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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
二章 空白の5年間中編 契約の旅
34/75

百花繚乱

いつもより長めのはず。

翌日


大会前日は特にやることも無かったので、朝はぐうたらしていた。雨が降ってたのもある。

何かやったと言えば猛吹雪の手入れぐらいだ。


雨がやみ、曇ってはいるが昼からはメディがやりたいことがあると言い、

それの練習に付き合わされた。内容は秘密。


そんなわけで、ちゃんとした訓練を始めたのは夕方からだ。


場所は月明かりの丘。今日は残念ながら曇っていて月は見えないが、

晴れた日はとても明るく照らされ、なおかつグレゴリアド王国を見下ろせる位置なので、


月に照らされ、街灯の光がよく見える王国の夜の風景が見れる。


素振りをしていたが、途中で大雨に。

そんなわけで散々な日だった。









そのまた翌日、大会当日。


「....ん。」


目が覚める。


「今は何時?」


ポーチから腕時計を探し出す。

その短い針が示すのは6時。


「早く寝て良かった。っと。」


ベッドから降りて大きく伸びをする。眠気も感じない。時間が書かれた選手用のチケットを取り出す。


「ええと...。大会の時間は...。朝の九つの刻。」


これはグレゴリアド王国の時間の読み方みたいなもので、かなり独特だ。簡単に言うと9時。


「まだ時間はあるな。ちょっと走るか。」










「ふ~。さっぱりした。お風呂はいいな~。」


軽く走ってきて、かいた汗をお風呂で流してきた。


「軽くで20フレイも走る人なんてなかなかいないわよ。」


「....。さて、朝ご飯。」


「話を聞きなさい。」


メディからの地味に痛い一言。

面倒くさいので無視。せっかく上機嫌だったのに。


「いただきます。」


「人の話を「美味しい!メディも食べなよ」はいはい。あ、意外といけるかも。」


朝ご飯はいくつかにちぎられたパンとつけろと言わんばかりのスープ。後サラダ。


普通だけど美味しい。別に朝なのであまり肉などは多くは食べないので別に構わない。

メディも淡々とその量を減らしていく、精霊は別に食事は必要なく、

食べなくても生きていけるが、それとこれは全く別のようだ。


「メディ、ケリーは?」


「寝てる。」


え?


「大会今日だよ?どうするの。」


精霊開放は、対象が拘束、睡眠など、動けない状況下の時は召喚できない。

一般的な契約とは違い、僕の契約は対等な契約。先ほどのも加えて、対象が嫌がれば召喚できない。

だからこそ、この契約でしかできない技がある。


「そのうち起きるわよ、予選ぐらいケリーの力なんて借りなくても済むわ。」


「まあ、それもそうだけどいるだけで安心感って言うのが....。」


「はいはい、そうですね。ごちそうさまでした。」


見事に無視された。


「先行ってるわよ~。」


「ちょっ、お前だけじゃ出れな「じゃあね。」あ、行っちゃった。」


もういいや、早く食べて追いかけないと。










「あれ?メディがいない。」


昨日は閉まっていたコロシアムの入り口前で探していたが見つからない。

コロシアムからは、事前に買っておくチケット。それか選手の受付を済ましている人のみのはず。

こんなところで召喚はできない。時間は8時。チケットに書かれているのは2試合目の時間。

そして、選手は最低でも30分前にはコロシアムに入ってチケットを出さないといけない。


「仕方ない。行こう。」


たまには一人でやるべきか、一人じゃグレイブ爺さんにはまだ勝てないだろう。

鬼人化した上に精霊化という力業で勝ったんだから。









コロシアムに入りチケットを受付に渡して、2試合目の選手が集まる第二控え室へ向かう。

ちなみに、開会式は無い。理由は面倒だからと国王が無くした。


控室に入るとすでに50人ぐらいの人数がいた。すでにと言っても今は締め切りの3分前。

つまり8時27分だ。別に、ムキムキの人がたくさんいるというわけではなく、

男性の方が若干多いが、女性も少し少ないぐらいだ。


呼び出されるのは試合の10分前なので、時間が来るまで適当な席で座ることにした。

かなり暇だが、やることは特にないし、念話は精霊側からのみできる。

此方からは無理。一回きたら、しばらくは話せる。


貼ってあった試合時間の紙をぼんやりと眺めながら暇をつぶす。

さりげなくそっと撫でた猛吹雪の鞘が心なしか光ったように見えたのは気のせいだろう。


紙を見るのも飽きたので、腕時計の針が動く様子を見る。

意外と周りは騒がしく。知り合いでもいたのかと思うぐらい話し声が聞こえる。

おかげで針のカチッ、カチッとなる音は聞こえず、

分を教えてくれる長い針が50分を指すのを待ち続ける。


動き続ける針を見るうちに、なんだか眠たくなってくる。

しかし、そんな僕を思い切り揺さぶるかのように、大きく音を立ててドアが開く。


「皆さん!時間です!会場へと向かってください!」


「「「おおおおお!!!!!」」」


恐ろしいほどの雄たけびがそれに呼応するようにこだまする。

正直鼓膜が破けるのでやめていただきたい。まあ、それのおかげですっかり目が覚めたのでよしとする。











《さてさて!続いて第二試合に入ります!》


《1試合目から大声あげてたけどこのまま8試合も持つのかい?マルク君?》


《大丈夫ですよアルケテルさん!勇者をこの目に収めるまで眠れませんよ!》


《おいおい、マルケ君。勇者が出るのは明日だよ。》


《はっ。そうでした!しかしテンションは変わりませんよ!》


《とりあえず第二試合の話に戻ろうか。》


《では、アルケテルさん。ズバリ!第二試合の注目選手は誰でしょう?》


《基本的に勇者祭はレベルが高いから、第二試合も名を聞く選手が多いね。

 個人的には陽光のレイナが注目かな。乱戦ではかなり強いからね、彼女は。》


《なるほど。それなら爆撃のバーンも強いのでは?》


《バーンは魔法使い。どの攻撃にも時間がかかるから、真っ先に狙われると不利だろう。》


《しかし、名の聞かぬ方も数人いますね。こちらはいかがでしょう?》


《まだ実力がわからないから何とも言えないね。》


《そうですかぁ。そろそろ選手が出揃うのでしばらくお待ちください!》


《ちなみに今の解説は選手には聞こえてないから安心して。》


《.......。では、コロシアム内の選手が準備できたようなので第二試合を行います!》


《マイクをオンにして...っと。はい!それでは行きますよ~。第二試合スタートォォォ!!!》












《はい!それでは行きますよ~。第二試合スタートォォォ!!!》


始まったか。ほかの選手も動き出してるな。じゃあ...。


「神刀[百花繚乱]!」


神気が刀に入り、刀が煌めく。そして誰彼構わず斬りつける。


一人目。奇襲は成功。斬った時に少しはじけて周りに神気の種が飛び散った


二人目。気づかれたが時すでに遅し。また種が飛び散る。


三人目。危険と判断され襲い掛かられるが、受け流して反撃。種は飛び散り続ける。


とりあえず三人目を斬り終えたところで一度周りを見渡す。

武器の打ち合う音や魔法が飛び交う音が聞こえる。

しかし、僕が撒いた小さな大量の種には気づいていない。


「咲きほこれ!」


その一言に合わせて種は花へと一瞬で成長。その大きさは直径10フレイ。

その花弁は触れたものに死をもたらす。花ははじけ飛びコロシアム中に花びらが舞う。

花弁が触れたところはいともたやすく切り裂かれる。


「な、なんだこの花びギャアアアア!!」


ここには魔力気力無効フィールドが展開されているので、死んだ者はフィールド外へと送られる。


「結界[防壁]」


そんな死の花びらと悲鳴が飛び交う中僕は一人で歩く。結界に当たった花びらは飛散し、

空気中に還る。実況が何か言っているみたいだが、悲鳴で聞こえない。


しばらくして花びらの雨は止む。周りには2人しかいない。


一人は男。長剣に盾を持っている。そして、動きやすそうな皮鎧に身を包んでいる。


もう一人は女。長剣を一振り持っている。そして、少し重そうな煌めく金色の鎧に身を包んでいる


「アンタなかなかやるじゃねーか。名前は?」


「レイ。」


「聞いた事ないな...。まあいい、戦う相手にはちょうどいい。」


「居合[疾風一閃]」


ガキン!


「いきなり斬りつけてくるとはな、少しヒヤッとしたぜ、こっちから行くぜ。」


そう言ってそれなりの速度で来るが、今の一閃で種が振りまかれたことに気付いていないのかな。


「開花。」


「っ!やるじゃねーか。いつの間にやったんだ?」


「教える義理は無いかな。」


「!」


後ろから気配。軽く横にずれて振り向きざまに一閃。


剣を振り終えたはずなのに何かにはじかれそれは出来なかった。

見えない何かに防がれたからだ。そこにいたのは一人の女性。

しかし、その態勢は完全に剣を振り終えている。なのに僕の刀は女性の目測で5フラほどで止まっている。


手ごたえはあった。じゃあ何故?


原因を知りたいが、そんなゆっくり考えている時間など無く、

目の前の女性は手に持っている心なしかよく光っているような剣で攻撃してくる。


刀でそらしながら一度二人から離れる。


「ふぅ。ちょっときつい?」


「さすがに二人は無謀だろうレイ。そういえば、名乗ってなかったな。俺はゲイルだ。」


「じゃあ、私も名乗るべきかしらね。知っているかもしれないけど、レイナよ。」


「陽光のレイナか、ちっとは楽しめそうだ。」


「敵を前にそんな悠長なこと言えるかしら?」


レイナの周りには眩い光を放つ剣が5つ現れ、ゲイルに襲い掛かった。


「トルネードシールド!」


盾を構えてそう言い放つ。盾は風を帯び、輝く剣を吹き飛ばす。


「僕も行こうかな。居合[桜ノ舞]!」


僕が狙うのはあの謎の力、恐らく光でも操るレイナを先に狙う。


ガキン! ガキン! ガキン! ヒュン!


最初の三回はまた防がれたが、カウンターを狙ってか最後は避けてきた。


種ははじかれたからかあまり相手側には飛んでいないが、少しはある。

ここを凌げば....。


「結界[防壁]」


振り下ろしてくる剣を結界ではじく。


「えっ!?」


渾身の一撃だったようで、レイナは大きくのけ反った。


「借りるよ、グレイブ爺さん。燕返し!」


ガキン! ガキン!


高速の二連撃はレイナを仕留めるには至らなかった。


だけど、種は十分に撒いた。


大きく後ろにステップしながら死の宣告を下す。


「開花。」


無慈悲なその一言は種を急成長させて、花になり砕け散り、花弁は彼女を切り裂いた。


「あと一人か。」


レイナの姿が消え、舞台の上からいなくなったことを確認してから、ゲイルを探す。


しかし、前後左右どこにもいなかった。さっきの花びらでやられたのかと思ったけど、

一つ見ていないところがあった。


「納刀[滝登り]」


垂直に飛びあがって上を見る。案の定ゲイルは上から僕を狙っていた。


「気づかれちまったか。タイフーン!」


突如発生した暴風に僕はなすすべなく地面に叩きつけられた。しかも刀はどこかへと飛んで行った。


「ぐ!結界[完全防壁]」


魔法攻撃ならここで終わりだが、この落下の速度を利用して攻撃してくるはずなので、

大きく神気を減らすが、念には念をと完全防壁を展開した。


「これで終わりだ!「ガキン!」何!」


予想通りの攻撃をしてきてくれたので、何とか凌げた。


「氷柱!」


3つの氷柱を生み出し飛ばす。刀が無いのでこれで牽制する。


『レイ~。今どこ~?』


メディの声。やっと来たか。


『もう試合が始まってる。しかも苦戦中。』


『ゴメン!すぐ行く。召喚よろしくね。』


『はいはい。』


念話が終わり、やるべきことが決まる。

詠唱の時間さえ稼げればこっちのものだ。今飛ばした氷柱は剣と盾であっさり砕かれた。

先に刀を探すべきか....。


「スラッシュラッシュ!」


風の斬撃がいくつか飛んでくる。

考えている暇は無い。今は刀を探そう、結界じゃ不安だ。


「スクリューレーザー!」


コンドは水魔法と思いきや、回転に風魔法を使い威力を上げている。

とてつもない万能さだ。魔法も剣も強いなんて羨ましい。


「結界[魔結界]」


かなりの威力のようなので、防げるかは不安だがやるしかない。

[完全魔結界]はここで使えばメディを呼んだ時に神気がほとんどなくなる。


ギリリリリリリリリリリリ ギュン!


回転がかかりすぎて勝手にそれて行った。結界がお母さんのような箱型だったらヤバかった。


「あれは!」


刀は不運なことにゲイルの後ろに在った。あれではとるのは厳しそうだ。

予定を変更してここでメディを呼ぶ。


「結界[反射魔結界]」


いつもより神気を込めてある[反射魔結界]。

完全ではないけど十分な反射力はある。


「友よ、我は願う、契約に従い、その力を借りて、我もその「スクリューレーザー!」


ヒュイン!


はね返した!


 姿になることを願う。大巫術[精霊開放・氷精霊化]!」


その瞬間。はね返した破壊の水流は風ごと凍り付き、砕け散った。


「さて、行きますか。」


『了解。とりあえずこれ持っときなさい。』


僕の目の前に氷の刀が現れる。僕はそれを遠慮なくつかみ取る。


「冷たい....。」


『我慢しなさい。』


唖然としているゲイルを視界に映しつついつもの流れで居合の構えをとる。


「お、入った。居合[刹那一閃]」


ゲイルの方はまだ頭が追いついていないようだったが、すぐに構えなおし、

一閃を盾で防いできたが、盾は砕け、同じく氷の刀も砕けた。


壊れることは知っていたのでそのまま走って行って刀を取りに行く。


「お前精霊と契約していたんだな、これは一本取られたな、けど、まだ終わらせないぜ!」


「タイフーンレーザー!」


さっきの回転がかかった水流の比ではなく、温存していたのかと疑うレベルだ。でも。


「凍ってもらおうかな」


その一言で凍る水流。そして砕け散る。今回はメディは動けないがその分僕がその力を使える。


「氷柱」


さっきと全く変わらない一言。しかし、その量は違う。逃げ場さえ与えない百は超える数も氷柱。


「な!?」


「落ちろ。」


氷柱は雨の如くゲイルに降り注ぐ。


「まだだぁぁ!タイフーン!!」


もう一度発動する暴風。それはすべての氷柱を吹き飛ばす。


「居合[刹那一閃]」


瞬きの間に目の前へ、ゲイルは今度は受け止めず受け流してきた。


隙ができた僕へ斬りかかってきたけど、今度はこちらが受け流す。


「タイフーン!」


もう一度繰り出される暴風。これで三度目。さっきから無詠唱で魔法をバンバン放っているゲイル。

もうすぐ魔力が底を尽きるはずなのに惜しみなく使ってきた。


僕は吹き飛ばされたので一度仕切り直しだ。


「エアロバースト!」


不可視の風の衝撃波。


「無意味。」


凍り付く不可視の衝撃波。


「ブースト!」


魔法が聞かないと分かったようで、スピードを上げてきた。もうそろそろ終わらせようかな。


「はあああぁぁぁ!!」


いきなりゲイルの剣が猛烈な風を帯びる。だけどもう終わり。


「一閃」


原点であり、僕の基礎となる技。その一振りは視認などできぬほど速い。


ゲイルの体は二つに割れ、消え去った。魔力気力無効フィールドが発動した証拠だ。


《決まったああぁぁ!第二試合!勝利を手にし、勇者への挑戦権を獲得したのはレイ選手だあぁぁ!》



























 





 

























固有名詞紹介


魔物


突如として現れた生物。出現理由は不明。一部を除き体内に魔石を持つ。例外は主にスライム系。

様々な種族の共通の敵であり、誰彼構わず害をなす存在だが、別に魔物同士共闘するなんてことは無く、

弱肉強食の世界。魔王が生み出し徐々に数と種類を増やしていったと言われているが、定かではない。

しかし、魔物がいることによって冒険者ギルド、つまり冒険者という職ができたのも事実。

これがあることによって生活して生きる人もいるし、冒険者稼業で家族を養っている人もいる。

腕が立つ人が増えたことにより、武闘大会などの娯楽も増えた。しかし、勿論魔物に命を奪われた人。

両親、子供の命を奪われ怒りを燃やす人もいる。魔物がいないときは戦争も滅多に起こらなかったが、

魔物に襲われ危険な状態国を襲う国も出てきた。魔物がいないときは権力がすべてだったが、

冒険者が増え、無理やり対抗できてしまうことから、かなりの数の国の腐敗が無くなったりも。

このように魔物がもたらしたこれらは一長一短であり、一概に害とは言えず、

しかし、魔物が生まれる原因が繁殖だけではなさそうで、原因は分からないので現状維持となっている。



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