創造神
そろそろ中編も終わりです。
「ん......。」
え~と、確か、水晶の洞窟の色の変わる水晶の問題をやっていて、
条件道理にしたら下が開いて、いや消えて落ちてきたはずだから....。
「生きている。かな。」
最終的結論。生きているから大丈夫。
「にしてもここどこ?」
辺りは真っ白。どこを見ても白の地平線が広がるばかり、うかつに歩くことさえできない。
『メディ~!』
今は休養中だろうから返答は来ないと思うし、そもそもどうしてこんなところがあるのだろう。
こんな所じゃうかつに歩けばさらに帰れなくなりそうだ。
カキン!
目印でもつけようと地面に突き刺した刀は容易くはじかれた。
カキン!
力を込めてやってみるけど結果は同じ。はじかれる。
「このままじゃ暇だな。」
慌てるとかどうとかの問題じゃなくて、暇。これに尽きる。
「とりあえず寝ようかな。」
仮眠程度は取っておきたい。隠密空間、それに完全防壁。
最悪、完全防壁の割れる音で目覚めれば何とかなるかな。
あくまで浅く寝るだけだし、大丈夫なはず。
余りにも何もなさ過ぎて油断した僕は仮眠どころか熟睡してしまった。
*
「....真っ白。....。はっ。」
少し寝ぼけて呟き、すぐに完全に熟睡してしまったことに気付いた。
「まあ、無事だったしいいや。」
そんな楽観的な考えで頬を叩いて頭を起こす。
『ケリー!聞こえるー?』
返答なし。最近ケリーとの連絡が音信不通だけど、どこに行ってるのかな?
もしかしたら、半神精霊だからきっとその関係かな。
そういえば水晶の洞窟の広間の所に最後に試練ってあったけど、どんな試練かな。
ああ、疑問しか浮かばない。やること無いかな。
こんな真っ白な空間じゃ、眺めようにもすぐ飽きる。
真っ白の地平線からは朝日も昇ってこないし、月も昇ってこない。
青空が見える訳でも無くて、星空が見えるわけじゃない。
動物すらいないし、植物もいない。物体があるわけでもない。
感想もあったもんじゃない。だって、どこを向いても視界は白だ。
逆に少し笑ってしまうぐらいの白さ、一体僕はどうすればいいんだ。
[猛吹雪]を磨きながらのんびりしてるけど、このままじゃ本当に暇で死にそうだ。
死因、暇。とか意味が分からない。
せめて話し相手ぐらい欲しいな~。
そんな叶うことがなさそうな思い、又は期待を持ちながら念話を二人に送るけど返答なし。
『誰か返事をしてくれ~。』
「呼びました~?」
『あっケリーだ!って、え?』
今の返答は念話じゃなくて....。
とんとん
肩を叩かれた。振り返えるとケリーが....。
むにっ
見えない。頬を押されて振り向けない。
「え~と、ケリーさん、いかがなさいましたか?」
なんか変な口調になっちゃった。
「いえ~、レイさんから~念話が来たので来たんですよ~。」
「しばらく見なかったけど元気そうでよかったよ。」
「その件には~レイさんも関係があるので~、ちょっと来てください~。」
「僕にも関係ある「空間転移~」ってな」
僕が言葉を言い終える前に僕たちは真っ白な空間から姿を消した。
*
次に僕が目にした光景は木に囲まれた小さな小屋。
そして、そろい空間もその木の領域が無くなると真っ白い地平線が広がっている。
いったいこの白の空間はどこまであるんだろう。
「連れてきましたよ~。」
僕をここに連れてきたケリーはのんきにそういった。
「ケリー。ここは?」
「え~と~、神様の家ですね~。」
「神様?」
「私達からすれば~ご先祖様みたいな~、そんな感じです~。」
「あながち間違ってはいないけど、もうちょっと丁寧に説明してくれないかしら?」
声がした方を見ると精霊のように桃色の髪とワンピースを着た女性が立っていた。
「わっ!いつの間に....。」
「ふふっ。驚いた?よくここまで来たわね。歓迎するからいらっしゃい。」
そう言って、すたすたと小屋の方に歩いていき中へ入っていった。
「あれが神様?」
威厳とかは全く感じないが、なぜ桃色?もしあの女性が創造神なら、
ケリーの言っていた通り、メディやケリーのご先祖さまってことになるわけだ。
そしてこの世界を作ったのもあの女性って訳か、でもおとぎ話だと力尽きたって書いてあったはず。
でも勇者はこっちに来るとき神様としゃべるとかなんとか....。
「何ぼさっとしてるんですか~?早くいきましょうよ~。ピーちゃんのクッキー美味しいですよ~。」
ピーちゃん?さっきの女性の事かな。
ああ、ここで考えても仕方ない。歓迎してくれるんだから甘えておこう。
「ごめん、行こうか、ケリー。」
「はい~。」
ガチャ
「いらっしゃい。レイ君にはピーナ特製クッキーをごちそうするわ。勿論、ケリーちゃんにもね。」
ウインクしながら歓迎してくれたピーナ....さん。
呼び捨てでも大丈夫かな。さん付けの方がいいよね。神様だし。
目の前の朗らかな笑みを浮かべるピーナ。それに似合わぬような位、
それに必要な力も十分に持っているはずなので、彼女に敬称をつけるべきか悩んでいると、皿の音がした。
「とりあえず立ち話もなんだから座りましょ♪」
三人分の椅子を丸机の周りに並べて軽く引き、そのうちの一つの椅子に腰かけた。
丸机の中心には香ばしい香りが漂うクッキーがたくさん盛られた皿。
ますますこの女性が創造神ではないと疑ってしまうが、そのあたりも含めて聞き出そうと思い、
僕はケリーと共に椅子に腰かけた。
話始めようと思ったら、ケリーが無我夢中でクッキーを食べ始めて、
それをわが子を見るような目で肘をついて手に頬を乗せて、と。
とてもじゃないがゆっくりしゃべれる状況ではなかったので、ケリーが落ち着くまで待つことになった。
あれ、クッキー食べれてないや。