番外編 妖精の甘い贈り物
お待たせしました。ひと月も離れている日なのに同時なのは許してください。
「最近大変そうだね、レイ。」
ピーナ様が用意してくれたベッドで熟睡しているレイ。
なぜこうなっているかと言えば、現在レイは魔王を倒すためにピーナ様から鍛えてもらっているから。
あの日から2年ほど経過し、そろそろ慣れては来ているみたいだけど、
最近より厳しくなったとかで夕食を食べてお風呂に入った後にベッドに倒れ込みそのまま夢の中。
「そうですね~。あたしたちも何か~応援できるようなことがあれば~いいんですけどね~。」
私達も時々ピーナ様から精霊魔法を教えてもらうことはあるけど、
いまだに新しいのが習得できない。でも、今使えるものはかなり使いこなすことは出来ている。
ガチャリ キーー バタン
ドアが開き閉まる音。ピーナ様が帰ってきたみたい。
「レイはどうですか?」
「そうね、着実に強くなってきているわ。この世界の住民なのに恐ろしい強さよ。」
「ピーナさま~。あたしたちにも~レイを応援できるようなことありますか~?」
私が聞こうと思っていたことをケリーが聞いてくれた。
「ん~....。異世界の文化で面白いのがあるんだけど。それはどう?」
「どんなものなんですか?」
「あなたたちが以前戦った勇者たちの文化らしいけど、今月は運命の月でしょ?」
そういえばそうだった。ここにいると時間の感覚が分からなくなっちゃう。
「はい~。」
「こっちだと、この時期は男性から女性にだけど、異世界だと逆なの。」
「え!?それってつまり女性から男性に告白するってことですか?」
「厳密に言えば違うけど...。男性にチョコを送るの。どう?面白そうじゃない?」
「はい~。是非やりましょう~。」
「わ、私もやります。」
少し恥ずかしい気がしたけどチョコを作るのも面白そうだしやってみることにしてみた。
*
「できたっ!」
「あたしもです~。」
「お疲れ様。形はうまくできた?」
私が作ったのは無難に丸型にして、カラフルな粉状のチョコをかけている。
ケリーは星型だ。エプロンにはところどころにチョコがついていて、頑張っただな~って感じる。
私も頑張ったけどねっ!チョコを固めるときに私が冷やしていたら冷やしすぎたりしたけど....。
「「はい(~)!」
「ならよかったわ。そうね~あしたは鍛錬は軽めにしておくから、帰ってきたときに渡しておきなさい。」
そうだった。忘れてた。チョコを作るんじゃなくて渡すのが目的だった。
「チョコは預かっておくわ。冷蔵庫に入れておくから。」
「お願いします。」
私はチョコをピーナ様に預けてベットに向かう。
レイが修行を始めてから小さな小屋を拡大して私たちが寝るスペースを作ってくれた。
その寝る部屋に向かう廊下を歩いていると。レイの寝室が少し開いているのを見つけた。
「?」
すこし頭を出して覗いてみると机の上でレイは突っ伏す形で寝ていた。右手には羽ペンが握られている。
「あ。」
もう少し頭を出すと頭にのしかかられている小さなメモ帳を見つけた。
前にレイがピーナ様に頼んでいたものだったはず。
「ん~~っしょ!」
頭の下からメモ帳を引き抜く。レイがうなって一瞬慌てたけどすぐに静かな寝息が聞こえてきた。
「何書いているんだろう。」
私はメモ帳を開く。
運命の月 第一の火の日
ピーナがメモ帳をくれた。
一度日記と言う物が書いてみたくてダメもとで頼んだけど良かった。
なんだかんだで二年たったけど、ピーナはどんどん厳しくなっていくので、
いつもクタクタだ。僕も成長は感じているけどピーナがレベルを変えていくので
どのくらい強くなったかが分からない。
目に見えてわかるのは鬼人化の持続が20分になった事かな。
今日はこんな感じでいっか、寝よ。
運命の月 第一の木の日
昨日日記描くの忘れた。
[刹那一閃]を指でつかむって...。
いくら鬼人化してないからってそれはおかしい気がする。
やけになって鬼人化したけど指で止められた。
冷静さを欠いた罰でその後腕立て2000回。
鬼神化の後にやるのは地獄だ。
もう疲れたよ~。おやすみ。
運命の月 第一の土の日
そういえばもうこんな時期だけど、
色々と世話になっているメディたちに何か贈ろうかな?
何がいいだろう。何が好きかあんまり知らないんだよな~。
ケリーは甘いものが好きだけど...。
メディは...。甘いものかな?明日聞いておこう。
だからレイはこの前唐突に好きなものを聞いてきたんだ。
いきなりだからびっくりしたけど...。えっと、これが昨日のかな。
運命の月 第二の風の日
ケリーにはピーナに教えてもらって果物を混ぜたクッキーを焼いたけど、
メディはな~。
まさか好きなものが寝るって...。
僕がいきなり聞いたからかな?
いきなりそんなこと聞いたら慌てるか。
何あげたらいいだろう。明後日は練習が軽めらしいから何か探しに行こう。
明後日から決めていたってことはピーナ様...。仕組んでた?
「別に大丈夫だよね。そんなはずない。きっとない。早く寝ましょ。」
私はそっとメモ帳を机に戻し、近くにあった布団をかけてあげた。
ベッドに持って行ってあげたいけれど、私にはそこまでの力はない。
「おやすみ。レイ。」
私はそっとドアを閉じた。
翌日の夕方。
「そろそろですね~。」
「ええ。」
少しドキドキするけど渡すだけだし気にする必要なんてない。
「ただいま~。」
いつもよりはましだけどやっぱり疲れているレイが帰ってきた。
「お帰り。レイ。」
「うん、ただいま~。」
「そうそう、えっと、レ、レイに渡したいものがあるの。」
「何?珍しいね、メディがそんなこと言うなんて。」
「私だってアンタに恩を感じていることもあるし、最近がんばっているアンタを見てたらね...。」
私は何を言っているんだろう。
「そんなことは置いといて、はい。修業頑張ってね。」
「うん!ありがとう!」
「そ、そういわれると私も嬉しいわ。」
「レイさ~ん。私からもどうぞ~。」
「あ!ありがとう!どっちも開けていい?」
「ええ。」
「はい~。」
「じゃあ、遠慮なく。.....。わあ!チョコだ!ありがとう二人とも!」
「あんまり難しいものは作れなかったから無難なものにしてみたわ。」
「食べていい?」
「勿論よ(です~)」
「いただきます。」
そんな嬉しそうにチョコを食べるレイを見ながら、
内心チョコを無事に渡せてほっとしている私だった。
そういえばバレンタインチョコはもらえましたか?
それとも誰かに渡しましたか?