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静かが好きな結界使い  作者: 蒼色
二章 空白の5年間中編 契約の旅
29/75

静かなところを求めて

最近頭痛に悩まされています。片頭痛だとか、

二度寝から目を覚ました僕は、まず悪夢の原因となった白桃花を

ポーチの中に封印して、朝食の前に先に売りに行った。


こんなものを長く持ちたくなかった.....。







チリリーン


「おなか減った.....。」


「あ!レイさん!ご飯の用意、できてますよ!」


「あ、ありがとう。」


「うちの宿に泊まっている人はレイさんも含めて2人しかいないので....。」


「そ、そうなんだ。な、なんかごめん。」


「あ!いいですよ、お気になさらず。さあ、冷めないうちに召し上がれ♪」


ミナは、僕の近くの机に、パンやサラダが乗せられた皿を運んできてくれた。


「いただきます。」


「.....?レイさん何か言いました?」


僕の声に反応したミナが振り返る。


「特に何も言ってないよ。」


説明が長くなりそうなので、この場では伏せておく。


「そういえば、天と地の峡谷の件は今どうなってるの?」


「えっと....。何やら、色々と苦戦したりしているらしくて、まだ長引くらしいです。」


まだ、待たないといけないか.....。それまで何しておこうかな。


「それがどうかしたんですか?」


少し考え込んだ僕を見て聞いてくる。


「ああ、僕の前に住んでいたところ所はビュルンデルだから。」


「ビュルンデルって北側じゃないですか!どうやってこっちに?」


このあたりに住んでいるならそういう質問が出てくるのは必然的だろう。

天と地の峡谷が唯一の北と南を分ける門の役割のようなものを担っているからだ。


「ええと、色々やってかな。」


「色々ですか....。」


僕が言いにくそうにしてたことに何か察したのか、それ以上は聞いてこなかった。

だけど、気まずい空気は無くならない。

とりあえず何か話題をと思い言いかけたところで、レンが来た。


「おはよう!兄貴!あっ、姉ちゃんも、どうかしたのか?」


レンが僕を兄貴と呼ぶようになったのは昨日の一件からだ。

白桃花を売りに行こうと宿を出ようとしたときに兄貴と呼ばれ、一瞬頭が混乱した。

名前が似ているのも関係しているのかな?


「まあ、いいや。姉ちゃん!父ちゃんが起きたぞっ!」


「え!?本当に?」


「うん、今来てるぞ。」


指をさす方向にはカウンターの奥。そこから一人の男が出てきた。


「やあやあ、君がレイ君か?助かったよ、ありがとう。」


「いえ、とてもいいものも見れたので。」


あの幻想的な白桃花の花畑はずっと眺めていたいくらいに綺麗だった。


「ふむ。だが、我が家にはあれと同じぐらいの報酬が出せるほど裕福では無くてな、

 何か望むものはあるだろうか?我が家にあるものなら何でも構わんぞ、特に何もないが。」


今欲しいものないんだよな~、あんまり荷物が多くても変えるのに苦労するだけだし。


「えっと、今あんまりほしいものが無いんですよ。」


「だが、何も渡さないのは私たちとしても罪悪感みたいなものもあるからなぁ。」


それもそうだよな。じゃあ、帰れるようになるまで暇だし、

何かすること無いかな?


「じゃあ、綺麗な景色なんかが見られる秘境みたいな噂とか知りませんか?」


「秘境か.....。聞かないな。ミナ、レン、聞いた事あるか?」


「無いかな。」


「そういえば....。」


レンには心当たりがあるようだ。やること無いから秘境巡りでもしようかな、

っていうただの思い付きだけど。


「確か、俺の友達の中でただの噂だけど、このあたりに精霊が住むっていう湖があるって聞いたって。」


「それ本当か?」


「いや、ただの噂だけどね、でも探す価値はあると思うぜ兄貴。」


「ふむ、精霊は珍しいからな、見かける人さえ少ないのに、

 下手すれば魔法さえ使えなくなる契約をしている人はどうやってしたのだろうな?」


契約してるとは言い出せなくなったな....。


「私、一度でいいから精霊さん見てみたいです!」


「だけど、このあたりで湖なんか聞いた事も見たことも無いぞ。」


「森もないしな。」


レンの話とミナたちのお父さんに追い打ちをかけられへこむミナ。さすがにかわいそうなので....。


「う~んと、精霊なら見せれるぞミナ。」


「は、本当ですか!?」


「兄貴、どういうことだ?」


「う~ん、見てもらった方が早いかな。

 友よ、我は願う、契約に従い、その姿を現すことを。(巫術)[精霊開放・具現化]」


巫術は一応隠すため、小声で巫術の部分だけ言って、詠唱を唱える。

精霊化は大巫術だが、具現化、つまり呼び出すだけなら巫術で可能だ。


「はいはい、何か御用ですか私の契約者さんって、此処どこ!?」


「わあ!精霊さんだぁ!!」


「すげえ!本物だ!!すげえよ兄貴!精霊と契約してるなんて!」


「(ちょっと!何やってくれてんのよ!巫術の事ばらしてんじゃないわよ!!)」


小声で怒っているメディ、どこ吹く風で僕は無視し、ミナの方に向き直る。

巫術はばらしてないから問題は無いはずだ。


「(問題しかないわよ!あんたの心の中はお見通しだからね!!)」


それは、契約してるからだろと、心の中でツッコミを入れる。


「触っていいですか?」


目を眩しいほどに輝かせながら聞いてくる。

それは断れないからやめてくれ......。


「別にいいよ、レンもね。」


まあ、僕の事じゃないから別にいいやと思って許可する。

レンもすごくうずうずしていたから同じく。


「ほんとか兄貴!」


「お言葉に甘えて!」


二人はメディに飛びつく。メディは僕にガミガミと文句を言っていたから、

それに気づけず姉弟の餌食となった。


『ちょっと助けなさ...きゃあ!』


二人に飛びつかれてこけそうになって念話で助けを求めてくるが、

応える前に倒れた。いい気味だ。


『まあ、せいぜいがんばれ。』


そう(念和で)言ってから、完全に空気と化したミナとレンのお父さんにしゃべりかける。


「じゃあ、僕はその湖とやらを探しに行ってきます。」


と言って、宿から出て(逃げて)行った。


『ちょ、助け、待ちな、い、』


聞かなかったことにしよう。







「どう探そうかな?」


このあたりと言っても、湖があれば気づくはず。

森の中だったとしても、この辺りに森は存在しない。

さっき、数人に聞いてきたけれどやはり知らないと答えた。


「探すなら西か東か。」


南の方は砂漠地帯が徐々に広がっていくので、可能性は低そうだ。

だとすれば、探すのは西か東となる。

僕は近くの店で買ってきた地図を開く。


「南はやっぱり砂漠地帯か.....。西は町が多いから、

 探すとしたら舗装されてない道がある東の方かな?」


一応やることは決まった。

東も、道こそ舗装されていないけど、別に町が無いって訳でも無く、

数こそ少ないがあるにはある。

村なら、所々にあるので、一日で次の町に、又は村に着いて、

周りを探索。湖が無ければ、次の町か村へという形になりそうだ。

ただ、この案だとしばらく宿には帰れそうにない。


「荷物取ってくるか。」


もう一度神隠しの宿に戻り、荷物を取ってくることにした。

後、ついでにメディの回収。







「さあ、頼んだよメディ。」


「はいはい。」


オレングスから徒歩30分程、

僕はメディに精霊の気配が無いか調べてもらった。


「......。」


かなり集中しているようだ。ただ、かなり時間がかかりそうなので、

暇つぶしも兼ねて、柔らかい白パンを取り出して食べる。

お金は十分にあるので問題ないし、一応長くても二日以内には村か町に着くのだから。


「う~んと、此処から北にまあまあ行った先ね。」


「まあまあってどのくらい?」


「20フレイは確実ね。」


「メディ、それはまあまあじゃない。」


しかも下手をすれば湖じゃないかもしれないのに。


「でも、アンタならすぐつけるわ。」


「いや、そうだけど....。」


確かに本気を出して走れば10分程でつくが、

全力は疲れるんだよなぁ。


「はい、さっさと走る。アンタ最近ちゃんと戦ってないんだからね!」


「強化は?」


駄目元で聞いてみる。


「ダメ。」


「ですよね。」


僕は大人しく走ることにした。


「そういえば....。メディ!反応した精霊の気配ってどんなの?」


「どんなのって?」


「例えば、属性とか階級とか。」


湖にいるのだから、水関係とか自然関係の属性を持っていそうだ。


「属性は...。たぶん詳しくは分からないけど自然属性ってことは分かる。」


だとすれば雨か、大地か?


「階級は20フレイ以上先でも感じ取れたから少なくとも中級以下ではないことは確かね。」


「つまり上級精霊は確定って事か?」


「まあそういうことにはなるわね。」


それは楽しみかな。


「でも、砂漠地帯に精霊なんか居るのか?」


僕が走っている隣に並行してついてきているメディにさらなる疑問を投げかける。


「もちろんいるわよ。特に、自然属性の精霊は基本的にはどこにでもいるのよ。」


話によると、例えば、月と陽属性は月なら月の光を広範囲に広げる役目を持ち、

陽属性も同じように太陽の光と、こちらは熱を広範囲に広げる役目を持つ。


雨なら、その水が植物にいきわたるように、

大地なら、生態系が崩れないように管理をし、

雪なら、寒さを与える季節を作り、氷はそれを助ける。

雷なら、罪を犯した者に神罰を与え強くなり過ぎたにも魔物に神罰を下す。


自然属性をもつ精霊がたくさん住むところほど季節がはっきりと分かれてくる。

ただ、雷は数が少なく、言い伝えレベルの話らしいが。


「そろそろ近いわよ。あと2~3フレイってところね。」


もうそろそろ10分経つという頃に不意にメディが告げた。


「了解。」


目的地はすぐそこらしいので速度を上げる。

周りは砂地がようやく見えてきたところだが、見渡す限りは何もない。

そもそも、木の一本すら見えないが本当に精霊がいるのだろうか。

背の低い草ぐらいなら生えているが。


「メディ、精霊はどこ?」


「ちょっと待って。ここから歩くわよ。」


メディがそういうので、一度止まり徒歩で探し始める。

後500フラットもないそうだ。


「ここね。」


不意にメディが立ち止まりそう言った。


「ええと、メディさん?ここには何もないですけど.....。」


そう言う僕の声を無視し、メディはその何もないところを右往左往すると、

何もないところに向かってコンコンとノックするようにこぶしで軽くたたいた。


「レイ。ここに向かって[一刀両断]をぶつけて。」


「あ、うん。神刀[一刀両断]」


言われるがままに行動する。

すると、刀に割かれた不思議な何かは砕け、湖が姿を現した。


「ええ!?」


「ほらね。」


「ほらねって.....。なんか隠されてたみたいだけど大丈夫か?」


ここの主に怒られたりしないかな?

そんな僕の疑問を無視してメディはすたすたと湖の方に向かって歩いていく。


「ケリー!いるんでしょう!出てきなさい!」


と、いきなり叫びだした。

誰を呼んでいるのかな?ケリーと聞こえたけど。


「はい~だれですか~?」


間延びした声で出てきたのは、銀髪の精霊。

メディの空色の髪もそうだが、精霊の髪は心なしかきらきらしている気がする。


「私よ、ケリー。」


やはりあの銀髪の精霊はケリーというようだ。

銀髪って何の属性だろうか。


「あ~メディじゃん、久しぶり~。」


気が抜けそうな声だ。


「そっちの人は誰?」


「あいつは私の契約者よ。」


「へ~、あのメディが契約なんてしたんだ~。」


あのメディ?何かあったのだろうか?

メディをいじる話のタネになるかもな。


「そういえば~あたしに何か用~?」


「ううん、別に、私はあの契約者さんがこの湖を見に来たいって言うからついてきただけ。」


「別にここには何もないけどね~見たいならお好きにどうぞ~。」


「じゃあ、お言葉に甘えて。」


二人のすぐそばまで来ていた僕は、そう返事を返して、

二人とは別の方角から見ることにする。二人の会話の邪魔しちゃ悪いし。














頭が痛いので今回は固有名詞紹介はお休みです。

次回は活動報告の予定をご覧ください。

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