。いったいこれはなんだろう?僕は募る疑問を解決しようと、手で覆うように触る。


「まただ。」


さっきよりも強い立ち眩み、僕は思わずその場に座り込んだ。

立ち眩みが収まると、流れていた水、川と呼ぶには少し細いがそれに月が映っていた。

揺らめく水面の月は弱々しく、今にも消えてしまいそうだった。


「ふう。」


月を見るために最初に座っていた場所に座りなおす。月は周りの星々と共にこの地を照らしていた。

柔らかな光といつもより大きく美しい月に僕はすこし見惚れ、目が離せなかった。


 だから、その急な変化に驚いた。


「!?」


後ろで魔力が急激に集まるのを感じ、刀に手をかけ、後ろを振り向くとともに、[魔結界]を展開する。

その魔力の集まりは、あの石によるものだった。


「一体何なんだこの石。」


魔力はまだ集まり続けている。それに呼応するようにして、月や星が輝きを強める。僕は困惑した。


 僕は、鬼人化を発動し、鬼人となってからもう一度石に触る。立ち眩みは起きなかった。だけど。


「ぐあああ!!」


何かが流れ込んでくる。魔力?気力?神気?どれも違う。

これは記憶だ。あの石の歴史が流れていく。僕は急に記憶を詰められ、頭を押さえてうずくまった。

痛い。痛い。ただ、それだけ、でも、記憶のがあふれ出すようになるのを必死で抑える。


 どれだけ経っただろうか、流れ込んできた記憶を必死に捌き、なんとか抑え込んだ。


「っ、はあああ。」


大きく息をはきだし、その場にへたり込む。石はその場に転がっていた。











石の記憶は大量にはあったが、大した記憶はほとんどなかった。

ただただ、流れゆく太陽と月、雲、雨雲、雷雲、風、生物。それらをこの天とも呼べるこの場所で、傍観者のようにひたすら眺めるだけの毎日。


だけど、とある人がやってきてから、その石の世界はガラッと変わった。

僕はその人を見たことがあるような気がしたけれど、誰かはすぐには思いつかなかった。

その人とは、少年だった。僕がこの峡谷に落ちた時と同じぐらいの年のようだ。


少年はこの地に住む人とは全く違う言語を使っていた。そして石に名前を付けた。


「今日からお前はアイだ。お前は俺のために働くんだ。いいな?」


上から目線で、動けもしない石に“アイ”と名付けた少年はまるで人と話すように石に、アイに、しゃべりかけていた。


アイは思った。なぜ、この少年は私に“名前”などという物をつけたのか。


「えーと、どうすんだっけ?あ、そうだ。[エンチャント・魂]」


少年は私が今まで見たことのない魔法を私に使った。魔力のようなものが私に宿った。


「ほら、これでしゃべれるんじゃねえか?」


といわれたので、“会話”と呼ばれるものを実行する。


「私、アイ。」


たどたどしい声だったけれど、どこからか声がでた。


「んー。最初はそんなもんか。仕方ない。いや、これなら...。」


少年はぶつぶつと小さく呟くように魔法を唱えた。また、得体のしれない魔力っぽいものが私の体の中に入ってくる。


「...。私はアイです。よろしく。」


流暢に声が出てきた。それに、どういう言葉がどういう意味なのかも流れ込んできた。かなりの情報量ではあったが、今までの記憶を少し削れば微々たる問題でしかない。


「さて、なんか使える特技とかねえか?」


マスターは私に問うてくる。私は言われた意味がよく分からなかった。何かしろということのようだ。


「マスター。特技とはこのようなものですか?」


と言いつつ、私が手に入れた能力である。守護の力を使う。すると、半透明な壁がアイを覆う。


「おお!すげー!!かってえ!」


マスターは興味津々とばかりに、背中に担いでいた大剣で私が作ったばかりの壁を斬りつける。勿論、びくともしない。私に攻撃することはできないが、何かを守ることはできる。


「ふうん、こりゃよっぽどがなきゃ割れねえな。」


「私の“特技”を見せろとおっしゃいましたので。」


「確かにな。これなら防御の事は何も考えなくて良さそうだ。」


マスターは気分がよくなったようで、いい笑みを浮かべている。


「じゃあ、今の俺なら、違うな、アイと俺なら、あいつは楽勝か?」


マスターが指さした魔物は、この峡谷の“天”を支配するブレイズドラゴン。他の竜種よりはるかに強力な炎を吐く、凶悪な存在。下手をすれば余裕で国を亡ぼす竜種。


「あいつの討伐依頼受けたんだけどよ~。空は飛ぶし、炎は吐くし、近寄れねえんだよ。どうにか出来ねえ か?アイ。」


私はマスターに頼りにされているということが嬉しくて、こういった。


「イエス。マスター。マスターには傷一つ負わせないことを誓いましょう。」


「お、言ったな?信じるぜ、その言葉ぁ!」


マスターはブレイズドラゴンに走り出していく。私は彼の大剣の中に入った。私には様々な力があるようだ。私はマスターに身体強化の魔法をかけ、炎を無効化する結界と物理的な攻撃を防ぐ結界を展開する。


「うっしゃあ!羽虫!リベンジしに来たぜぇ!!」


大声で挑発するかのように雄たけびのような声を上げるマスター。それが通じたのか、ブレイズドラゴン面倒くさそうに炎を吐いて、消し炭にしようとした。


しかし、マスターは気にせず炎の中に突っ込む。小さきものが炎に包まれたのを見たブレイズドラゴンは、それに飛び立とうとしたが、炎を突き抜けてきた小さきものの剣に腹を大きく斬られた。


「ググググウウウウオオオオ!!!」


いきなり痛恨の一撃をもらい。大きなうめき声を出すブレイズドラゴン。


「まだまだあ![剛剣]!」


マスターの豪快さを(スキル)に現したかのような一撃。今度は切ると言うよりは叩きつけると言う感じで、ブレイズドラゴンの頭を地面にたたきつけた。さすが竜種と言うべきか、斬ることは出来ていなかった。しかし、それに逃れることを妨害したのは非常に大きい。


「ヒャッハー![剛鉄剣]!」


私が見たことのある大剣の(スキル)で最強の一撃がブレイズドラゴンを襲った。が、ブレイズドラゴンは、爪でそれを防いだ。せめぎあう音が響く中、マスターの大剣は止まることを知らず、ついに爪を叩き切った。


「グオオオオオ!!」


ドラゴンは遂に怒り出した。尻尾を振り回し、近づけないようにしてくる。マスターには傷はついていないが、すこし、押し出されるので、結果的にはあまり意味をなしていない。


だから、私は展開する結界を“強化”した。


「強化型物理結界、展開。」


さっきより色が濃くなった。薄紫の結界がマスターを中心としながら、立方体の結界が展開される。


ガキン!


ブレイズドラゴンの尻尾は私の結界によってはじかれた。それによって、すこしのけ反り、隙をさらけ出したブレイズドラゴン。


「へっ、これで終わりだな!羽虫![ジャイアントスレイヤー]!」


マスターの固有技(オリジナルスキル)と思わしきものが、ブレイズドラゴンを文字通り一刀両断した。

激しく血しぶきを上げながら倒れていくブレイズドラゴン。


「うっしゃあー!!」


マスターが叫びながらガッツポーズしている姿をみて、私は誇らしくなった。

来週はお休みです。

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