国宝 流星の紋章
話のつなぎ目に当たるので短めですが、明日の夜7時ごろにも投稿します。
楽しい買い物を済ませた次の日。
「さて、行きますか。」
メディはまだ寝ている。今は8時56分。
この時間にメディが起きていないのは珍しい。きっと昨日歩き回ったから疲れたんだろう。
僕はメディに少し乱れた布団をそっとかけなおしてあげてから部屋から出た。
*
王城前
城はとても厳しい警備で守られていて、なんとなく足を踏み出せない。
そうして城の前でうだうだしていると、兵士から声を掛けられた。
「レイ様ですか?」
「え、あ、はい。」
いきなりだったので一瞬しどろもどろになったが、何とか返した。
「では、こちらにどうぞ。国王様がお待ちです。」
その兵士はすたすたと城の方へと歩いて行った。
僕もあわててその後を追う。
城の門をくぐり、赤い絨毯で作られた道を進み、その奥の階段を上る。
すると、そこには大きな扉があった。
「国王様はとても優しい方です。多少の粗相も笑って許してくれますので、
少し心に余裕をもってお話しください。」
といって、その大きな扉を開けた。
扉の奥に広がっていたのは、先ほどまでに道のようにひかれていた赤い絨毯もあるが、
何より目を引いたのは、まるで風景のように当たり前の如く並べられた大剣たちだ。
様々な形や色の大剣が置かれていて、まるで鎌のようなものから、なんか燃えてるのもある。
後者はなんか変なケースの中に入っているので、多分大丈夫。かな?
そして、その奥には白いひげを生やして、堂々としたおじいさんがいた。
「レイ様をお連れいたしました。私はこれにて失礼させていただきます。」
一礼し、鎧をまとっているのにもかかわらず、音もなく立ち去ろうとする兵士。
ただの兵士じゃなさそう。
「いや、少し待て。」
「はっ。」
と言いつつも、視界に入るか入らないかぐらいの位置までは下がった。
「レイ殿、よい戦いを見させてもらった。あれはあくまで一種の儀式のようなものであったので、
当日に表彰式などを行えなかったことをここで詫びよう。」
今にも頭を下げそうな王様。えっと、なんていえばいいんだろう。
「いえ、全然大丈夫です!」
「そういっていただけると助かるな。」
「はあ。」
つい変な返事になってしまった。
「儂も戦いが趣味でな、中でも、己の武器のみで戦うのが好きでな、勿論観戦もだ。」
「ここにある剣を使ってですか?」
「いや、あれらは儂のコレクションじゃ、戦う時は相棒を使う。」
「相棒?」
つい聞き返してしまった。よっぽど大切に扱っている大剣なんだろう。
「ああ、分かりにくかったな、ククイ。儂のを取ってきてくれ。」
「国王様。前にも申し上げましたが、玉座の下にしまわれています。」
「そうだったか、え~、これか!」
王様が取り出したのはきらきらと輝く水晶でできた大剣。
「これは儂がまだ王子だったころに使ってたものでな、今でもたまに使っている。」
「材料も儂が自ら集めたものでな、ここからさらに西へ行くと水晶の洞窟があってな、
ただ、そこにはたくさんの水晶があるが、武器にするにはちと弱くてな、
そこで、長い時間をかけて育った水晶を甲羅にするクリスタルタートルを倒して作ったのだ。」
へ~、水晶の洞窟か、今度行ってみようかな。
「話がそれたな。優勝賞品の授与をしようと言いたいが面倒なのはやめだ。
受け取れ、ほれっ。」
「わっ、とと。」
受け取ったのは金に光る丸い金板。それには煌めく星が彫られている。
「本当は勇者のものになるはずだったんがの~。」
「え~と、この金板みたいなものは?」
「流星の紋章じゃ。素材は金ではないぞ、メテオライトで作られているぞ。」
メテオライトは確か、隕石が落ちて長い年月をかけて周りの功績を吸収して、
どんどん固くなっていく不思議な鉱石だ。加工するとこんなにも光るのは初めて知った。
「だから、下手な盾よりも固い紋章じゃ。後、小さくだが、
グレゴリアド王国の紋章も裏に彫られている。」
裏を見ると言葉道理、剣と杖を交えたところが彫られている。
「正直使い道はあまりないかもしれぬが、最高レベルの許可証にもなるので、
持ってて損はないはずじゃ。」
「許可証と言うことは、関所を通る時に使えるということですか?」
「ああ、そうじゃ。と言ってもこの辺りは流通をよくするために関所なんぞ無くしているがのう。」
それは大丈夫なのか?何か事件が起きた時逃げられてしまいそうだけど。
「そろそろ時間が来たので、帰っていただくとしよう。
ククイ。外まで送り届けてやってくれ。」
「はっ。」
「えっと、ありがとうございました!」
「君のような若者がこれからも増えることを願っているよ。」
*
そんなわけでやることも無いので宿屋に帰ってきた。
メディはもう起きていた。時刻は11時ちょうどなので、起きていて当然でもあるが。
「あ、お帰り~。どうだった。王様は。」
「うん、まあ、いい人だったよ。」
メディはベッドに座り足をパタパタさせている。服はワンピース姿だ。
「ただ、次の目的が無くなったんだよね~。」
この前町の情報が書かれた掲示板を見ると、まだ、天と地の峡谷の問題は全然だそうで、
勇者が到着してどうなるかって所かな。
「だからさ、王様が話してたんだけど、ここから西に行くと、水晶の洞窟があるんだって、
武器にできるほどの水晶があるとか、行ってみない?」
「面白そうね。ケリーもいないし、とりあえずはそれで決まりね。」
「でも、今日は少しのんびりしようよ。モルトさんからシューターを譲ってもらったんだ。」
「シューター?面白そうねやりましようか。」
この後、メディはレイにボコボコにされ、最終的にすねちゃったりした。