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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
二章 空白の5年間後編 帰還への旅路
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それぞれの思い 後編

短めですがご了承ください。

sideグラン


あいつと再会したのは俺がとあることをどうしようか考えていた時だ。


生徒の姿が視界の端に見えたので、注意しようとした。

その日は卒業生トーナメント、またの名を最高学年トーナメントに向けての会議があったので、

あまり関係は無いが生徒には来ないように言ってあったはずだった。


向こうもばったりと俺に出くわしたことは予想がいだったらしいが、

俺からしたら予想外なんてレベルではないし、俺が抱えていた問題がほとんど解決した。

問題と言うのは、トーナメントに出場するエイン、フーラ、マナの三人パーティの事だ。

俺は何とかして四人にしたかったが、三人全員が即答で断った。

理由は足手まとい、他にはレイを忘れるわけにはいかないから。

後者が7割らしい、気持ちは分かる。しかし、もったいないのだ。

俺を難なくではないが倒せる三人がそろっている。こんなことは今まで平民クラスでは一度もなかった。

しかし、貴族だって弱くないし、向こうは四人だ。たった一人差、されど一人差。

勝ち目は薄い。しかし、レイが帰ってきたことは俺に光明をもたらした。


編入試験も最高レベルの点数だった。実技では瞬殺、筆記もほとんどが正解。


俺はレイの為にもいろいろな手続きをさっさと済ませた。


学校長もあの谷から落ちて帰ってきたことにはとても驚いていた。


「あそこから帰ってきたのですか...。と言うことは彼にも会ったのでしょうか...。」


ぽつりと漏らした最後の言葉はよく聞き取れなかったが、表情は驚いていた。


初めて会った時からただ物ではなさそうと思っていたが、これほどまでとは思わなかった。

あいつの息子だけあるな...。あいつは嬉しそうにレイの話をよくしていた。


「俺が思いついたロマンあふれる技をどんどん覚えていくんだ!

 毎日が楽しくてしょうがないさ、あの[アニメ]とかの技とかもいいかもなぁ。」


あにめと言うのはよく分からなかったが、楽しそうに子供を育てているのはよくわかった。

刀もこの辺りじゃ珍しい。どうせあいつが創って渡したんだろう。


次の日はちょいと立て込んだせいと、レイの編入の関係で教室に入るのが遅れた。

勿論次の授業に支障はない。案の定の教室はいろんな話でいっぱいだ。


俺は少しいたずら心で、待ったいぶらせながら話を進めた。

その後は俺が邪魔するのも悪いと思ってレイにバトンタッチして次の授業である実技の準備をしに行った。

これからのあいつらが楽しみだなぁ。あいつらは間違いなく有名になる。

俺はそう確信した。












sideフーラ


彼を例えるなら私の暗闇をすべて取っ払い照らしてくれた太陽のよう。

学校長を例えるなら私を優しく見守る月のよう。

マナを例えるならいつもそばに寄り添って優しくなでてくれる風のよう。

エインを例えるならいつもどっしりと構えている竜のよう。


私にとって、誰一人欠けてほしくない人達。

だけど、もうすでにかけらは零れ落ちてしまった。

だからこそ私はこのかけらを落とさないように、自分を鍛え続けた。

それでも、グラン先生に圧勝できるわけではない。

私は前の模擬戦で恐らく決勝で当たるであろう貴族のチームと戦った。

結果は敗北。誰かが必ず二対一になってしまい、やられてしまう。

二人になってしまえば勝ち目なんてない。

私の魔法剣はまだ未熟だ。最上級をいまだに使えない。

マナは火だけなら最上級の魔法を扱える。私は行き詰ってしまった。

私の道を照らしてくれる太陽()はもうとっくにいない。










彼は階段でたまたま躓いた私を優しく受け止めた。

そこには学校長とは違う愛情のようなものがあった。

今の私では絶対に得れない何かがそこにはあった。

私は叫んで問いたかった。それは何、と。でも聞けなかった。


彼は私を下した、そして彼は私の頭をポンポンと優しく撫でるように叩いた。

彼の手にも魔力がこもっているような温かさがあった。まさしくそれは太陽の光だった。


「大丈夫?」


「...。あ、うん。」


私は少し遅れて、返事をした。まだ頭には彼のぬくもりがこもっていた。


「...。ありがとう。」


「どういたしまして。」


彼は微笑んだ。その笑みで私は新天地での新しい生活で抱いていた疑心暗鬼が消え去った気がした。

なぜかは分からない。


それ以降彼をなんとなく目で追うようになっていた。

それがなぜかは私には全く分からなかったし、分かろうともしなかった。

それで下手に彼との関係を壊したくなかったからかもしれない。


彼を失った時にはまるで太陽が消え去ったかのように目の前が真っ暗になった。

体は冷え切ったように動かない。


私はあの時何もできなかった。あのレッサードラゴンに大きな傷一つすら残せなかった。


真っ黒になった私は感情の色すらも消えようとしていた。

だけど、代わりに明かりをともしてくれたのはマナだった。

エインも相変わらずの元気で私を励ましてくれた。

だから私はここまでやってこれたけど、また色が消えていくようなそんな感じがした。


だけど、もし色が消えるなら、その前に彼の遺体だけでもいい、

それを確認したかった。もしかしたら生きているかもしれない。

そんな1%にも満たないであろう希望を燃料にして私は暗闇を照らしてきた。

だけど、もう炎はいらなくなった。


何故なら。







太陽が昇ってきたから。

夜に予定を更新します。(活動報告)

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