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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
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風の貴公子

何とか一話書けました。九月も予定がヤバいですが、まだ時間はあるので、週一行けると思います。

ただ、12月から3月までは不定期になるかもしれません。ストックためれそうだったら頑張ります。

「憂鬱だなぁ。」


僕は一人でつぶやく、メディとフーラの試合の後、フーラを保健室へと運び、少し看病した。

フーラはなかなか起きそうになかったので、保健室で様子を見ていたけれど、保健室の先生のリアーヌ先生に寮へと返されたが、フーラの事が心配で寝付けなかった。


 そんなわけで、あまりよく眠れていないし、今日の事を思うと面倒で仕方がない。

瞼が下りてきそうなのを我慢しながら、卒業後の進路相談の自習を乗り切った。


 放課後、余りにも眠かったので仮眠をとる。現在の時刻は1時28分。

イライオとの模擬戦は2時からなので、少しだけ余裕がある。眠気覚ましに、訓練用闘技場館へはランニングで向かう。調子は良くないけど、負けるわけにはいかない。


 最近の僕は緩んでいるようだ。昨日の試合で実感できた。だからこそ、今日の試合は丁度いい。

ただ、イライオは、決して弱くない。少なくとも、話を聞く限り、フーラ達とほぼ同格に違いない。


 体があったまってきた頃、僕は闘技場館の中へと来た。中は空調が効いているようで、ちょうどいい温度に保たれている。闘技場へと向かおうとすると、エインに会った。


「ようレイ。調子はどうだ?」


「良いとは言えない、ってところ。」


「そうか...。お前の事だから負けないとは思うが、油断はするなよ。」


「勿論。」


「んじゃ、俺は観客席に行くわ、頑張れよっ!」


「うん。」


 僕は大きく傾き、エインと別れる。とはいっても、闘技場まではさほど遠くはなく、すぐに着く。

その広い空間に一人ポツンと立っている、背が高く、高級感のある服に身を包んだ人が立っていた。


「君が噂のレイだね?」


「まあ。うん。」


いきなり話しかけられて、しどろもどろになりながら、頷く。


「まさか、姫君のハートをつかんでいる人がすでにいるなんて思いもしなかったよ。」


「私は、あなたをこんなにも愛しているのに。」


いきなり始まった演説。僕は何も言えず、ただただ、それを聞き続けた。


「ーー私はどうすれば君のハートをつかめるのだろう?」


「すみません。もういいですか?」


「ああ、すまないね。つい熱くなってしまって、じゃあ、始めようか?」


イライオは優雅に腰に差しているレイピアを抜く。

それに合わせて、僕も腰に差している[猛吹雪]をいつでも抜けるように居合の構えをとる。


「じゃあ、賭けの内容は、私が勝てば、私が姫君はもらう。君が勝てば、私は、不必要な接触を姫君にしないと誓う。これであってるかい?」


「ああ。」


「じゃあ、始めようか、グラン先生、合図をお願いするよ。」


頼んでいるのか、命令しているのかよく分からない言葉をグラン先生に掛ける。


「これより、レイVSイライオの模擬決闘を行う、両者、始めっ!!」


 先手必勝と行きたいところだけど、相手の戦い方が分からない以上、突っ込むのは愚策だ。

いつでも、[猛吹雪]を抜けるようにしながら、相手の様子を伺う。


「あれ、来ないのかい?なら、こちらから行かせていただこう。[ウインドカッター]!」


向こうも、小手調べのようで、風の下級魔法である[ウインドカッター]を放ってくる。


「結界[魔結界]」


イライオは風魔法が得意ならしいので、避けるより、相手の動向を常に確認できるように、[魔結界]で確実に防ぎつつ、警戒は怠らない。


「厄介だね、それ。[エアショット]」

これもまた下級風魔法。こんなものが[魔結界]を貫通できるわけもなく、空気の塊は結界にぶつかり、四散する。それを見たイライオは顔をしかめる。


「魔法がだめなら、剣はどうかな?」


そう言って接近してくるイライオ。繰り出されるレイピアはなるべく最小限の動きで対処しながら、反撃していく。互いの攻防は30秒ほど続いた。


かぜの「[ハヤブサ]!」


急に(スキル)を繰り出してきた。だが、予想は出来ていたので、レイピアを上にかちあげるようにして[一閃]を放つ。目論見通りにレイピアをはじくことができた。


「[ダンシングウインド]!」


イライオの周りを風が回りだすが、それぞれが意思を持っているかのように、様々な軌道を描くようにして、風はぐるぐる回っている。だが、問題はそこではなく、イライオの持っていたレイピアが、風に運ばれ、またイライオの手に帰ってきた。


「風は友達。そう思わないかい?」


渦巻く風には、ウインドカッターが混じりつつ、周囲には、エアショットをばらまいている。

かなりの魔力を消費するはずなのに、全く消費しているように見えないのは、彼が実力者であることの証明だ。しかし、こちらには[魔結界]がある今、それは無いに等しい。


「しらないね。[刹那一閃]」


風の渦へと飛び込み、中心にいるイライオに肉薄し、刀を振るう。が、それは難なく躱されてしまった。


「な!?」


「私はこの風の中なら、無敵さ、いかに迅速な一撃も、風が止めれば、迅速とは言えない、逆に友である、

 私の動きは風が助けてくれる。さあ、私を倒せるのかい?」


イライオは笑顔で、挑発してくる。とにかく、種が分かってしまえば何とかなるだろう、そう思いながら、[猛吹雪一閃]を風の渦にぶつけてみる。結果はしばらくお互いでぶつかり合い、吹雪が無くなる。それだけだった。いくら風魔法が得意と言っても、ここまでできるものなのか、いや、これぐらいできないとおかしいとも言うべきか、人数不利の中とはいえ、フーラ達が苦戦を強いられるのだから。


『...!...イ!...レイ!』


メディの声だ。さっきから呼んでくれていたようだ。正直、何をしてくるか分からない相手を前に意識を他の事には割きたくないけど、わざわざ念話で呼びかけてくるほどだ。何かあるのだろう。


『何?あまり、意識を向けておかないでいい相手ではなさそうなんだけど。』


『分かってるわよ、そのくらい。とにかく、注意しなさい。あいつ、精霊と契約しているわ。』


『!!』


驚きのあまり声が出ない。だけど、予想できなかったわけではない。これだけの自由度が高く、自在に操るほどの魔法の使い手、しかも、これだけ強ければ、まだ手札はあるだろう。これは序の口、そう考えるべきだ。


『あんたも予想できたんだから、やるべきことは分かるわよね?』


『ああ、僕だって、メディと契約しているんだから。魔法が苦手でも、氷は...ね。』


『じゃあ、心配はいらないわね。あんたが気にかけている人も心配しているし、頑張りなさいよ!』


最後の言葉をぶっきらぼうに言うと、乱暴に念話を切られた。一時的に心をつなぐわけなんだから、乱暴に切られると、ちょっと魔力が持ってかれるんだけど...。まあいいや。


「一人作戦会議は終わったかね?」


「ああ、ばっちりさ。ここからはペース上げていくよ?ついてこれるの?」


軽く挑発していく、勿論、こいつがそれに乗ることは天地がひっくり返ってもあり得ないだろうけど。


「だれに言っているんだい。私は風の貴公子。負けるわけがないさ。」


「そっか手加減は無用だね。[吹雪]!」


さっきの僕が放ったまがい物の吹雪ではなく、精霊に借りた強烈な一撃。それはイライオのまわりの風にぶつかり、どちらも消えた。


「ふむ、僕のダンシングウインドを破るとは、次はこちらから行くぞ。[タイフーン]!」


純粋な暴風。マナのものとは違い、そこに風の刃は無い代わりに、風の勢いは、いつ吹き飛ばされてもおかしくなさそうだ。まともに当たれば命に関わる。否、死だ。ここで死ぬことは無いけれど。


「結界[魔結界]」


より強度なものに張りなおす。暴風が吹き荒れる中、次の精霊魔法を使う。


[白銀世界](ワールド・フローズン)


大気の流れは空気から凍り付き、ただの風なんてこのきらきらと白銀色に輝く氷と同化するのみ、

空気から凍らせたため、レイの周囲は球体のような氷塊が出来上がっていた。


「[氷柱乱れ撃ち]」


僕は周りの氷塊を分解し、適当に分解してイライオへと飛ばす。


「なかなかやるね。[ダンシングウインド]」


またもやイライオの周囲を渦巻く風。氷柱はすべて吹き飛ばされ、壁にぶつかって砕け散った。


「居合[吹雪ノ舞]」


抜刀術を用いた[吹雪ノ舞]。メディの力がこもり、風を切り裂く、刃と化す。自分の風の鎧をいともたやすく切り裂いていく僕をみて、さすがののイライオもこれにはたまらず、後退する。


「[トルネードカノン]!」


魔力の収束を感じて、とっさにその場を飛びのく、すぐ横を、竜巻が通り過ぎていった。

恐らく、[魔結界]では防げたかは微妙なところだ。生身で受ければ...。なんていうのは言うまでもない。

しかし、こんな威力を無詠唱で打つ辺、イライオはそうとう努力したことが分かる。だけど、やられたらやり返さないとね。


「[凍結波動]」


魔力を圧縮し、メディの氷の力を借りて、純粋な氷属性の神気を放つ。これを凌ごうと思えば、ただの魔力では不可能だ。扇状に放っているので、防ぐしかない。


「くっ、[エレメントフォース]!」


なにかを纏ったイライオ。波動が通り過ぎても、凍る様子はない。しかし、波動が通ったところは完全に凍り付いていて、それが、威力を物語っている。そのうえで、あれを耐えたのはすごいけど、一体、何を纏っているんだろう?


「私をここまで追い詰めたのは、我が姫君と、君だけだ。賞賛に値する。」


それだけ言うと、レイピアを構え一気に距離を詰めてきた。


「まだっ、隠してっ、いたのかっ。」


レイピアを軽くはじいたり、受け流しながら問う。


「これを使ってもついてこれるとは、さすが我が姫君が認めた男。だが、ここまでだ!」


気配を感じてとっさに後ろを振り向く、そこにはメディと同じワンピース、だけどそれは若草色のワンピース、そして、背中には羽が生えている。


「精霊!?」


サポートのみだと思っていたのに。


「[ダウンバースト]」


さっきの竜巻と同じほどのとてつもない風を受けて、僕は闘技場の端へと吹き飛ばされた。


「がはっ。」


壁に強く体を打ち付けられて、背中に強い衝撃が走る。痛むが、何とかなった。伊達に創造神の修業を受けえているだけある。


「まさか、これも耐えるとはね、完全に予想外だ。姫君はこれで、沈んだというのに。」


立ち上がった僕をみて、イライオは動揺する。


「生憎、それだけで、死ぬほど軟な体ではないからなぁ。一枚切らせてもらうよ。」


[人精一体]は時間が足りない。[鬼人化]はここで使うわけにはいかない。となると、素早く使える方かな。


『メディ。同一化よろしく。』


『了解。あのイライオってやつ、結構精霊の扱いに慣れてるわね。』


『だね。んじゃ、よろしく。』


同一化は足し算のようなもので、詠唱は特にいらない。ちなみに、[人精一体]は掛け算のようなもので、

一気に強くなるけど、心から、合わさって、絡み合うようなイメージだ。故に、詠唱でお互いをつなぎ合わせる必要があるので、詠唱する。主にはその違いだ。


「[精霊同一化]」









固有名詞紹介


精霊魔法:魔法は理を無視できる存在。反対に精霊魔法は理そのもの。魔法と精霊魔法がぶつかると、無     理やり理が書き入れられ、術式などが崩壊する。しかし、この情報はあまり知られていない。

     それは、精霊と契約している人が極端に少ないからである。


精霊同一化:契約者と精霊の視界などの五感をリンクさせ、純粋な戦闘力の増加や精霊の力が直接送られ      るので、精霊魔法がより高位なものが使えたり、魔法と精霊魔法の合体技、絶対魔法が使え      る人もいる。精霊との信頼が強くなると、完全な同一化ができる。レイで言えば[人精一体]

      であり、同一化では、精霊は契約者と会話が行えるだけだが、完全版は通常時とほぼ同じ行      動がとれる。同じように、精霊の力が武器に宿る、“精霊武装”も存在する。

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