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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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私は支える者だ

遅れて申し訳ありません。

 荒れ狂う吹雪が吹いている。言い換えるならば死の風が吹いているとも言える。この中では、生き物が生きる頃は至難の業、いや、ただの生き物が生きられるはずがない。


そんな吹雪が吹く中、それへの避難所のようにポツンとある一つの洞窟。


その中に少女はいた。












私はどうしたいの?彼を助けたいの?彼を好きになりたいの?彼に好かれてほしいの?


私の頭の中で、様々な考えが浮かび、沈み、渦を巻く。それらはすべて彼への想い。


ケリーにどうすればいいか尋ねたりもしたけれど。


「メディ生き様は~、メディが決めるのですよ~。」


と言われた。答えになってない。


「はあ...。」


ため息が漏れた。


ベッドに飛び込み、枕に顔を押し付ける。


 確かにピーナ様は、人と精霊が添い遂げるという例はある。とは言った。よくよく考えてみれば、彼は鬼人だ。隠すことはできるけど、私がいれば、余計な負担をかけるかもしれない。私のせいで警戒されて、ばれるかもしれない。鬼人は過去に滅ぼされ、一部の国は、ハーフさえもを絶滅させようとしている。



「メディ~。いますか~?」


ケリーの声。何かあったのと返事を返す。


「いえ~、メディの事ですから~、まだうじうじと悩んでいると思ったので~。」


「よくわかるわね。」


「だって~、私たちは友達じゃないですか~。」


なんとなく、嬉しいと思った自分がいた。


「ええ。そうね。」


「解決策とは~いかないですけど~、気分転換は大事ですよ~。」


「そうね。ケリーは今どこ?」


ちょっと雑な返し方だと私でも思った。


「あたしは~いつもの場所ですよ~。」


と言うことはあの湖か。


「わかった。すぐ行く。」


私は転移の準備をする。


魔法陣が広がり、輝く。もうそこには少女はいなかった。


「あっ、来ました~。」


いつも通りのほんわかとした笑顔。今はそれが羨ましい。


私はメディが座っている横に座る。椅子が無いので、地面にひざを抱え込むようにして座る。


「私もあったんですよ~。同じような事~。」


間延びしたいつもの声。だけど、いつもよりかはちょっと固いと言うか、まじめな声。


「同じって?」


「誰かの事を好きになることです~。」


「本当?」


意外だった。


「はい~。」


「その時はどうしたの?」


私の疑問をぶつける。


「その人には~、私ではない別の人が~いたんです~。」


少し、遠回しな言い方だけど、言いたいことは分かった。


「なんとなくわかった。で、その後はどうしたの?」


「今までどうり。ですね~。」


それが出来たら苦労しないな~。なんて嫌味な反論を浮かべる私は意地悪なのかな?


「つまり?」


「その人を~契約者として~、友として~支えていたんです~。」


「支える?」


「はい~。」


「共に戦う。とかじゃなくて?」


「いいえ~支える。ですよ~。」


支えるとはどういうこと?


私がそう問う前に、答えは出てきた。


「共に生きて~、一緒に過ごして~、二人を見守って~、とかですね~。」


「何が違うの?」


「決して主役では無いってことですよ~。」


「脇役って事?」


「どっちでもないですよ~。」


「え?」


矛盾している。


「おかしいじゃないの。そんなの。」


すこし、苛立ちながら言った。


「劇で言うなら~、台本ですね~。」


「何が言いたいの?」


怒気をはらんだ私の声。


「それはメディが考えるのですよ~。」


肝心の答えを言う前に、ケリーは話を打ち切った。


「そう、怒らないで~。たまにはのんびり過ごしましょう~。」


そう言うと、メディは大きなあくびをした後、寝てしまった。まだ起きているとは思うけど、寝るのを邪魔するのは悪いと思って、私は湖へ視線を動かす。


 魚たちの楽園とも言える湖は、ケリーによって見た目よりも大きくなっていて、透明度が高いのに、底は見えなかった。


私は多種多様な魚たちをぼんやりと見ながら、さっきの話の事を考えていた。


この湖で例えるなら、今、のんびりと泳いでいる小魚の群れとそれを狙う魚を主役とするなら、台本とは一体何になるんだろう。この湖かな?


何故、台本なのだろう。台本と言われれば、物語の筋書き、物語の世界そのもの。そんな感じなのかしら?


つまり、無くてはならないけど、決して、物語を介入することなく、筋書き通りに進める存在。つまり監視者。まるで、ピーナ様みたいだ。


私は、私が尊敬する人と同じような立場になったように感じて、苦笑した。

だって、そんなわけないから。


ケリーは私に傍観者、もしくは監視者となれ。って言っているの?入はどこまで許されるの?


疑問を解決しようとするたびに、別の疑問が浮かんでくる。私は腹が立ってきた。


「難しく考えすぎよね。私は今まで通り、彼と共に戦うだけ。彼を支えるだけ。」


「私は彼を支える者だ。」


私は自己暗示をかけるように一人でつぶやく。何かが吹っ切れたような気がした。

なんとなく、今なら何でもできそうな気がする。


すると、なんだか眠くなってきた。疑問は無理やり解消したし、心残りは無いので、このまま眠気に身を任せた。

















「なんとかなりましたね~。」


あたしは、狸寝入りを止めて起き上がる。


「これでいいんですよね~?ピーナ様~。」


『ええ。ありがとう、ケリー。これで、彼女も半神精霊のきっかけを手に入れたわ。この種が咲けば、メディは晴れて半神精霊の仲間入りよ♪


「お安い御用です~。」


《じゃあ、私は監視に戻るから、あとはよろしくね。ケリー。》


「了解です~。」


魔力のつながりが消えた。


まさか、自然精霊とはいえ、半神精霊のきっかけを手に入れれる程とは思わなかった。

これなら、彼も、原始の種を手に入れることができるはず。


その種はいつ咲くのだろう。それまでは、ゆっくりとした生活を楽しもう。



予定の変更はないです。今週の日曜予定です。

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