この世界の力について
教室に入り席へと向かう。
席に座ると僕の前にいるエインが話しかけてきた。
「おはよう!昨日は悔しかったか?
もしあのがくいんちょうとかいう人に止められていないと
負けてたよな。レイ。」
エインの学院長の発音がぎこちないが仕方ない、
この学校は出来てから2年しか経っていない。
こういう類のは疎いのかも知れない。
(エインが疎いのではなく出来てばかりの学校について
レイが常識のように話しているだけ。)
「(父さんは学校について色々教えてくれたけど
エインみたいなのが普通なのかな?)」
「エインこそ僕よりあっさりと負けたじゃないか。」
すこしムキになるレイ、ちなみに先生がレイに放った
”暴風”は、先生の切り札であり、元とはいえこの町の総兵士長である
嵐のグランと呼ばれたグラン先生の切り札をまともに受けきれるのは
この辺りではここの学院長ぐらいだろう。
レイの場合受け止めれたとは言えない、あの技は1分程
続く、数秒しか耐えていないレイでは学院長が止めていなければ
あと数秒続けていたならレイは気絶したまま舞台の外側にいただろう。
「俺はいいんだよ!」
「(理不尽だ!!)」
暴論を言われたレイは思わずそう思った。
「それにお前はあの時本気を出していないだろ。」
「!!!!!」
「その様子だと当たりだろ、真剣に聞く、
何故お前は本気で戦わなかった、いや違うな、
何故お前は切り札を使わなかったんだ?」
2回目の質問でより核心をついた質問に慌てるレイ。
確かにレイは本気で戦ってはいたが切り札を使ってはいない、
しかしそれは出し惜しみした訳ではなく、ちゃんとした理由があるのだ。
だがエインには隠していたことがばれてしまった、
どうすればいいのか悩むレイ、それを見たエインは
「ここじゃ話しにくいか?安心しろ、まだ先生は来て
いないからトイレにいけばいい、俺はこう見えて口が堅いから
この話は絶対に漏らさない。」
「......分かった、行こう。
あと、盗み聞きは良くないよフーラ。」
レイはエインに返事しつつフーラがいる左の席を向いて言う。
「っ!!」
「レイ、いっそのことその子にもいえば?変にこのことを
広められるほうがお前にとってデメリットがでかい。」
「それもそうだな.....。フーラどうする?聞きたいなら
教えるけど。」
少し考えるフーラ、しかし答えは変わらないようだ。
「うん。」
「分かった、でもフーラがいるとトイレじゃ無理だからな~。」
エインはそう嘆く。
「結界[結界音遮断]」
レイはそう呟くと3人を包む目にも見えない薄い結界が覆う。
「ん?なんかいったか?レイ。」
「えーと、僕ら3人の音が聞こえなくなる結界かな。」
「話せるなら何でもいい....早く教えて。」
フーラがそう言ってレイを急かす。
「まず使わなかった理由からかな、
理由は単純に1つ目の切り札が町にまで被害が及ぶ地形破壊を起こすから、
2つ目の切り札はまだ制御できていないからだよ。」
「ちょっと待て、2つ目はともかく最初の町にまでって
どういうことだよ、俺たちが実技試験に使った部屋は
第二実技室のはず、実技室の舞台は...何だっけ
えっと..魔力..」
「魔力気力無効フィールドだよエイン。
でも..そんな大破壊を起こすような技は最低でもどちらかを
使わないといけないはず。」
「魔力気力無効フィールドは周りに被害を出さないためにあるけど
何の力もない攻撃なら通る。
又は”魔力でもなく気力でもない力による攻撃”なら?」
「は?そんな技....」
「.....ある。」
「フーラお前まで何を言っているんだ。」
そんな技あるわけないと言いたげに少し強く言葉を放つエイン。
「...神気..?」
「正解。」
「なんだよその神気って。」
「少し長くなるよ、まず、魔力は個人が持っている
生命力を使う気力とは違う力それはわかるよね?」
「当たり前だ。」
当然というように頭を2回ふるエイン。
「とりあえず神気は後、次は霊気について、これは知ってる?」
「聞いた事ぐらいは....、確か魔力と気力を混ぜたやつだっけ?」
「まあその認識でいいかな。詳しくいうと魔力と気力を全く同じ量
混ぜると出来る、これが霊気。で、これに自分の血を混ぜると
神気になる、ということ。」
「え?え?」
エインは理解が追いついていない。
「でも神気はどうやってつかうの?」
フーラは首をかしげつつ聞いてくる。
「神気は血を使うから多用はもちろんできない。代わりに
起死回生の一手ともなる。でもこれを使う技なんて全然ないし
下手に武器を強化しても神気に耐え切れず爆発する。」
「じゃあそんな技どうやって使うんだよ!」
「例えばエインだったら、まず霊気を使う技を習得する。
その後、その技を神気で強化する。これが簡単な例かな。」
「..私、霊気を使う技ある...。」
「「え!」」
フーラの突然の告白に驚く二人。
それもそうだ、霊気の技などこの年頃で習得しているのは極々稀だ。
「どんな技なんだ?」
興奮した様子で聞くエイン。
「今日は実技の時間があるからその時に....。」
「おう、いいぜ!」
見れると聞いてさらにテンションが上がるエイン。
魔法剣か聞こうとした時。
ガガー。扉の開く音だ。
その音共にグラン先生が入ってきた。
「お前ら~席に座れ、朝礼を始めるぞ!」
「エイン、フーラ、この話は後でだ。」
「ああ。」
「うん。」
こうして今日も一日が始まった...。
次回は今週の土曜日の予定です