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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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逆恨み

遅れて申し訳ないです。事故に当たってしまって...。詳しくは活動報告に書きますが、手術が必要とかなんとか...。

 鬼人族。古代種族の一つ。

 現在ある書物には、純血の鬼人族は、鬼人族殲滅戦によって、完全に絶滅したと書かれている。


およそ100万に上る、連合軍で此処までした理由は様々だ。

鬼人族が守っていた広大な領地を欲していたとか、その異質とも言える鬼人の術、巫術を手に入れようとしたとか、鬼人族を研究したいとか、結局私利私欲の理由だけど...。僕は、あきれながら続きを読む。


しかし、その建前は、異質な術を使う危険生命体の殲滅。無茶苦茶ではあるが、理にかなってはいる。

ただ、鬼人族は1万にも満たなかったのに、それだけ集まったのは、その殲滅戦の後、領地を素早く占拠したかったからには違いない。


 ほとんどの書物には続きがある。

連合軍はほぼ全滅したという、悪夢のような結果が。


 その大きな理由の一つは、鬼神がいたこと。多勢に無勢とはよく言うが、その鬼の神は、自らの生死を問わぬ行動ばかりをとった。それはまさに、手負いの獣、否、真の鬼だったと書かれている。


 その鬼が巫術を唱えれば、天変地異が平然と起こり、問答無用とばかりに、大軍を蹴散らした。その勢いは残りの兵が10万を切ったころだった。魔力が、尽きたのか、倒れたらしい。正確には魔力ではなく、神気だろう。


 そこからは、絶望に打ちひしがれていた鬼人も持ち直し、必死の抵抗を見せた。不思議な術で、能力が格段に上がる鬼人たちを前に、兵はどんどん減っていった。結果から言えば相打ち。もっと視野を広げれば大損害だ。連合軍に兵を送った国はおよそ12国。一つの国に突き、十万弱の兵を送り、全滅。兵の補充なんてすぐにはできない。連合軍に参加せず日和見していた国が、兵を大きく減らした国の領地を侵略し、また各地で戦争が起きた。


 この出来事は、鬼神の呪いと呼ばれている。諸君らも鬼人を見つけたならば、決して襲ってはならない。

彼らは悪魔とも呼べるのだから。と、ここで、内容は終わっている。


 鬼人族殲滅作戦・第二巻 鬼人の悪夢


作者 ヨーク=クレセント










「ひどい言い草だ。」


 僕は顔をしかめながら、本を閉じる。勝手に襲ってきて、勝手に争いあって、それを鬼人族のせい。このむかむかした気持ちはどこにぶつければいいんだ?


 僕は自然と力が入るこぶしを無理やり脱力させ、深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

 エインから、貸してもらったこの本。慌てながら持ってきて、読んでみろ!と言われたときは首をかしげるしかなかったが、これはひどい話だ。いたるところで、鬼人族が悪いとか罵倒してくる作者の姿勢には苦笑しか浮かばない。問題はそこではなく、この本が流行っていること。


 つまり、この本を読んだ人たちには、鬼人族が悪いというイメージが結び付けられている。

僕が半鬼人だと知っているエインは慌ててこの本を持ってきた。ということか。


「はあ。」


なおさら鬼人化が使えなくなった。いや、前向きに考えるなら、いままで、下手に使わなかったおかげで、ばれている心配はない。今はだけど。


「なんか食べよ。」


この気持ちを晴らすために、僕は町へと出かけた。













何を食べようかと考えながら、歩いていたとき、エインを見つけた。そこには人だかりが出来ていて、エインも、その人だかりも、町の掲示板に夢中のようだった。あの人だかりに行くのも面倒なので、ちょうど横にあったコカトリスの串焼き(腿)を売っていた屋台を見つけ、エインの分も合わせて8本買った。五本は僕のものだ。


「あ~おいし。」


コカトリスは、くちばしでつつかれるとその場所が石化するという厄介極まりない鳥ではあるが、それゆえ、点滴もおらず、ぬくぬくと育っているため、非常に美味な肉がたっぷりある。特に腿は絶品だ。断言できる。


 串焼きの4本目を食べ終え、持ちきれなくなった串を屋台の横のごみ箱に捨てて戻ってきたときだった。


「あ、レイ!!」


エインがまたもや慌てた様子でこちらへと走って来る。


「今度は何?また鬼人族についての何か?」


「ああ。とりあえず見てこい。」


背中を押されながら、人混みをかき分け、前へと出る。いつもは特に大したことが描いていないビュルンデルの掲示板だったが、その掲示板にはとても大きな紙が貼ってあった。


【ビュルンデルの皆様へ】


現在、王都トライアルでは、鬼人族完全殲滅を行っています。対象は半鬼人族も含みます。


僕は息をのんだ。僕の目は続きの文字を追う。


確かな情報や、鬼神族の討伐に貢献した方には10万ローアを与えます。皆様のご協力をお願い致します。  

と書かれており、その後には、鬼人族の特徴や、傾向などが書かれていた。


十万ローアという、一カ月は遊んで暮らせる大金に加え、鬼人族を完全に開くと認識している民衆は完全に乗り気だ。だれも疑問を浮かべない。だれも、何故そうしているかを口にしないし、頭に浮かべもしない。


僕が人混みから脱出すると、残りの串焼きをほおばっていたエインがいた。すぐにそれを飲み込んだエインは、人の目につきにくいところへと僕を呼んできた。


「まず、感想は?」


「考えたやつに一発やりたいな。」


「俺はこいつで一刀両断してやりたいな。」


エインは愛用大剣を軽く持ち上げながら言った。


「さて、どうする?レイ。」


「さあね。見た目で判断できないなら、ばれないさ。」


僕の事を半鬼人だと知っているのは、ミル学校長に、マナ、フーラ、エイン、グラン先生。

あと、モルトさん、クレアさん、コロさん、プルさんだ。


この人達ならば、僕の事をばらしたりする人ではないと思う。


「それも、そうだな。」


気楽そうに言うエイン。すこし、羨ましかった。












「さて、娘よ、この状態をあなたはどうするのかしら?」


まるで、私の語り掛けるようにミル先生は言った。


「何も、変わりません。レイはレイです。」


「いいわね。青春だわ。」


肘をついて手に顔を乗せて、まるで、夢見る乙女です。とでも言いたげなオーラを出すミル先生。


「他に何か?」


「特には無いけどね。嫌な予感がした。それだけよ。」


「レイに何かあるかもしれない!?」


駆け出そうとした私は、ミル先生の手に止められた。


「落ち着きなさい。」


凛として、静かに響き渡る声。それは、不思議と私を言葉通りに落ち着かせた。


「ゴメン。」


「いいわよ、気持ちは分かるわ。」


「うん...。」


自分自身が不甲斐なくて。なんだか、意気消沈してしまった。


「問題は、まさかトライアルが本腰入れて捜査してくるとは思わなかったことかしら。」


「トライアルが、何かあるの?」


「トライアルは、勇者召喚にも大きく関わっていて、軍事力ではこの辺りが束になっても敵わないほど   よ。グレゴリアド王国なら、勇者ありなら、苦戦。ってとこね。」


どちらも、天と地の峡谷を超えた先なので、私にはあまり分からなかったけど、この辺りが束になっても、と言うのは、ミル先生のような規格外を入れたうえで。と言う意味でもあると思う。だから、恐ろしいとより感じた。


「そんなに?」


「見つかったらもう無理ね。あきらめるレベル。グレゴリアド王国と。トライアルは敵対することは有り得 ないからね。寧ろ、一緒に出て来るわ。そういう条約を結んでいるからね。」


「ばれたらおしまい。って事?」


「そうね。手を尽くしてはみるけど...。ただ、今頃鬼人についての本が出るとは思わなかったわ。」


「どうして?」


「あれは、トライアルも含む、大国の黒歴史。秘蔵されているけど、こんなのを出せば、不審に思う人は居 るはずなのにね。それに、ヨーク=クレセントのクレセントは、トライアル王家の血筋。一体何故こんな ものを書いたのかしら?」


「さあ?そろそろマナの所に行ってくる。」


「とにかく、こっちにも直接捜査がくるかもしれないから気をつけなさい。まさk、識別できるものがある とは到底考えれないから、大丈夫だとは思うけど。」


珍しく不安げなミル先生はを横目に校長室から出た。


次回予定は、来週の日曜日ですが、ちょっとどうなるか分からない状況なので、予定どうこうの問題ではないですけれど、一応、時間が出来次第続きを書いていきます。

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