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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
二章 空白の5年間後編 帰還への旅路
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帰還の始まり

少し遅れました。

「これが最後の修業、いえ、試練よ。」


最後の修業の日の朝、軽く体を温めた後ピーナにいきなり言われた言葉。


「はい。」


僕は静かに返事をした。その試練の内容もなんとなく察していた。


「レイ君もなんとなく察していたはずだけど、私と戦ってもらうわ。本気の私とね。」


毎日一番最後にピーナとの模擬戦を行うが、それがピーナの何割かは分からない。

だから、本気を出したピーナがどれほど強いかは想像つかない。


「そうね私にわかりやすい一撃。かすり傷じゃ駄目よ。それを私に一撃でも当てれたらいいわ。」


単純明快な試練の内容。しかし、今まででその条件をクリアした一撃は一度もできていない。


「さて、始めるわよ。」


「はい!」


ピーナの声と共に何もない空間から一軒家程の岩がいくつも落ちてきた。

所詮僕らにとってはあいさつ代わりだ。


僕も挨拶を返すように刀を振るわせる。

一閃。そのきらめきが見えた時には岩は細切れになっていた。














試練開始から一時間程。

僕からすると3時間はとっくに経ったような気がする。

何故時間が分かるかと言えば腕時計をチラ見したから。


今さっきお互いに大技を放ち、一度一息ついたところ。

ここで一息ついた相手を狙う、そんな選択肢もあるが、常に警戒心が緩んでいないお互いを

攻撃することは愚の骨頂だ。即座に対応され反撃をもらうことだろう。

少なくとも基礎能力で負けている僕がやるにはリスクが大きい。

勿論こういう奇襲で倒すしか方法が無いとも言える。


後は...。回避不能の超広範囲攻撃。


「四重結界」


「結界[完全防壁] 結界[魔絶結界] 結界[光絶結界] 結界[偽完全盾](デミイージス)


この五年間での主な成長の一つとしてこの鬼人化していない状態での四重結界が発動可能な点。

残念ながら、お母さんが使っていた[完全盾](イージス)は使えなかった。

だが、その真似だけでも十分な防御力を誇る僕の中では今のところ最強の結界。


しかし、結界使い言うのは、固有の結界、自分だけの結界を持っている。

そういう結界は自分用に勝手に調整していて、他人にはただの真似にしかならない。

だから、お母さんの固有結界[完全盾](イージス)は使えなかった。


僕の固有結界はまだない。お母さんが言うには固有結界にはその人の思いが形になるらしい。


話がそれたが、僕は四つの結界を展開し、巫術の時間稼ぎをする。


「させるわけないでしょう!」


ピーナが巫術無視してくれる訳もなく、太陽の如き閃光(サンシャインバースト)

放ち妨害してくるが、ピーナが光魔法を得意としているのは知っていたので、

あらかじめ[光絶結界]を展開している。魔法は確定していたので[魔絶結界]は勿論の事、

なんとなく癖で展開した[完全防壁]。

それに加えて[偽完全盾](デミイージス)という完全体制によって完璧に防いだ。


「神よ、我は願う、昔、全てを滅ぼした刀を祈りの対価に願う。巫術[全テヲ滅ボス巨大ナ刀]」


そして、発動。

あの時をふと思い出したが、今はそんな雑念は振り払い。

山ほどある刀を振るう。案の定、避ける場所は上しかないので飛びあがったピーナ。


「神よ、我は願う、我の守護の力を使い、神の力をも使い、

 我の敵を壊れぬ結界に閉じ込めることを願う。巫術結界[金剛不壊]」


僕は一年前から使えるようになった巫術結界を他人に使うのを応用し、ピーナを拘束することに成功した。


「居合[刹那一閃]」


僕は結界をすり抜けることが可能なので、拘束されているピーナに一撃を与えたつもりだったが、

その瞬間ピーナの姿が消えた。転移魔法だ。しかし、これには弱点がある。

無詠唱の転移魔法は行ける場所に大幅な制限がかかる。

しかもその後はコンマ5秒は動けない、勿論もう一回転移なんてできない。

コンマ5秒そのほんの一瞬は戦いには大きな影響を与える。


「[刹那返し]」


振り切った刀をさっき通った軌道をなぞるようにさらに早く返し、神気による衝撃波を飛ばす。

それがピーナに着弾するまではコンマ三秒もかからない。


勝った。


だけど、確信は持てなかった。

本気のピーナがこんなあっさり負けるはずがないという期待にも似たものがあったからだ。


だから....。


「甘い!!」


飛来した衝撃波を無理やり動かした右腕で弾き飛ばしたのを見て、安心感を覚えつつ、

僕も全力を出すことにした。


「神よ、我は願う、祈りの対価に今は滅びし、古の一族、我の鬼人の血と魂を呼び起せ!」


詠唱する必要はなかったが、気合を入れるためにもしてみた。


「大巫術![鬼人化]」


頭から角が生えてくる感覚には慣れた。

まあ、いまでも、少しゾワってするけど。


「第二ラウンドと行きましょう♪」
















ピーナが放つ魔法を僕がそれを切り裂き、辺りはさっきからずっと光っている。


キリが無い。

鬼人化も後5分、残る5分で決着をつけないと、ジリ貧で負けてしまう。

僕は勝負に出ることにした。


「神よ、我は願う、祈りの対価に神速を願う。巫術[神速化]」


先ほどまでとは状況は一転、僕に向かってくる魔法を避けれるようになり、

ピーナが少しずつ後退している。


「くっ、太陽の光如き雨(サンシャインレイン)!」


先ほどの魔法より速度に重点を置いた魔法。

だけど、僕には好都合でしかない。なぜなら、その程度の威力ならはね返せるから。


「結界[反射魔結界]」


「忘れてたわ....。」


予想外。と言うように少し肩を落とすピーナ。

しかしすぐに魔法による弾幕が飛んできた。今度は反射できないように絶妙な加減を加えて。


「居合[刹那一閃]」


神速を得た今のレイにとって、刹那など止まって見えるが、ピーナには瞬間移動のように見えるはず。


しかし、それもさらに加速したピーナに対応された。

まだもう一段解隠していたようだ。


まだ力を隠しているかもしれないけど、ここで決着をつけないと負ける。

その本能に従い、さらに神気を使い加速する。


鬼人族ゆえに神気を素早く血を使うことなく作れるが、その根源である気力と魔力が尽きかけている。


「桜ノ舞・鬼」


赤く染まる[猛吹雪]を神速で振るう。

[猛吹雪]もそれに応えるように白く光り、さらに加速する。


ピーナも負けじと、光を纏わせたこぶしで舞うように迎撃してくる。


「吹雪ノ舞・鬼」


不可視の5連撃の追い打ちを放つはずの吹雪ノ舞は何か少し濁った色の光のこぶしで防御された。


剣閃が煌めき、それは星の合唱のようにいろいろの場所からきらきらとと言う音が聞こえそうなほどの光。

見るものを見とれさせる光ではあるが、それがたった二人の戦闘によって引き起こされているとは

誰も分からないであろう。


「居合[疾風一閃]」


その風は神の息吹。心地よく、全てを吹き飛ばす一陣の風。

だが、世界を作りし相手にはどう見えるのかは分からない。もしかしたら微風かもしれない。


どれもこぶしで相殺され、時間も残りわずか、しかし、希望は見えない。


あるとすれば...。


「居合[猛吹雪一閃]!」


長年積み上げてきた一閃。それと相棒の力。2つが交わった渾身の一撃。


流れ星(シューティングスター)!」


ピーナの手から放たれた一筋と呼ぶにはあまりにも太い極光光線。

それはいともたやすく吹雪を飛散させた。そう、ピーナにはまだ全然余力はあった。

はかなく散る()()()


「レイ、もうあなたは限界のはずよ、あきらめなさい。」


優しく語り掛けるピーナ。


「あなたの強さは十分。あれだけあれば、今後次第で魔王にだって....。」


「ピーナ。まだ、終わってないです。」


その言葉と共に咲きほこる氷の花たち。

それは数えきれないほどで、光を反射しきらきらと光っている。

そして、


「散りゆく。」


花弁は目の前を埋め尽くすほど。避けるところもない、レイを中心として咲いた花。

それはすべて散ったわけでなく、まだ残っている。それは絶対領域のよう。どうやっても近づけない。


「バリアフォース!」


レイの結界に似た半透明の球体。それになすすべなく割れていく氷の花弁。

その音がやんだ時、レイはいなかった。


「ど、どこ!?」


いきなりの急展開に冷静でなかったピーナは死角に警戒するということを忘れていた。


「一閃!」


後ろから響く声に反応できず、右腕が飛んでいく。


「見事。あなたの勝ちよ。」


「全力勝負ならとっくに負けてましたよ。」


こうして、無事帰還への切符を手に入れたレイであった。





次も二週間後です。

次からは2週間に一回なので、5000字前後で書いていきます。 

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