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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
三章 氷精霊と魔法剣士
55/75

お互いの嫉妬

sideフーラ


私は改めて思った。彼が遠いところにいることを。

そして、彼と共に歩むのはあの精霊が適任であることを自覚しつつも、私は彼女に嫉妬した。

後半は完全にお荷物でしかなかった自分にも苛々する。


試合後、私たちは先生に褒められたし、クラスメイトも興奮していたけど、

私個人の活躍は2対2の動きとしてはマナ達にも劣る。


どちらにしても、彼にはあの精霊が付いていれば、私がいなくても勝っていた。

それは紛れもない事実。マナにビッグバンを撃たれた時点で負けたと思ってしまった。


私が落ち込んでいたときに模擬戦をした時もそれにやられていたし、

あの高密度に圧縮された魔力となんでも溶かすほどの熱量を持ったあの火球には、

私にはどうこう出来る問題ではなかった。


しかし、彼はそれを()()させた。これには誰もが驚いていた。


私は力が欲しい。これだけじゃまだ足りない。


sideレイ


まさか、これほどまで強くなっているとは思わなかった。

マナは下手をすれば大軍を全滅さしかねない魔法。


エインも僕の結界を易々と壊すほどのパワー。


フーラは僕に近いスピード。


鬼人化すれば余裕ではあるけど、メディの力も借りずに2対1をすれば負ける自信がある。

ドラゴンも倒せるわけだ。


あの後は、クラスメイトと戦ったりしたけど瞬殺だった。

でも、予想以上の強さを全員が持っていた。この年代で持つ実力ではない。


気がかりなことと言えば、フーラが悔しそうにしていたことぐらいかな。

どうしてかはさっぱり分からないので、触れないことにしておく。










放課後。僕はグラン先生に呼び出された。


「えーと、前に行ったところ...。これかな?元生徒指導室とか言ってたし。」


教室のドアの上にある木版には薄れた文字で生徒指導室と書かれている。

しかし、ドアにも木版があり、濃く、[倉庫]と書かれていた。


コンコン


軽くノックする。


「レイです。入ってよろしいですか?」


「別に底まで改まって言う必要はないぞ。さあ、入ってこい。」


許可が出たので、ドアを開け中に入る。


「急に呼び出して悪いな。」


「大丈夫ですよ。それで、何の御用ですか?」


「用はもうすぐ始まるトーナメントの事だ。」


「はい。」


とりあえず返事を返す。なんの用なのか予想がつかない。


「簡単に言えば、お貴族様の我儘だ。」


「面倒な匂いしかしませんね...。」


でも、あくまで公平を掲げている学校側がそんなことを許していいんだろうか?


「といっても、詳しいことは俺にも分からない。俺はレイを連れて来いと言われただけだからな。」


「それ、大丈夫なんですか?」


「まあ、評判は悪くないし、十中八九、フーラの事だろうなぁ。」


え、フーラ?なんかやってしまったとかで、それの腹いせ?


「どういうことですか?」


「そいつはイライオってやつなんだが、フーラをひどく気に入っている。」


「はあ。」


「で、何度もアプローチを仕掛けたようでな、ことごとくフーラに断れていたが、全くめげない。」


フーラはそういうこと興味なさそうだしなぁ。


「それが今まで2年間続いたわけだ。そこに学校中でフーラの思い人と噂されるお前がやってきた。」


「え!?ちょっと待ってください。なんでそんなうわさが?」


どこからそんな根も葉もないうわさが...。


「お前、気づいてないのか?普段感情を出さない分、色々と過剰なところはあっただろ?」


そういわれてみれば、僕が教室に来た時にフーラは号泣していて、僕に近寄ってきたかと思えば、

無言で頭を預けられた。どうすればいいか分からなかったので、しばらく胸を貸して、頭を撫でていた。


「心当たりはありますね...。」


本当に僕なんかを想ってくれているのかな。ただ僕は彼女に何かした覚えもないわけで、

なんか変な物でも食べてしまったのかな?なんだか混乱してきた。仮にそうなら嬉しい限りだなぁ。


「レイを倒せればチャンスがと思ったんだろうな、それで呼んで来いとなった。そんなところだ。」


「なるほど。」


なざこんなに鼓動が早くなっているかは分からない。深呼吸をして落ち着かせる。


「明日の放課後、第一実技室に来い。だそうだ。イライオは貴族組の中で最強だ。気を抜くなよ。」


「はい!」


「じゃあ、話も終わったことだし、飯でも食いに行くかぁ。お前も来るか?」


「いえ、少し用事があるので、では失礼します。」


僕は早歩きで教室をでた。

顔がにやけてしまうけど、元に戻す。なんだか気分はとてもよかった。








sideフーラ


「なるほどね、彼の隣で戦いたいと。でも、全然及ばない力を持っている。

 それに追いつくにはどうすればいいか。そんなところかしら?」


「はい。」


私はミル先生にさっきの試合の事と悩みを打ち明けた。


「私も、校長として、この学校では最強と胸を張って言えるけど、彼は私も本気を出さないと無理ね。」


そんなに...。ミル先生は冒険者をやっていたころは★3なのに。


「ポレットの息子ってことはハーフのはずだからね。彼が全力を出せば、そんなところよ。」


「ハーフ?」


見た目はとてもハーフには見えない。


「レイの母のポレットは古代種族の鬼人族。ハーフだから角は普段は見えないわね。」


鬼人族...。聞いた事しかない、人間の大軍をたった数百人で100万に近くを壊滅させた種族。

でも、その時に鬼人族は絶滅したはず。


「生き残りはいるのよ、と言っても純血はポレットだけ。残りはハーフね。」


「...。レイが鬼でも変わりない。」


「さすが、一途だねぇ、青春だねぇ。ちょっと!ちょっと待って、私が悪かったから刺すのは止めてぇ!」


腹が立ったので細剣を振るった。慌てたふりをしているだけで、この人にはかすりもしない。


「話を戻すわね。娘の悩みは何とかしてあげないとね☆」


ヒュン


「ストーップ!それ剣、当たったら痛いから直して!」


「どうせ....。防げるんでしょ?」


「話が進まないから真面目に話すわ。それとさっきの質問は当り前よ、私は校長よ。」


理由になってない。


「とにかく、私が直々に修業をつけてあげるわ。」


「ありがとう!」


待ってて、レイ。すぐに追いついて見せるから。








sideレイ


「よしもういいぞ、メディ。」


僕はメディに頼まれて、と言うより、命令されて町の人気のない場所にやってきた。


「ふう、やっとね。えい!」


出てくるなり、手に持っていた氷の棒。長さは1フラット程の棒を僕に叩きつけてきた。


「痛っ!いきなり何するの!」


「別に、少し腹が立っただけよ。」


とメディは言うなりそっぽを向いた。全く持って理解不能としか言えない。


「まるで八つ当たり...。」


「自分の胸に聞きなさい!じゃあね。」


怒鳴ったと思えばすぐに帰っていった。理解できない...。


「とりあえずご飯食べるか。」


僕は店を探しに大通りへと戻っていった。









sideメディ


「あの鈍感!どうして気づかないの!?あのフーラを思っているのかしら。」


私はこの苛々を収める方法を知りたい。あの鈍感は私の気持ちに全く気付かない。

全く。ではないかもしれないけど、私の事を異性としては見ていないのは確かね。

精霊だから当たり前なのかもしれないけれど。


少し前に、ピーナ様に精霊が他の種族と添い遂げることがあったかを尋ねた。

ピーナ様は人間と魔人はあると言った。


人間は精霊からすれば短命ゆえに、思い人であっても、添い遂げることは少ないらしいけれど、

魔人は生まれつき体の半分が魔力で構築されていて、精霊と同じぐらいの寿命をもつので珍しくないとか。


「そういえば、レイ君はハーフだから貴方よりは長くないかもしれないけれど、

 多くの時間を過ごせるわね。もしかして、メディ。彼の事が好きなの?」


と言っていたピーナ様。恥ずかしくてあの時は逃げ出した。


「あー、もう!どれもこれも全部アイツのせいだわ!後3回はやらないと気が済まないわ!」


私はベッドの上で悶えたりしていた自分をレイのせいにすることにした。


「あのフーラていう女とは一度話し合いをしたいわね。」


別に恨みは無いし、手荒な真似をするわけではないけれど、一度レイをどう思っているかを聞きたい。


私はケリーに頼んでビュルンデルに転移させてもらい、フーラと言う女性を探すことにした。










次の投稿は7月23日予定です

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